第13話 再会と特別
銀髪の少女は、すぐには近づいてこない。ただ、優しく視線を向けてくる。
「君……前にも、会ったな」
ラクトが口を開くと、少女はうれしそうに頷いた。
「うん。あのときは突然だったけど……こうしてまた会えたね」
その言葉の端々に、どこか無垢な響きがある。だが、不自然なほどに落ち着いた雰囲気もある。
まるで感情の揺れを知り始めたばかりの存在のように。
ラクトは彼女の表情をしばらく見つめた後、ゆっくりと尋ねた。
「君は……このトーテミルと関係があるのか?」
少女は首をかしげた。そして、トーテミルの方へと視線を移す。
「うん。あるって言えば、あるのかも。よくわからないけど……触れたら、きっと何かできる気がするんだ」
言葉に迷いはあるが、彼女の目は確信めいた光を宿していた。
「どうして……そんな風に思う?」
「だって……あの時、私、あなたを感じた。あなたの中の、痛いのとか、苦しいのとか。
ここに来て、それをまた思い出したの。だから……きっと私も、あなたの『答え』が知りたいんだと思う」
ラクトは目を見開いた。まるで、内側に踏み込まれたような感覚。
少女は照れるように笑って、ふわりとした口調で続けた。
「……まぁ、正直、何に悩んでるかはまだよくわかってないんだけどね。
でも、あなたがそれを考えてることは、なんとなくわかるよ。だから……手伝えるなら、手伝いたい」
その言葉に、ラクトの胸の奥が少しだけ熱くなる。
思いも寄らぬ優しさに、言葉が出てこなかった。
「このトーテミル、俺にはどうしても解除できなかった。……だが、君にはできるっていうのか?」
「うん。きっと、できる。……だって、私、ちょっとだけ特別だから」
彼女はそう言って、楽しそうに笑った。そして、一歩前に出る。
「解除してみるね。少し時間、かかるかもだけど」
「……待つよ。助かる」
ラクトが見守る中、少女──“名前も知らない”その存在は、静かにベーストーテミルへと手を伸ばした。




