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授業スタート

国王との謁見の翌日


「失礼致します。講師陣揃いましたのでご挨拶に上がりました!私が教養、マナー担当で講師筆頭のフィリップ・ル・ソシャでございます。」


「...あ、はい。よろしくお願いします。」

朝5時半にゾロゾロ引き連れて突撃してきやがった。

これがマナーの講師だと?

しかし、この国では早朝1番に訪ねるのがマナーなんか?


いや、違うっぽいな。後ろの3人中2人はフラフラやもん。

絶対ソシャが振り回して突撃してきただけやわ。


「こちらが歴史の講師でカレンガ先生、剣術を担当されるチェカルディ先生です。そして魔法の講師を担当されるルノー先生です。」


そんな一気に紹介されても、人の名前覚えるの苦手だから頭に入ってこない。

おいおい覚えていくしかないな。


「それでは早速第一回目の講義としてこの国でのマナーについて始めさせていただきたいのですがよろしいでしょうか?」

「え?今から!?」

冗談じゃない。早朝に叩き起こされていきなりマナーの講義なんか受けれるか!

「すみません。昨日は慣れない謁見で疲れてまして。講義は午後からにしてもらえないでしょうか?」


「かしこまりました!では改めてお伺い致しますので、よろしくお願いします」

そういうと他の講師を連れて去っていった。


こっちがマナーを教えたくなるような講師やったなぁ。

ちょっと午後が憂鬱や。


午前は能力の確認をしておこう

ステータスオープン


名前:白銀 上総 76.4

年齢18

クラス:勇者

Lv.5

HP:20

MP:10

ATK:50

DEF:50

RES:10

スキル:回復魔法Lv.2

ギフト:生物のステータスに干渉し、奪い与えることが出来る


昨日は気づかんかったけど

年齢が18になってる

これは召喚の影響なんか?

鏡を見ると疲れたアラサーの見た目から高校生の時くらいの見た目に若返っている。

これに関してはアラサーのまま魔王と戦わされるのは勘弁したいから文句はないな。


問題はこのチートギフトやな。

ステータスに干渉して奪えるってことはスキルとかギフトも奪えるってことか?

出来ることを試していきたいけど


鑑定士がおる以上不自然にスキルを増やすわけにもいかんし、周りの人からスキルが消えたりしたらギフトの嘘がバレるやろう。


干渉できるということは見るだけでも出来るんか?

「ナタリアさん、紅茶をいただけますか?」

「かしこまりました。」

紅茶を注ぎにきたメイドに対してステータス干渉を試みる


見えた!


名前:ナタリア エドワーズ 42.2

年齢14

クラス:貴族

Lv.14

HP:10

MP:20

ATK:5

DEF:5

RES:5

スキル:生活魔法Lv.3 礼儀作法Lv.7 演算能力Lv.4


だいたい手が届く範囲で干渉出来るみたいやな

「ありがとうございます。一つ聞きたいのですが、この世界でスキルというのは生まれ持ったものなのですか?」

「スキルは研鑽にやって得られるものがほとんどでございます。中には生まれ持った特殊なスキルもあるようですがどんなスキルがさらに該当するのかは存じ上げません。申し訳ございません。」

ナタリアは深々と頭をさげる。


「いや、頭を上げてください。少し気になっただけなので、ありがとうございます」

少し安堵の表情を浮かべるナタリア

そういえば普段から緊張しているように思える

「そんなに萎縮しないでください。別にあなたに危害を加えたりしませんよ?」


「お気遣いありがとうございます。しかし、勇者様のご機嫌を損ねることはこの国の未来をも左右しかねないことなので。」


あーね。なるほど。

それは緊張するよな。


「大丈夫です。気軽に話してもらえた方がこちらも過ごしやすいので。もう少しラフに対応することを検討してみてください」

「かしこまりました。お言葉に甘えさせていただき検討致します。」


ビビられながらお世話されるのは少々居心地が良くない。

そもそも庶民の俺がお世話されること自体落ち着かない。


午後になり、マナー講師が来てしまった。

「ご機嫌麗しくシロカネ様!」

ハイテンションマナー講師ソシャの1時間半にも及ぶ講義は

座学中心なのに酷く疲れた。


そのせいかスキルに礼儀作法Lv.1 精神攻撃耐性Lv1を獲得し、RESか10→15に上がっていた。

アイツの講義は精神攻撃判定なのか。

まぁ、耐性はいくら積んでも無駄にならんし

これはこれで有意義なのかもな。


続いては歴史のが始まった。

「改めまして歴史を担当します。ロマン・ル・カレンガです」

どうやらこの国は620年前に魔族の王を討ち取った英雄王アルマン・デル・シヴィルが建国した。


それからも魔族との衝突は度々起こっていたが、戦争に発展することはなかった。

しかし5年前に突如新たな魔王が台頭し、辺境の街を丸ごと一発の魔法で消滅させて宣戦布告した。


魔族は、王国民とは全く違う魔法形態らしく

防衛機構が全く機能せず苦戦を強いられていた。


そこで、王国は魔族に対抗すべく勇者召喚を行った。


これがざっくりまとめたこの国の歴史らしい。

前魔王が討たれてから600年以上経ってるのに、何故今になって宣戦布告してきたのかは謎だそうだ。


「勇者様!剣の鍛錬に討伐へ行きましょう!」

歴史の講義中に、部屋に乱入してきたのは、美しい顔に似合わないフル装備に冑を抱えた剣術講師のセシル・ド・チェカルディだ。

「チェカルディ先生。まだ私の講義が終わっていないのですが。」

「そうなのか?しかし、スケジュールでは私の講義の時間だぞ?」

某マナー講師が独断で講義を延長した皺寄せがきてるな。


「分かりました。この国の歴史はあらかたお話出来ましたし、詳しい歴史に興味がおありであればいつでもご質問下さい」


このカレンガ先生は周りに振り回されて貧乏くじを引くタイプなんやな。不憫な。

「ありがとうございました。丁寧な講義でとても分かりやすかったです。」


「さぁ!勇者様!早速行きましょう!」

見るからに熱血な女騎士に手を引かれて講義室を後にした。


剣の鍛錬と聞いていたから、演習場みたいなとこで型の練習から始めるのかと思ったが。

用意された鎧は白いにこれまた銀の装飾がついたとても豪華なものだった。

この鎧、金属とは思えないほど軽い。厚手のパーカーくらいか?

これなら長時間装備してても大丈夫そうやな。

「なんか、変な感じがしますね。」


「気づきましたか?その鎧は特別な祝福を受けた聖銀で出来ています。そしてさらに!いくつもの機能が付与されているのですよ!」


とても誇らしそうなチェカルディ先生によると、

〝体温調節〟〝自己修復〟〝軽量化〟〝堅牢〟〝耐久性〟〝ステータス上昇〟〝注目〟〝発光〟が付いてるらしい。


なるほど。凄まじいスペックやな。

正直、見た目の恥ずかしさに目を瞑れるくらいすごい。


「この注目と発光とは?」

「それはですね!私が提案して付けてもらったんです!!勇者たるもの民衆の注目を集めて活躍を世に知らしめる必要がありますし、発光している方が神々しくていいと思いまして!」


お前、何してくれてんねん!

スペックで受け入れられそうやったのに、羞恥心が逆転してもうたわ!


「お気に召していただけましたか!?」

「あ、ありがとうございます。」

苦笑いで受け入れるのが精一杯だった。

キラキラした目で見上げてくる美人騎士にNOとは言えなかった。


「あの、チェカルディ先生。フル装備でいきなり討伐ですか?」

「勇者様、私のことはセシルと呼んでください。いくら勇者様といえどレベルが低いうちはちゃんとフル装備で訓練された方がよろしいかと思います。」


俺が引っかかってるんはフル装備じゃなくて討伐の方や!

「分かりました。では勇者様と呼ぶのはやめていただけますか?」


「承知しました!カズサ様にはこの街道沿いに出没するゴブリンを討伐していただきます。」


ファーストネームを許可したつもりはないのだが。

距離の詰め方がすごいな。


「ところでカズサ様は戦闘のご経験はおありですか?」

「ないですね。僕の世界には魔族やモンスターはいないし、平和だったので、本気で戦闘する機会なんてありませんでした。」


「それは、いい世界なんですね。この世界もカズサ様がそのように変えてくれると信じております!」

大きな期待を抱えて勇者カズサを真っ直ぐに向き直る。

見るものを虜にするような人懐っこい笑みを浮かべて


・・・。

「そうなるといいですね。」

「カズサ様なら出来ると信じてます!」

「ありがとうございます。では、稽古をお願いします」


街道へは王城から馬車で1時間程かかるらしい。

王城から初めて外に出たが、町並みはテレビで見たような中世ヨーロッパのような雰囲気が漂っていた。

馬車が通る道は意外にも綺麗に整備され、中央には白線で車線がきっちり分けられていた。

しかもその白泉がほんのり光を放っている。

セシルの話では、白線のおかげで夜間も暗闇になることなく街を照らしてくれているとのこと。


だから街灯が一本もないんやなぁ。


行き交う人達の顔立ちもあまり馴染みのないヨーロッパ系の白人ばかり。


「王都の近くでゴブリンに遭遇するなら街中に出現してもおかしくなさそうですが。」


ふと浮かんだ疑問を口に出してしまった。

馬車に同乗しているセシルから

「王都はサンロッテ聖教によって浄化されているので滅多に魔物は出現しませんし、出てもとても弱いんです。」

「浄化ですか。結界とかですか?」

「詳しいことは秘匿されていて私達にもわかりませんが、空気中の魔素も外に比べて薄くなっているので安全に暮らせているんですよ。先程説明した道の白線も教会が設置してくれたものなんですよ」


「国民の生活に深く関わっている宗教なんですね」

「初代国王様とともに魔王を討伐された僧侶が開いた宗教と伝えられています。古くからこの国を守ってくれていて国教になっているんです。」


英雄のパーティにいた僧侶が開いた宗教なら人気も出るやろうな。

でも安地を作れるのは本物ってことなんやろうか。

「そのうちカズサ様のパーティにも聖教から優秀な僧侶が派遣されると思いますよ」


そら、成り立ちを考えると意地でも派遣してくるやろうな。変なのが来ないといいけど。


「関所に到着しました。私は手続きをしてきます。街道へは徒歩になりますのでご準備を」


馬車を降り、1時間揺られ続けた身体をほぐしていく

手続きはあっという間に終わり、関所を抜けた。


すぐに街道を外れ、王都の直ぐ側と思えないほど茂った森を進んでいく。

「ところで、ゴブリンについて教えてもらえますか?」


「僅かばかりのの知性とそれなりにナイフが使えます。子供くらいの背丈で力も強くはありません。ですが、数が厄介なので油断は禁物です。単独でいるのは滅多になく、基本的に4〜8体の集団です。」


突然セシルが立ち止まり手を上げ、拳を作る。

事前に説明を受けた。静かにという合図だ。

ふたりともその場に息を殺してしゃがみ込む


セシルが小声で

「探知にかかりました。11時方向に50m先に4体、おそらくゴブリンですね。こちらに向かってきてます。気づいてはなさそうですね。」


いよいよ実践か。

しばらくそのまま待機していると、本当に4つの小さな影が近づいてくる。

〇〇だった件みたいなゴブリンを期待していたが、とても醜悪な見た目をした汚いゴブリンだった。


ゴブリンが素通りするまでやり過ごして後ろかr...

「ギャ!!」


!?

まだ10m程距離があるにも関わらず4体全員が一斉に俺を凝視した!

「見つかった!?ゴブリンに探知スキル持ちなんてないはずなのに!」

セシルが立ち上がり剣を抜く。


セシルのお手並み拝見とい...

「カズサ様!本当に危ない時は助太刀します。頑張ってください!」


「え!?」

まさかの言葉に耳を疑いつつセシルに遅れて剣を抜いた。

両刃の直剣もまた聖銀の輝きを放っていた。


ゴブリンの一体が、俺を目掛けて走ってくる。


初めて明確な殺意を向けられ身体が強張る。

感覚が研ぎ澄まされ、動きがゆっくりに見える。


どんどんと距離を詰められる。

身体は恐怖で動かないがゴブリンの姿だけは鮮明に捉えられる。


人間の子供くらいの背丈

(うちの娘より少し大きいな)


ボロボロでサイズの合わない服

(襲った人間の衣服を奪ってきているのか?)


刃こぼれだらけで錆びているナイフ

(あんなので切り付けられたら破傷風は確実やな)


引き伸ばされた時間の中で、感覚が視覚に全振りされて音が聞こえない。


自分を殺そうとする相手のことを観察することしか出来ない。


距離が3mを切ろうとした時

「カズサ様!!」


「はっ!」

セシルの声が頭に響き、一気に現実に引き戻される。

失っていた聴覚が戻り、ゴブリンがペタペタと裸足で走る音が聞こえる。

呼吸も出来ていなかったのか肺に酸素が取り込まれ、身体中に神経が通るような感覚を覚えた。


「うらぁ!」

手に持った聖銀の剣を横薙ぎに斬りつけた。


その美しい刃がゴブリンの血で汚れることなく空を斬る


再び引き伸ばされた感覚の中で頭を屈めたゴブリンの頭上を素通りしたのが見えた。

ゴブリンが下衆な笑みを浮かべながらナイフを構え、脇腹を目掛けて突撃してくる。

あかん!避けられへん!


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