第十話 スタンピードとカインの意地。
魔物の大群が街に押し寄せ。民衆はルシェルフォン家の館からの地下通路で安全な場所へ避難していた。
出口が穏やかだったのがせめてもの救いだった。
しかし・・・
「クッソ!こんなことなら魔物と戦う経験、ちょっとはしとけばよかったって!!」
俺は絶賛格闘中だった。
え?避難してないのって? それがね・・・
時は数分前に遡る。
「大丈夫ですか!? Aチームの方一名、此方の方は右脚を負傷しています! 救助した後にこの場からBチームに合流してください!」
焼け焦げた家屋や、それらを荒らす魔物達。 奴らは一様に嗤っていた。
しかし無闇に挑発して狙われれば元も子もない。 だから俺は奴らを無視して民衆の救助を優先する。
「カイン様、合流後はさすればよろしいでしょうか?」
「合流後、Bチームの方に安全が保障されていたならば、此方の方を預けて戻ってきて欲しい! まだ僅かだが民が残っていると聞き及んでいる!」
「はっ!かしこまりました!」
慣れない言葉とか言ってる場合じゃねえ! クソッ!5月によくある辞令出向よりも突然じゃねえか! マジで自然現象にせよ誰かが吹っかけたにせよ、やったやつは間違いなくその身体を横向きに吊り下げて3周分捻りに捻ってやる!
「カインくん!?」
「あ!?んだアルエット!!って」
なんで?
「なんでまだいるんだ!!ここまで避難勧告は聞こえてないのか!?」
「ごめんカインくん! 聞こえてはいるんだけど、お父さん、脚を怪我しちゃって動けないの!! 私じゃお父さんを運べないし! どうすれば・・・!」
「っ!ちょっと待ってろ!今此方の者を呼ぶから!」
俺は見慣れた姿とはかけ離れた焼け焦げたケバブ屋の屋台を少し出て、視覚と聴覚を頼りに館の人を探した。
「おーい!チームAの執事の誰かいないか! 此方に脚を負傷した大人の男がいるので運んでいただきたい! 事態は急を要する!」
「おい!?お客さんこんなとこでなにしてんだ!?外はやべえぞ!?」
「ってクラップキングさん!! 貴方も早く! ・・・ん?」
「ああ!今勧告聞いて館まで向かってんだ!」
「わかりました! 恐らくシアも一緒でしょう! どちらか動けますか!」
「ああ、俺が動ける! シアはダメだ!足を挫いてる!」
くっ。 ・・・でも、クラップキングさんが無事なら、それなら!
「それならまだ行ける! クラップキングさん! やるぞ! 即興道具作りだ!」
「なんだお客さん! こんな状況で閃いたのか!?」
「ああ! そっちにいるシアとこっちにいるケバブ屋のおっちゃんを同時に運べる手押し型の台車だ!」
「わからんから単語で頼む!」
「直角90度! 縦向き取手、横向き台置きスペースに小型四輪!」
「ん? ・・・ああっ!いつもんごとく良うわかったぞお客さん! 任せとけ! つなわけで今から45秒もらうぜ!」
そう、俺が思いついたのは町内の廃品回収とかで使うような手押しのガラガラ台車だ。 なぜそんなものに乗ることが思いついたのかって? ・・・OK Google 『前世の治安』 ・・・すみません。よくわかりません。 そんなことを考えてる内にそろそろ。
「お客さん最高だ! 急ごしらえだが完成したぞ!」
「流石天下のクラップキング! 魔導具以外もなんのそのだな! さあおっちゃん肩貸して! 台に載せるよ!」
「ああ、助かるよ。」
「シアもこのまま乗っていくんだ!」
「わかってる!カイン後でゼッタイ合流な!」
「当たり前だ!!」
そう言ってる内におっちゃんを載せ終えた。
「よしアルエット!クラップキングさん! ついてきて! 館から避難しよう!」
「おう!」
「うん!」
『ギシュアアアア!!!』
ん?返答が一人多い気が…。
「って人じゃねえし! なんだコイツ!?」
眼の前のおっちゃんのケバブ屋の奥から地を割って道にしてきたかのような魔物は、赤く鋭い眼光で俺たちを一つの群衆としてのように睨みつける。
「な、なんで地竜がこんなとこにおるんや…」
地竜!?
「これはもう、ダメかもねえ。」
ダメかも!?
「あっ、あっ、」
声出てねえ!
「クラップキングさん!おっちゃんとシアを連れて早く館へ!!」
「で、でもそんなことしたらお客さんとそこの嬢ちゃんは。」
「ガタガタ抜かさんとはよ動けやぁ!!」
「お、おう!!」
クラップキングさんはおっちゃん達を連れて館へ急行した。
「カ、カイン君。」
「アルエット、無理するな。見れば誰でもわかる。腰が抜けてるのに、この状況で台車に向かえる訳ないだろ。」
「私さえ歩けていれば!!」
「ごちゃごちゃうるせえ! なるようにしかならねえもんなんだ! 俺はお前を見捨てて生きていけるほどメンタル強かねえんだよ!」
「カイン君、どうしてそんなに。」
「どうしてもクソもあるか! ただの本音だ! それ以上でもそれ以下でもねえよ!」
さて!どうするどうするどうするどうする!!何故かはわからんが相手は地竜! 対する俺は魔法をちびっと齧っただけの戦闘経験ナシの正真正銘の雑魚!更に追加で味方を庇いながら戦う条件付き!
・・・いや無理だろ!無理ゲーだよ!! いつもヨシュアで自己をを保ってるけど! こう見えて正直者でチキンなんだよ俺は!
そんなことを考えてる途中でも時計の針は進むし、地竜だって待ってやくれない。 ましてや背後のアルエットなんてもっと動けない。てかこんな恐怖状況に年端も行かない女の子に動けって言う方が鬼畜だわボケナスゥ!!
さっきから地竜、俺の視線誘導に全く動じないのも通じてない感じがしてすっげぇ腹立つ!ほんと!圧倒的格差で殴るなよ! あなたは格闘ゲー厶のアケモの金ラスボスでも、僕はコントローラーでしかコマンドの打てない非力マンなの!! 私のおててはおててです!コントローラーに鳴りえません!詰み!
・・・じゃなくて考えろ!考えろ!考えろ! ・・・わかるかぁー!ノーヒントにも程があるわ! もームカついた! 明後日の方向に石投げて建物倒壊させて雪崩させて圧死させよう!そうしよう! となったらやるか!!無詠唱!!
無詠唱はちゃんと練習した!更に言うと文献も読み漁った! いけないことはない!! と、思いたい! てか思わせろ!!
「(土の石弾!)」
俺は敢えて外した土魔法で、建物の倒壊を狙った!
建物はしっかり音を立てて倒壊した。 しかし・・・
「おいおい、耐久はガチのバケモンかよ。お前怪我したことあるのか? って!」
地竜は傷ひとつ付いてなどいなかった。
「シュゴガァァァ!!」
「うるせえ!てめえの主語はてめえで決めろ! って危なっ!」
なんだコイツ!? さっきから、ずっと合ってないような目の焦点なのに、俺が喋ったら一瞬で捉えてきやがる! まるで耳障りかのような・・・。
「そういうことかッ!」
そうだな地竜! 見ていないように見せかけてるんじゃくて、どこからでも見えてるように見せかけてるんだな?
恐らくヤツは目が見えない、もしくは凄く悪い。だが、耳が良いのか、恐らくそれで見えない視覚をカバーしている。 なんなら目に頼らない分、死角などあってないようなものだ。
ったくふざけんなよ! どんなバケモンだよ! ・・・でも。
「ありがとう。思いついたよ。お前の攻略法。」
耳が聴こえるなら、俺は耳を狙う。
しかし破壊するにはただ狙うんじゃダメだ。静音に慣れさせた後に、不意の方向からの一撃を叩き込む必要がある。
「そのための位置調整からだな。」
まず俺たちの現在位置はアルエットとおっちゃんの家の近くの表通りから逸れた路地だ。しかし表通りへの道は見事に俺と地竜の共同作業でもう通れねえ。クラップキングさんたちを追えないと言えば聞こえは良いが、俺たちも逃げられない。
そこで空いているのは反対側の道。路地をそのまま抜ける方角だ。ここからなら比較的短時間で決戦兵器を取りに行ける! やるしかねえ!
「アルエット。俺の背中に乗れ。」
「か、かいんくん!?」
「しっ!大丈夫だ。俺が絶対死なせやしない。」
守れるかどうかなんて、保証できない事は言えないんだ。ビビりだからな。
「わ、わかった。」
「さんきゅ。」
俺は風魔法を足元と身体の周囲に付与して走り出す。
これにより、高速の足と、大気とは切り離した空気間で纏った為、無音での移動を可能とする。
(そら見たことか! やっぱりやつは音で俺等を判断している!)
俺たちが逃げてもこんなやつがいればどちらにせよ危険でしかない。 だったら可能性のある内に潰すしかないだろ!!
・・・てかそもそも館まで逃げ込める気が全くしないんだよ!!
「か、カイン君、ここは?」
「クラップキングさんの工房だ。 緊急事態だし、ちょっと借りてくもんがある。」
「借りていくモノ?」
「ああ。」
俺が初めて頼んで作ってもらった魔導具。
確かに館にはある。しかしそれはバドリフさんがさっきまで使っていたし、さっきも言った通り館まで道筋的に逃げられる気がしない。
だからこその!
「やっぱりあったな。再生産用だかなんだかはわからねえけど、借りてくぜ、天下のクラップキング。」
「アルエット、これを運ぶぞ。」
「う、うん。わかった。」
地竜討伐なんて綺麗事は並べるヒマもねえ!
だけど俺の目の前で綺麗な女は死なせねえ!絶対だ!異論は認めん!!
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致し方無しに戻ってきてしまったが。
まぁぁぁじで怖えってもう!!
だってあれじゃん! デカいじゃん! ユ○バにあるようなもんじゃないもん! 生物の熱気を感じるもん! 耐えれるけど耐えたくねえよこんな圧!
・・・でも、策に溺れないように気をつけるしかねえよな!
地竜に向かって二発の氷の槍が襲いかかる。
地竜はそれを危なげなく迎撃する。
しかしその間に別の二発の氷の槍が地竜の竜皮に突き刺さる!
(よっしゃビンゴ! 第一フェイズ『配置アイスランス』成功!)
俺が昔好んで読んでいた漫画では、とある星の海の中で、2つの基弾を海に隠して自身の囮にしたバトル漫画があった。
俺も近づくぜ。その段階へ!
アルエットを少し離れた見える場所に置いて、片手ずつに魔導具を持って目にも留まらぬ速さで急接近。
「さぁ、ハッタリでもズルでも、なんだって言いやがれ!」
これが一番叫びやすい、最強のシャウトだ!
俺は混乱している地竜ノ耳元にスピーカーを近づけ、もう片方の手のマイクを口に近づけ、こう叫んだ。
「なぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?やっちまったなぁ!!!!!」
男は黙ってクール○○だよ!!
あ、やべ、俺も耳ちょっとキーンってするわ。
すみません、これでストックが尽きたのと指が頭に追いつかなくて激痛なんで、投稿頻度は落ちます。嫌でも落とします。




