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ARu世界に問うてみる。  作者: 遥彩 萌
第一章 プロローグと拡張世界
8/18

第8話 新たな事件

語句おさらい

東エリア ラクト達が活動する地域。

他にも 北エリア 中央エリア 西エリア など地域が分かれている。


中央-東ルート 中央エリアと東エリアを結ぶ道路。

「──如月、聞いてるか?」


 低く落ち着いた声が、資料室の静寂を裂いた。


 顔を上げると、黒髪短髪の男がこちらを見ていた。

 東エリアARMの現場責任者、上司──名前はまだ知られていない。

 ラクトにとっては直属の上司だ。


「中央本部との合同任務が決まった。お前、星川、シン──三人で向かう。」


 机に置かれた資料を、リナが慌てて覗き込む。


「……中央本部って、あの中央ARMですか?」


「ああ。」


 上司の表情は硬い。


「場所は中央-東ルートの旧居住区付近だ。

 一般人立入禁止区域のさらに奥。

 そこから未登録のAR区画反応が出ている。」


(未登録区画……)


 ラクトは資料に視線を落とす。

 この国では、エリア外でのAR創造は法律で厳しく制限されている。

 特に無許可のAR発生は、国家レベルの重大案件だ。


「なぜ東だけじゃなく、中央まで出張ってくるんですか?」

 リナが素直な疑問を口にする。


「それがわからん。

 だから中央主導だ。」


 上司は低く言い切り、

 部屋の隅に立つ黒い影に視線を投げた。


 樋口シン。

 180後半の高身長、短髪、黒スーツ、黒い四角サングラス。

 東エリアARMの特殊医療班リーダーだ。

 普段は精神影響の初期対応専門、現場任務は稀。

 無口で、指の動きや頷きで意思を伝える。


(……特医班まで出動か。

 ただの調査じゃ済まないな。)


 心臓の奥が、ふと疼く。


 ──銀髪の少女。

 あの青い瞳と声が、胸の奥に蘇る。


「自分の心だけで、解決はできないよ。」

「君なら……君の目の前に、“ある世界”に問うてみる資格があると思う。」


 ラクトはそっと息を吸い込んだ。


「了解しました。」


 ⸻


 翌日、専用車両が東ARM本部を出発した。

 ドライバーはラクト、助手席にリナ、後部座席にはシンが無言で座る。


 中央-東ルートを進むにつれ、景色は変わっていく。


 両側には、かつての住宅街。

 今は窓が割れ、雑草が茂り、無人の廃墟と化した家々が並ぶ。


「ほんと、誰も住んでないんですね……。」

 リナがポツリと呟く。


「昔は、普通に家族が暮らしてたんだ。」

 ラクトは低く答え、ハンドルを握り直す。


(……没入率。

 AR適応度、精神同期率。

 高ければ高いほど、現実とARの境界は薄くなる。)


 後部座席のシンは、指先を小さく動かしていた。

 脈拍か、反応計か、何かを無言で確認している。


「ここの奥って、普段誰も通らないルートじゃないですか?

 なんでそんなとこからAR区画が……。」


「それを調べるのが、俺たちの仕事だろ。」

 ラクトは短く返す。


 やがて、進入禁止区域のゲートが見えてきた。


「ここから先が本番だ。」



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