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ARu世界に問うてみる。  作者: 遥彩 萌
第二章 棺の街-覆われた日常
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第3話 襲来する探し人

 ラクトは、歩きながら考えていた。


 湊ハクが、なぜ先回りして自分に彼女の話をしたのか。

 顔見知りであることが、すでに悟られていたからなのか。


 ――いや、顔見知りと言うほど、白銀ゼーレのことを知っているわけでもない。


 では、なぜ。


「あの……すみません」


 背後から、また声がかかる。

 今度は女性の声だった。


 今日に限って、やけに声を掛けられる。


「はい、なんですか」


 振り向いた瞬間、女性の指先がラクトの頬に触れた。


「無用心に振り返るのは、感心しませんね」


「……ゼーレ」


 つい先ほど、顔写真を見たばかりだったせいか。

 再会の実感は、不思議なほど薄かった。


「宣言通り、会いに来ました」


 微笑みながらそう告げるゼーレに、ラクトは一瞬、安堵しかけ――

 だが、ハクの言葉が脳裏をよぎる。


 反射的に彼女の肩を掴み、ビルの隙間へ引き寄せた。


「おい、お前――」


「“お前”って呼ばないでください!!」


 鋭い声が、ラクトの動揺を真っ二つにする。


「……ごめん」


「ゼーレと呼びなさい。失礼ですよ」


「わ、わかった……」


「それより」


 ゼーレは、急に真剣な表情になった。


「ラクトも含めて、この国の人は――今、自分たちが置かれている状況を、ちゃんと理解していない人が多すぎます」


「ちょ、ちょっと待て。ここで話す内容か?」


「確かに! ラクト、頭がいいですね!」


 勢いよく頷いたかと思うと、ゼーレは明るく言い切った。


「じゃあ、もっと安全な場所で話しましょう。ARMの本部で!」


「それはダメだ!」


「大丈夫ですって。ラクトが聞きたいことは、だいたい分かってますから」


 そう言い残し、彼女は迷いなく歩き出す。


 ラクトは、ついて行く以外の選択肢を失っていた。


 ⸻


 東エリアARM本部


 会議前だったこともあり、フロアは比較的静かだった。

 少なくとも――彼女が何者かを知っている様子の者はいない。


「せんぱーい。彼女ですか? 職場に連れて来なくてもよくないですか〜?」


 星川リナが、わざとらしく声をかけてくる。


「違うから。相変わらずうるさいな」


「突然女の人連れてきたら、誰でもそう思いますって!」


 言い合いが続きかけた、その時。


 奥の部屋の鍵が外れる音がして、二人は同時に口を閉じた。


 上司が姿を現す。


「えー……今回の依頼主は非公開だが、ある人物を探し――」


 言葉が、途中で止まった。


 初めて見る表情だった。

 驚き、戸惑い、そして――理解が追いついていない顔。


 上司の視線は、ゼーレに釘付けになっている。


「どうも!」


 その空気を壊すように、ゼーレは明るく手を挙げた。


「多分、その探してほしい張本人です。白銀ゼーレです!」

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