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ARu世界に問うてみる。  作者: 遥彩 萌
第一章 プロローグと拡張世界
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第10話 黒い影と黒い棒

 廃墟の街は、静まり返っていた。


 東エリアと中央エリアのARM隊員たちが、瓦礫の間を慎重に進んでいく。


 リナが、自分の手を見つめながら小声で言った。


「……やっぱり、もうAR区画なんですねぇ。

 見た目が現実と変わらないから、なんか変な感じ。」


 ラクトは短く答える。


「ああ。気を抜くな。」


 シンも無言で頷く。




 ──その瞬間だった。




「ぐっ、あ……!」


 前方から短い声が上がる。


 振り向くと、中央ARMの隊員の一人が背中を押さえ、よろめいていた。


「っ……何だ、今の……?」


 服の背中側、赤い線が光って滲んでいく。


「おい、大丈夫か?」

 仲間の隊員が駆け寄る。


「わからん、何か当たった……でも、痛みはない。」


 そのとき、再び影が走った。


「っ──!」


 彼の身体がびくんと震え、膝から崩れ落ちる。




 黒フードの人影、黒い棒状の武器を手にした集団。




 シンが無言で駆け寄り、倒れた隊員の手首に指を当て、耳元に手をかざす。

 脈、呼吸を確認し、顔を上げ、ラクトとキンキに視線を投げる。


 右手の親指を立て──呼吸・脈あり。

 次に手のひらを上に向け、小さく振る──意識なし。




「……生きてるけど、意識は落ちてるな。」

 キンキが肩をすくめ、口元に笑みを浮かべた。


「一発目はマーキング、二発目で落とすってとこか。」




「……なあラクト、ちょっと頼みがある。」


 キンキがこちらを向く。


「あの黒い棒……現実の物か、それともARか。

 お前の目で、見てきてくれない?」




 ラクトは集中した。


 視覚、音、動き、空気の流れ。

 彼の特有の感覚が、現実と拡張世界のわずかな“歪み”を捉える。




 数瞬後。


「──創造物だ。現実には通ってない。」




「了解。」


 キンキはふっと息を吐き、腰のホルスターからARM専用銃を引き抜いた。


「よし、じゃあ作戦分担だ。」




「ラクト、お前はこの区画のトーテミルを探して停止させてこい。

 演出を断てば、あいつらの武装は消えるはずだ。」


「え、私たちで……っ?!」

 リナが驚き、ラクトを見上げる。




 シンが短く手を挙げ、救護用の小型端末を構える。

 倒れた隊員の回収と応急処置に移るつもりだ。




 ラクトは短く息を整え、リナを振り返る。


「……行くぞ。」


「えっ、ま、待ってください先輩ーっ!」


 背後からキンキの軽い声が飛んできた。


「頼んだぜ、ラクト。お前、意外と頼りにされてるからな?」



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