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対立

なんとか自室に戻った上総は、食事と入浴とトイレ以外は瞑想をしてMP回復を再開した。



「あの、シロカネ様?お休みになられるならベッドをお使いになられてはいかがでしょうか?」

ナタリアが不思議そうに提案する。


「今日の魔法講義で器合わせをして急に上限が上がったのでしばらく動けなかったんですよ。瞑想をしてなんとか動けるまで回復しましたが大変でしたよ」

はははと笑いながら答えるとナタリアは青ざめた。


あれ?このパターンって...

異世界ものやと『また俺何かやっちゃいました?』ってお約束やけどやられる側なのは聞いてないぞ!


「器合わせを限界まで1日でやったんですか⁉︎しかも動けるようになるまで自力回復って...」


あぁ、ナタリアがまた引いてる。俺がヤバイやつ認定されるのは解せんな。


「通常器合わせとは数日かけて徐々に上限を上げつつ、多い人から足りない分を補いながらするものなんです!」


無理矢理魔力ねじ込まれた挙げ句に全部綺麗に吸い取られたんやけど⁉︎


「それとめいそう?ですか?MP回復なら睡眠をとるべきです!尚更ベッドでおやすみください!」


演習場での一件のせいでナタリアの信用を失ったのか聞く耳を持ってくれない。


変に畏まらずに意見を言ってくる距離感は話しやすくて嬉しいんやけど、そのせいで世話焼きになってる気がする。

しゃーないな。睡眠と瞑想の回復速度の比較実験としようか。

22時時点でMP2730/6839 MP回復速度上昇Lv.2で1分に3回復するようになった。瞑想Lv.3で回復速度3倍になって、9かいふくす、、r...。


魔力切れの倦怠感に体力を削られていたため、ナタリアに促されてベッドに入り、比較実験について考えている内に寝落ちしてしまった。



「おはようございます!シロカネ様」

ナタリアの元気な挨拶で目を覚ました。


「おはようございます。ナタリアさん」

一瞬で寝落ちしてもうた。比較実験はどうかな。

「今は何時ですか?」


ナタリアは小さく笑い

「午前11時ですよ。とてもよく眠られていて安心しました!もしまた演習場に行かれていたらどうしようかと心配していましたから」


「あはは。おかげさまでぐっすりでしたよ。4番隊の訓練は明日の夜ですから大丈夫ですよ」

一瞬にしてナタリアの顔が曇る


「そういうことを言ってるのではありません。それと次の訓練には私も行きます。」


「え、どうしてですか?4番隊は苦手なのでは?」

「嫌いです。訓練も行ってほしくありませんし、前回のようにボロボロになられるのも嫌です。なので見張っていざという時は騎士団に通報します。」


ナタリアが毅然とした態度で言い放つ。

「...通報されると、どうなるんですか?」

「演習場に騎士団が雪崩れ込みます」


それはまずい。そんなことになったら騎士団と王国軍で戦争が起きる。


「通報されないように気をつけます。ところで、食事の用意をお願い出来ますか?」

「...かしこまりました。」

ナタリアなにか言いたげな顔をしながら食事のセッティングに向かう。


やれやれ。比較実験の結果は、

MP6630/6839

寝る前が2730やったからちょうど3900回復したんか

13時間睡眠で3900...平時の回復量が1分3やから...倍にはなってないな。せいぜい1.5倍くらいか。

これやったら瞑想の方が効率的やけど熟睡の満足感はデカいな。


MPが9割以上になったことで身体には倦怠感もなくなっていた。

ナタリアが用意した食事を食べ、今日の講義に向かう。


ナタリアが言うには

セシルの討伐訓練と聞いていたのだが、待ち合わせ場所にきたのは教養講師のソシャだった。


「ご機嫌麗しく。シロカネ様、本日は講義の一環としてご案内したい場所がございます。」


ソシャに案内され、馬車に乗り込む

王城を出て、大きな通りを抜けて王城に引けを取らない巨大な建物に着いた。


純白のサグラダファミリアの様な大教会が聳え立っていた。

「ここがシヴィル王国の国教でもあるサンコッテ教の総本山でございます」


ソシャに連れられて教会に入る。

内部は高すぎる天井とそれを支える何本もの高く聳える柱によって外から見たよりも広い空間が広がっているのかと錯覚するほどだった。


壁には色彩豊かなステンドグラスがはめ込まれ、それぞれが太陽光に色をつけて大理石の床に見事な光の絵画を描き出していた。

あまりに神々しく、流石聖地に建てられた大聖堂。この時代に生まれた者なら本当に神の存在を感じて入信するのも頷ける。


ソシャに案内されるまま、大勢の祈りを捧げる信者を間を通り、最奥の祭壇にたどり着く。

そこにはカーディナルレッドの服に身を包む男性と1人のシスターが、上総達を待っていた。


「フロレンシオ枢機卿猊下!勇者シロカネ様をお連れしました!」

「はじめまして、シロカネ様。私はこのサンコッテ教会で枢機卿を任されております。ジェイミー・フロレンシオと申します。以後お見知り置きを。そしてこちらは、」

青年といっても差し支えないほど若々しい枢機卿は柔和な笑顔で挨拶をした。


「シスターをしております。ララ・フロレンシオと申します。」

にこやかな枢機卿と打って変わって、無表情で端的に自己紹介を済ませた。

美しさに加えて、あまりの無表情さに人形なのではないのかと疑ってしまうほどであった。


「白銀上総です。よろしくお願いします。この度は、講義の一環ということでお邪魔させていただきました。サンコッテ教についての講義なのでしょうか?」


わざわざ入信するつもりはないけど、魔物を退ける結界とやらにも興味はある。

それに、国教のことは多少知っておいた方がいいやろう。


「はい。その通りでございます。客室を用意しておりますので、どうぞこちらへ」

ララシスターが淡々と案内を始める。


王城の客室に比べると一見質素だが、一つ一つの調度品に統一感があり、落ち着いた高級感のある部屋に案内される。

香が焚かれており、日本人の上総に馴染みのある香りに安らぎを覚えた。


「なんだか、居心地のいい部屋ですね」

「気に入っていただけてよかったです。では、こちらにおかけ下さい」

ジェイミー枢機卿に促され、席に着こうとした時


バタン!


客室の扉が乱暴に開かれ、静かに立ち上っていた香の煙が霧散する。


「ソシャ殿!勇者様の本日の講義は討伐訓練に変更されたはずだ!これはどういうことか説明してもらおう!」

そこには怒りを露わにしたセシル・ド・チェカルディがいた。


「...チェカルディ家の娘よ。ここは神聖な教会です。それに講師陣筆頭の私は講義の変更を許可した覚えはない」

ソシャはセシルを一瞥すると感情を込めず、落ち着いた調子で言い放つ。


「なにぃ?講義変更には陛下の許可がある。貴殿の許可は必要ない!」

対するセシルは感情むき出しにソシャに食ってかかる。


「冒険者風情が…貴様を貴族とは認めない。ましてや上級貴族になど」

「貴殿がどう考えようが関係ない。上級貴族であるなら陛下の意向に従うべきではないのか?」


ソシャが不愉快そうに眉間に皺を浮かべ、初めてセシルに向かい合う


「それでは、こうしてはいかがでしょう」

一触即発の空気に枢機卿が穏やかに提案する。

「討伐訓練にフロレンシオシスターを派遣いたします。移動時間や空き時間にでも教会についてご説明させましょう。訓練中は回復役になることも出来ましょう。両名ともいかがですかな?」


「猊下の寛大なご提案。痛み入ります。」

ソシャが枢機卿に向き直り、丁寧に頭を下げる。

「私も問題ございません。御息女をお借りいたします。」

セシルも怒りを収め、枢機卿とシスターに頭を下げた。


「シロカネ様せっかく御足労いただいたのに申し訳ありません。何かございましたらたいつでも教会にお立ち寄りください。」

「ええ、またお邪魔させていただきます」


セシルとシスターを伴い、教会前に停められた馬車に乗り込む

馬車には上総の装備がしっかり積み込まれていた。


そのまま討伐に連れて行く気満々やな。


「セシル先生、今回の討伐訓練の内容を教えていただけますか?」

「はい!今回は森の深い場所で一泊します!」


まさかの泊まりかよ。通りで護衛も馬車も多いと思ったわ。


「シスターはいきなり連れてこられましたが、準備などは大丈夫ですか?」

「問題ございません。私のことはどうぞお気になさらず。」


お、おぉ。なかなか塩対応やな。

またセシルの機嫌が悪くなっていってる気がする。


「教会についての講義をはじめさせていただきます。サンコッテ教は...」

ララは淡々と教会の成り立ちと歴史について講義を始める。


かつてこの世界に巣食っていた悪魔達との争いが絶えませんでした。

それは新たな文明を憎んでいるかの様に圧倒的な数で押し寄せ、殺戮と略奪の限りを尽くしていました。

世界は混沌に呑まれ、闇に閉ざされました。

そんな中、勇者アルマン・デル・シヴィルが悪魔達を次々と倒し、悪魔王を討ち取りました。

それから悪魔達による被害は格段に少なくなり、人々から英雄と讃えられました。

初代シヴィル王国国王アルマン・デル・シヴィル英雄王が誕生しました。

また、勇者と共に悪魔王討伐に貢献した僧侶ルーク・フロレンシオが叡智の神サンコッテ様の福音を受けてサンコッテ教を開き、シヴィル王都を聖域と定め、今日まで王都を守り続けてきたのです。


あくまで講義と淡々と無感情に話していたララが、最後には少し誇らしげに語っている様に見えた。


聖域の結界は国民の信仰の力によって支えられているとされているため、シヴィル王国の国教となりました。


「何か。ご質問はございますか?」

不意にララに真っ直ぐ見つめられ、ドキッとしてしまった。


「えっと。聖域の結界は魔法で作られているのですか?」

「結界はサンコッテ様より賜った教会の秘術です。申し訳ありませんが、お答えすることは出来ません。」


「そうですか。それは失礼しました。」


技術の秘匿...いかにも宗教っぽいな。

シスターのステータスを確認しとk...

「シロカネ様!そろそろ予定地まで徒歩になります。ご準備をお願いします!」


ララの講義中、隣でうつらうつらしていたセシルが元気いっぱいに声をかけてきた。


...面食らって干渉に失敗してもうた。

気を取り直してレベリング頑張るとしますか。


そして上総は前回同様にフル装備で馬車を降りた。


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