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「ーーーー!!!」

視界の端でセシルが何か叫びながら駆け出す姿が映るが、感覚を極限まで引き延ばしている上総には届かない。


「ーーーーー・・・uさ様!ご無事ですか!?」


自身の鼓動と呼吸音しか聞こえない静寂から解放されて数瞬ぶりに聞いた音はセシルの叫び声だった。

テントの前にいたはずのセシルが気づくと目の前で血に濡れた剣を構えている。


1体目と死にかけを殺して駆け付けたんか

いつの間にか身体強化が切れてる

集中力と魔力回路の限界か...

身体が重いし、思考に靄がかかったような感じがする。


突撃してきた残り2体はセシルを見て急に冷静になったのか素早く包囲の輪に加わった。数が減ったため包囲しているフォレストウルフ達が少しずつズレながら包囲を調整している。

その隙を逃さず、音もなくフォレストウルフの目の前に移動したセシルが頭から尻尾まで真っ二つに両断した。


「全員拠点を防衛しつつ掃討しろ!」


真っ二つにされた仲間に一瞬驚いた様な表情を見せたがすぐに左右の2体ずつがセシルに向き直った。


同時に包囲しているフォレストウルフが一斉に騎士達を目掛けて突撃してくる。

その突撃は上総に特攻した奴らとは比べものにならない程組織だっており、一糸乱れぬ連携で騎士達に襲いかかる。

騎士1人に対して3体が絶え間なく攻撃を仕掛ける。騎士達は防戦一方になってしまっている。


俺も参戦しやんと。さっきの身体強化が100%として10%だけ使う!


再び上総の身体に魔力が駆け巡る。


これでまた戦える。

まず騎士とフォレストウルフの戦いに横槍入れて形勢を逆転する必要があるな。


目の前の騎士に群がっているフォレストウルフの1体がターゲットを上総に変えて襲いかかる。


え!?こっちくるんかよ!


向かってくるフォレストウルフの下に沈み込み、すれ違いざまに一閃

先程剣を止められた硬い骨ごと切り裂き、その首を刎ね飛ばした。


騎士も2体なら反撃出来るらしく、問題なく討伐した。

「隣の騎士を順に手助けしていってください!」

「分かりました!」


上総は騎士に指示を出すと反対側の騎士を手助けに向かう

上総が向かうと必ず1体は迎撃に来るが最早タイマンでは負ける気がしなかった。


「シロカネ様!ご無事ですか?」

女騎士が1人手助けに駆け付けてきた


「ありがとうございます。戦闘継続してる騎士の援護にまわってください!」

「私は勇者様の護衛です!勇者様と共に戦います!」


「え?いや、」

こいつは状況を理解してへんのか?

あ、こいつシスターに突っかかってたやつか!

あれ?こいつはどこから来たんや?


『索敵』

騎士と思われる反応は8人...テントに2人...あとはセシルの反応が確認出来た。

上総と反対側の防衛戦に穴があり1人3体程対処しているところを2人で8体に囲まれて孤立している騎士がいる。


まさかこいつ持ち場放棄してきたんか!?

嫌な予感がする。

待って、このテントの2人...シスターと誰や!?


上総は違和感の正体に気付いた瞬間テントに向かって走り出した。

テントの入り口から光がチラチラと漏れ、テントが内側から切り裂かれた。


やっぱりシスターが襲われてる!

身体強化30%いけるか?


地面を蹴る力が強くなり、付いてきている女騎士を置き去りにした。


シスターはどれくらい耐えれるんや?

反応だけやと区別つかへん!

一か八かナイフ投げるか?

ワンチャンでシスターが耐えれる威力で投げても怯まんし意味ないな


引き伸ばされた時間の中で必死に最適解を探すが、情報が足りない。賭けに出るしかないと考え、ナイフを一本握り投擲の構えをとる。

ナイフを投げる直前に一際大きな光が漏れた。その光が収まり始めた時に血走った目と視線がぶつかった気がした。


見えた!

間に合え!!


ナイフがテントを切り裂きフォレストウルフに的中する。

防壁を破られ、死を覚悟していたシスターは目を丸くしていた。


「はぁぁぁあ!!」

仮面ラ○ダーの如き飛び蹴りで首に刺さったナイフを押し込み、貫通させてその巨体を吹き飛ばした。


「こいつが当たりか」

種族特性は奪えんかったけど「統率」「思念伝達」はデカい

統率スキル持ってるし多分こいつが群れのボスなんやろう。けど、致命傷負ってスキル全部失った狼なんか恐るるに足らんわ!


思念伝達スキルを失ったことで配下のフォレストウルフとの繋がりが絶たれ、明らかに混乱しているボスを無慈悲に切り捨てた。

索敵で周囲を確認すると、あれ程統率の取れた連携を見せていたフォレストウルフがパニック状態になり、連携が取れず次々と騎士に討ち取られていく。

中には逃げ出す個体もいるが魔法で後ろから撃ち抜かれている。


「終わったみたいですね。シスターララ、ご無事ですか?」

依然へたり込んでいるシスターララの安否を確認した。


「大きな怪我はありませんが、魔力が切れて動けません。」


1人でボスの攻撃耐えてたんやからしゃあないよな。

器合わせの容量で魔力補填できるんじゃなかったっけ


シスターララの手を取った。

「な!なにをっ!?」

シスターララはひどく狼狽えたが倦怠感のせいか抵抗はしない

「シスターララに魔力を渡します。」

「え?」

魔力操作を使い、シスターララの手に魔力を流し込む

「あ、魔力が...」


流し込み過ぎんように気をつけんと。

シスター爆発させてまうかもしれんしな。


魔力操作の加減に集中しているとシスターがポツリポツリと話し始めた。


「助けてくださって、ありがとうございました。」


「防壁が破られた時、やっぱり見捨てられてここで死ぬんだって...」


意図的に孤立させられたんか。あの女騎士の問題行動はシスターだけじゃなくて、仲間の騎士も危険に晒す行為やった。

ホンマに100%あいつの意思なんやろうか。


「勇者様?」

「あ!ごめん!」

あぶな!容量8割超えてた。

「もう十分魔力を分けていただきました。ありがとうございます」


今まで無表情で塩対応なシスターが破壊力抜群な笑顔で不意打ちしてくるとは...

危うく理性持って行かれるとこやったわ。


「いえ、被害状況を確認しましょう」

なんとか平静を装いボロボロになったテントを出た。



ボス個体を討伐したことで統率の乱れた狼型の群れは掃討されていた。

空を見上げると遠くの空が白んできた。


「...もう一息やな」


患者達が寝静まり、薄暗い廊下の窓から空が白み始めた空と重なり口癖のように呟いた。


夜勤はあんま好きじゃないけど、この時間は結構好きなんかもな。


「セシル、被害状況は?」

「負傷者はいますが死者はいません。休息を取り、帰還の準備を始めましょう」


バキバキバキ  ズズーーーー・・・ン


大木が倒れる音が森に響き渡る

帰還の準備を進める騎士は手を止め、剣に手をかける。


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