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ARu世界に問うてみる。  作者: 遥彩 萌
第一章 プロローグと拡張世界
5/18

第5話 世界の秩序とは?

語句整理〜


A.R.M (ARM) アーム。 AR専門の問題解決屋。主人公である如月ラクトも所属している組織。


 ______ARM本部に戻る。


「最近のARトラブル、現実の負傷者が増えてます」


 リナの声が会議室に響いた。

 壁沿いの端末が淡い光を放ち、無機質な冷気が肌を刺す。

 椅子に深く座り込んだ彼女の拳が、膝の上でかすかに握り締められていた。


「この間のAR格闘イベント、参加者が精神ショックで搬送されたそうです。

 擬似死亡体験──なんて言葉までニュースに出て。

 次、何が起きてもおかしくない、そう思いませんか」


 一瞬、空気が張り詰める。


「次とは何だ? 死者か?」


 上司の低い声が、リナの言葉を断ち切った。

 冷たい視線が、彼女を射抜く。


「現実の死者が出たなら、それは警察の仕事だ。

 我々ARMは、AR世界の秩序を守る組織だと、忘れるな」


「……そんな、割り切れる話じゃないでしょう」


 リナが小さな声で言った。

 だがその声は震え、最後の言葉はほとんど自分の中に消えていった。


 彼女は若い。

 純粋で、正義感が強く、だがその分、何かを抱えるにはまだ頼りない。


 ラクトは彼女を黙って見つめる。

 その横顔に、自分のかつての姿が重なる気がした。


「──君たち若手は、すぐ感情に引きずられる」


 上司はゆっくりと背もたれに体を預け、目を閉じた。


「私も昔はそうだった。

 だが、人はそれで何を救える。何を変えられる。

 理性だよ、如月。人を救うのは感情ではない」


 ラクトは目を伏せる。


(──感情は、役に立たない。だが、理性は何を守る?)


 頭の奥がじんわりと熱を帯びる。

 喉元が渇き、指先に冷たい汗がにじむ。


 彼は深く息を吐き、立ち上がった。


 椅子が軋む音が、重たく響く。


「……俺は外に出る」


「ラクト先輩……」


 リナの声が背中に届く。

 振り返らない。振り返れば、何かが崩れてしまいそうだった。


 会議室の扉が閉まる、その刹那。

 上司の声が、独り言のように届いた。


「世界は、元には戻らない。君が一番、知っているはずだろう」


(……知ってるさ)


 冷たい廊下を歩き出す足が、どこか震えていることに気づきながら、ラクトは胸の奥で答えた。



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