第九話 あれから色々ありいの、あれ…?緊急事態ってまじ?
帰宅したら館の門前に不審な感じであぐらをかいてるデカい人が居た。
パパ上が取り囲んだ、よくよく見たらクラップキングだった。
「父上、この方は私の客人です。庭でもいいので通してください。」
と無茶振りすると。
「カイン、お前またよくわからん知り合いを増やしたな・・・。」
と、胃薬を飲んでいた。なんのことだか。
「クラップキングさん、ここに来たということは、試作が出来たんですね?」
「おうよ、これが新型魔導具、魔導ギターと魔導スピーカー、魔導式マイクだ!そしてそれらをつなげる魔導ケーブル!」
「やってくれましたね!!クラップキングさん、報酬は弾みますよ!」
ちなみに金はパパ上にはせびっていない。魔法や他の知識や技術で作り上げたアクセサリーを売り捌いて金にしている。パパ上に許可を取った次の日に「もうお前生きていけるじゃん・・・。」とか言われたけどまだ継続的に戦える身ではない以上、こうやって金を稼ぐしか無いだけだ。
「まあまずは使ってみてくれ。」
「わかりました。物は使ってこそですからね。」
魔導スピーカーはアンプの役割も果たしているので魔導ギターを大音量で流せる。 まあ繋ぐ前にチューニングはするけどな。
「よし、準備できたぞ。おいヨシュア。イントロだけ弾くからリクくれ。」
「んぁ?ヴァ〇〇イア」
「久々のギターでいきなりそれはきついからD D〇〇Pにしとくわ。」
「リクの意味はぁ!?」
「ちょっうるせえ!今ドロップDにチューニングの調整してんだから! えっと、てれてれのての音やからて、て、てはここ、れはここ、おけ。」
よし、弾くか。これでも前世ではソロでやってたんだよ!
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結局最後までイントロしてしまった。
しかし良いな。弾き心地が良い。
「やっぱお前にジ〇〇ヌ教えた俺は嬉しいけど複雑だよ。特に音楽の才能尋常じゃねえもん。」
「そうか?んなことないぞ。日本でもギタリストとかやべーの揃いまくってたしな・・・。」
「お、おう・・・。」
「バンド文化を広げたいからなぁ、クラップキングさん、ドラムとベース、キーボードも今度草案持っていくことにするよ。」
「ただアレだぞお客さん、これはできる人しか弾けねえからなぁ、商品展開するにはちと速えかもな。」
「まあその辺は手の空いてそうな人探してできるようにしてからギター教室開いてもらうとかでこれの売上金は回るよ。」
「そうだな、お客さんの見てる時代はすげえ先なのは凄くわかった。その上で相談がある。」
「ん?」
どうやら魔導ケーブルをもっと応用させたいのだが、どう活用すればいいかわからないらしい。
「なるほどねぇ。」
「なんか良い案ないですかね。」
「ヨシュアなんかある?」
「俺に聞くなよ!」
「うーん、そしたら市販の魔力伝達板にケーブルのプラグが挿せるように魔改造して、より複雑な作業をできるようにするとかかな。そしたら誰でも魔力を流すだけで同じ作業ができるようになるかもよ。」
「やっぱどえれーなお客さん…。」
「ちなみに今だったら印刷機とかになるだろうね。文字だけなら製本技術は上がってるけど、写真やイラストの技術がまだまだだし、カメラはレンズの構造とかクソめんどくさくて覚えてないから置いといて、それでイラスト印刷とかできたら製本の文化も進みそうだね。良かったねクラップキングさん。億万長者だよ。」
「後はなんかあるかい?」
「掃除機と、後は、あ!」
思いついてしまった。最強の魔導具を。
「お客さん、今日だけで頭のおかしいことが沢山あった気がするぜ。魔力タンクの活用法も出てきてもうやりたい放題じゃねーか。」
「でもできるでしょ?」
「当然。んじゃ、その3点はお買い上げありがとよ。」
「ああ、今後とも宜しく。」
「ご贔屓に。」
クラップキングは帰っていった。
「お前の頭の中には何が見えているんだ・・・。」
パパ上は震えていた。
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それから暫く経ち俺とヨシュアは五歳になった。
「カイン、ヨシュア、五つの歳おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「ありガトございまァス!」
「カイン、そのイントネーションはなんだ。」
「思いつきです父上。」
「・・・まあ良い。貴様らの暴走具合は今に始まった事じゃない。それで、お前たちは何かやりたいことはあるのか?」
「筋肉ッ!」
「そうだな、ヨシュアは筋肉だったな、それでカイン、お前はどうなのだ?」
「やりたいことねぇ。」
本当に申し訳ないが、特に無い。具体的に心からやりたいことなんて、俺にはない。
「俺は何もせずにゴロゴロ」
「カイン。」
「ちっ。 ・・・そうですね。本音で言っても?」
「はぁ、カイン、私はお前にいくら驚かされたと思っている。今更だ、言ってみよ。」
「はぁ、そしたら遠慮なく。人々の心に余裕ができるような娯楽を作りたいです。」
「娯楽とは、例えばどんなものがある?」
「わかりやすい例ですが一つは賭博場ですね。しかしこれは主に私が好みませんし、やりたい人がいれば勝手にやり始めると思いますので除外しています。」
え? 賭け事嫌いなの? って聞きたい? 俺は大嫌いだよ!
「なぜ賭け事は含まんのだ?」
「賭け事というのはポーカーもチンチロも賭博将棋もパチンコも、前提として人がお金を沢山使って楽しむ遊びです。確かにそれを営業すれば最初は私達も儲かって、人々も楽しいでしょう。しかし、お金も時間も有限です。賭け事にうつつを抜かして家庭をほっぽり出す人もいるかもしれません。いや、絶対出ます。そうなれば残された家族はお金はないし、親も賭け事から帰ってこない。その残された人たちの悲しみは必ず後の時代への禍根になります。だから私は賭博場は作りません。」
「なるほど、細かいことはわからんが、確かに後の時代の脅威となるなら手を出さん方が良いな。その理由はわかった。 して、他の娯楽とは何がある?」
「命を取り合わないルールを決めた運動や、身体を動かすのが苦手な方がゆったりと過ごせるような物まで色々ありますが、娯楽になり得るものは普段のストレスをその時だけでも忘れてスッキリできるような物と思っております。」
「なるほど・・・。カイン、儂はおそらくお前を手助けできんだろう。 しかしカインの事は見守っておるし、楯突くこともせん。 寧ろしても儂が逆効果で立場が悪くなるのが目に見えるわ。」
「わかりました父上。意義がなければそれで構いません。」
「お主はどこまで行くんじゃろうな。 してヨシュアよ、筋肉以外でなにかあるか?」
こいつにそんなの聞いてあげるなよ、筋肉以外なんて、答え一つしか返ってこないから。
「彼女、欲しい。」
ほーら見てみろ。前世も今世も俺より顔はイケメンな癖に、ほんとなんでなんだろうな? 後、カタコトになってんじゃねえよ。
「そういうのはそこのスケコマシに教われ。仕事や夢だ、何かないのか?」
スケコマシ、ねぇ。後でママン達とミリーにそれとなーく「ねえねえ父上に言われたんだけど、スケコマシってなぁにー?」って聞いてやろう。意味知ってるけど。
「うーん、俺がやりたいこと・・・。カインの手伝いですね。」
「ほう、それはまたなぜ?」
「カインは確かに一人で何でも出来る頭のおかしい天才です。ですがこいつは他人に与えることはできても、他人から貰うことは苦手です。だから俺はこいつを支えたい。それだけです。」
ヨシュア、お前はいつもそうだからな。 全く良いのかよ、いつも俺ばっかり貰っちまってるじゃねえか。
「おい、体の良い言い訳に俺を使うな。」
「ええ!?雇ってくれんの!?」
「友情雇用なんてお前以外でするわけないだろ。」
「やりぃ!」
「ということらしい父上。」
「はぁ・・・仕方ない。それもまた夢か。3日後には国王陛下との謁見に向かう。後カイン、これは陛下からの言付けでな、『第二王子ニコラスの事は気にするな』との事だ。」
ん?ニコラス?どっかで・・・あっ。
「行きたくねえ。」
あれじゃん、リアルチャ〇スのニコラスくんじゃん、忘れてたわ。消し去ってたわ。
「まあどうしようもないことだな。後お前たち、王都から帰り次第だが家庭教師がつくことになっている。武術と魔法、一般教養と礼儀だ。覚えろよ。」
特に礼儀だろうなぁ。めんどくさ・・・。学んだところで出るときゃ出るよ!
「では失礼します。」
執務室を後にした。
「お兄ちゃん!!」
右から聞こえる。右には階段。反響の拡散的に・・・。
「右上のスロープからか!」
飛びかかってきた。そうだ。もうすぐ三歳になるレイだ。
「お兄ちゃん!レイと結婚しよ?」
どこで教育を間違えたんだあの人達は。
てかあれか!どこの家庭も女の子の教育はミスりまくるもんなのかおい!?
「お前、アルエットちゃんやミザリアちゃん、シアちゃんに飽き足らず妹までもっ!?」
「色々誤解を招くなヨシュア!!」
「兄貴は黙ってて。」
「あっはい。」
「あのなぁ、結婚しないからな?てかできないからな!?」
「なんで?レイはお兄ちゃんが好きでお兄ちゃんはレイがもっと好きなのに?なんで?」
「捏造はよせ。よすんだ。良い子だから捏造はよせ!」
「お兄ちゃん、レイのこと、好きじゃないの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどな?」
「じゃあ好きってことじゃん!お兄ちゃん大好き!」
「あーーっ!もうめんどくせぇぇ!!!おいヨシュア!こういう時に限ってなんでツッコミが来ねえんだよ!」
「あ、あー、俺も兄なのに、俺も、兄なのに。どこが、違うんだろう。」
「ほとんどすべて。」
うっわぁ・・・。妹からのジト目と素直な言葉の容赦のない攻撃力マシマシコンボじゃん。
「やめて!?これ以上毒を以て俺を消毒しないで!?」
「ヨシュア。」
こういう時はな、お決まりなんだよ。
「カイン・・・!」
「ドンマイ!」
乗っかって笑顔でサムズアップするってな!
「っぐわぁぁぁぁぁ!!!」
「にぃ、よちよち。」
「あぁっ、エミリーッ。俺にも優しい妹は、この世界に存在したっ!!」
「おー、エミリーもヨシュアによしよしできて偉いぞ〜。」
「えへへ、にぃたん。もっとよしよししてぇ。」
「おーそうかよーしよしよしよしよし。」
「にぃたん大好きっ・・・。アヘッアヘアヘッ・・・!」
おい親御さん方、こっちの妹も教育ミスり始めてるぞ。修正はよ。この子は多分年齢的にもまだ間に合う。
「どうしてだよぉぉぉぉっ!!」
俺の隣では膝から崩れ落ちて台パンするヨシュアが…。 ・・・そんなわけでこの子は俺の実の妹となるセリスの第三子、エミリーだ。この子も恐らく転生無し。てかそんなに俺ら以外に転生者がぽんぽんいてみろ、今頃世界が大惨事だわ。
まああれだな。レイがストレートに来るアタッカータイプで、エミリーは評価を高める搦め手タイプだ。
どっちにも俺は恋愛感情なんて欠片もないがな。
「えへへにぃたん。」
「お兄ちゃんっ!」
なぜ妹にはこんなに好かれてるのだろうか。
「俺も兄なのに、兄なはずなのに。こいつと産まれた日同じなのに。」
「産まれた日が同じなのになんで兄貴はそんなに残念なの?」
「俺とこいつを比べちゃいかんってぇ!」
「いや、割と今自分から墓穴掘りに行ってたことはすまん、否めない。」
「にぃ、どんまい?」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
どうやらヨシュアは今世でも俺の分まで苦労を肩代わりしてくれるそうだ。助かるよ。背中は預けるぜ☆
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「てかカイン、お前好きな子とかいねえのかよ。」
「気になってる子ならそれなりにいるけど。」
「それなら早く誰かとくっついてくんない!?お前が女の子達をせき止めるからこっちに一ミリも流れてこないんだわ!?」
「んなこと言われてもなぁ。流れてこないなら掴みに行けば良いのに。」
「それが出来たら人類に童貞なんて存在しないのよ。」
「童貞を捨てる手っ取り早い方法、多分後五年ぐらいしたら使えると思うけど聞く?」
「娼館以外でお願いします。」
「大丈夫、娼館じゃないから。」
「オナシャス。」
「まずナイトドリームを一本丸かじりします。」
「おいぃぃ!!」
「どうした?」
「なんで媚薬効果のあるキノコを一本丸かじりから始まるんだよ!」
「あ?性の本能に身を委ねるためだよ。」
「それじゃ無理やりみたいにならない!?」
「俺は無理やりなんて一言も言ってないんだが・・・まさか想像したのか?」
「追求しないでぇ!?」
「まあ、ナイトドリーム丸かじりからの酒場行って誰か捕まえてヒャッハーしてみ、己の中のなにか大事なものを失うのと同時に朝チュンを迎えられるぞ。」
「・・・やっぱやめとこうと思う。」
「俺もやらんことを推奨する。寧ろやるな。」
「じゃあ言わないで!?」
「お前が聞いてきたんだろうが!」
「ヒイッ!」
愛のない継続的な関係より愛のありまくるワンナイトの方がマジで良いからな。 愛のありまくるワンナイトとか状況クッソ限られるけど。
「・・・ってかなんか気の所為だと思ってたけど、外騒がしくね?」
「奇遇だなヨシュア、外の騒がしさは俺も同感だ。」
「魔物の大群だぁーッ!!」
・・・おいおいおいおい!?
「カイン、聞き間違いかな?」
「ヨシュア、前も同じようなことでフラグおっ立てて死んだ俺らがそれを言っちゃあダメよ。」
「どうしようカイン!?何すれば良いんだ!?」
「取り敢えず俺は父上に指示を仰ぎにいく。ヨシュアは屋敷にいる他の人たちを集めて、安全な場所を屋敷の地下の避難路辺りでどうにかやって確保してくれ。その後はまた連絡しに行く!」
「オッケー!相変わらずわかりやすい指示で助かる!」
「俺も父上もいない時に領主のカリスマを出せるのは残念ながらヨシュア、お前だけだ。カーネル兄さんはまだ幼い。だから頼む!」
「おい残念って、って突っ込んでる暇もなさそうだな。また後で!」
「おう!」
・・・しかし魔物の大群が襲撃に来るなんて文献でしか見たことがない。この街には俺が産まれてからの五年間、魔物一匹すら入ったこともないのに。 何かおかしい気がする。
・・・どっちみち今はそれを気にしている時間はない。父上の所に行かないと!
「父上!魔物の襲撃が!」
「ああ!聞き及んでいる! 来たのはカインだけか!」
「はい! 緊急時の為、共にいたヨシュアには屋敷の者を集めて地下の避難通路に行ってもらいました。」
「・・・そうか。 カイン、お前に頼みがある。」
「は、何用でしょうか。」
「民衆と屋敷の人を出来るだけ連れて、逃げるんだ。」
「父上!?」
「すまんな、ここは辺境伯領とは言え、隣国との対人戦争に備えた作りしかしていない。 魔物など以ての外だ。」
「そんな!?どうにかならないのですか!?」
「どうにかなるのかがわからないからこそカイン、お前に頼んでいるのだ。 ヨシュアも大概だがお前は私の子達の中でも図抜けて頭が切れる。そしてそれを実行する勇気と行動力もある。 カーネルがまだ幼い今、年齢は下とは言えカイン、民衆を引っ張ることはお前にしか出来んことなのだ。」
「・・・わかりました。私が民衆を先導します。父上、必ずこの街を、民の安寧の地を守ってください。」
俺は父上にそう言ってヨシュアの下へ走り出した。
「カイン、腐っても私は辺境伯だ。 なんとかしてみせるとも。 ・・・騎士団よ!今こそルシェルフォンの地を預かった我らの底力を以て、魔物の大群を退けよ! 優先すべきは己の命! 己の身体がそのまま戦力の数になると、諸君らの頭に叩き込め!」
「おおおおおおお!!!」
「行くぞぉぉ!!」
カイン、それにヨシュア。特にお前たちには父親らしいことをまだほとんど出来ていないのだ。 それをせぬまま。
「死んでたまるものか。」
私は戦場へ駆け出した。
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「ヨシュア!」
「カイン!」
地下通路には既に屋敷の人間が集まっていた。
「流石だな。助かったヨシュア。」
「ああ、それでカイン、父さんの指示は?」
「それは今から説明する。 みんな聞いてくれ。今この街は突如北の森から現れた魔物の大群により、未曾有の災害に呑まれている。そんな中、我らが領主であるベガ・ゼグラフィム・ルシェルフォン辺境伯は民衆と屋敷の人を可能な限り連れて逃げろ。 との指示だった。」
みんな父上の指示の内容で今回の事の危険性が過剰に伝染したのか、ざわつきだしたり震えたり、様々だ。・・・しかし。
「静まれ!これは領主の決定した命令である! 今から民衆を誘導する指示を出します! 皆さん、一人でも助けたかったら従ってください!」
「侍女の方々は屋敷の入口から避難路、そして出口までの民衆の誘導をお願いします。」
侍女の方々が黙って頷く。
「執事の方々は、チームを2つにして半数同士で分かれてください! 片方は屋敷の外から民衆を避難誘導するチームA、もう一つは避難路の出口辺りでの安全を確保するチームBです!はい分かれてください!」
執事の軍団も黙って頷いて即座に半数に分かれ始める。
「そしてダビデフ料理長と調理手伝いの方々、ミリーとバドリフさんとリリーちゃん。セリス母様とクリス母様、そしてレイとエミリー、そしてカーネル兄さんとヨシュアはチームBに同行してください! まとまり次第チームBは即行動!」
「カイン、私もそちらに行ったほうが良いのではないのか?」
カーネル兄さん、ヨシュア、それは…すまない。
「カーネル兄さん、もしもの事があれば父上も俺もどうなるかわからない。そんな時に長男であるカーネル兄さんと、人に好かれるヨシュアが向こうに残っていてくれれば、最悪の事態は防げる。」
「そ、うか。わかった。カイン。すまない。」
「すみませんカイン様。私は此方に残ります。」
バドリフさん。アレからミリーと結婚して寿退社したミリーの分も働いてた上に、一人娘のリリーちゃんも産まれたのに。またこうやって助けてくれるんだな。やっぱあんたイケメンだよ。リリーちゃんには良いパパって俺からも腐るほど言い聞かせてやるよ。
「バドリフさん。いいんですね?」
「は、カイン様とご一緒ならば。ミリーとリリーはチームBに任せます。 ダビデフ料理長!任せたぞ!」
「俺がする子守りなんぞお前の娘だけだからな!」
「ダビデフ料理長、ありがとうございます。」
「は、カイン様の命とあらば。」
ダビデフ料理長…。レイが産まれた時の名付け戦争から俺に敬意をもって接し続けてくれる人だ。マージで慣れなかったが、あっちがあまりにも折れないので俺が折れた。
「そしてヨシュア。避難してきた民衆や、屋敷の人たちのこと、しばらく頼むぞ。」
「つっ、しっかたねえなぁ。こういう事態だしな。」
「ありがとな。」
「カイン、必ず生きて帰ってこい。」
「ヨシュア、俺が到着したら既にクタばってるとかはナシだぞ? ほら、小指出せ。」
「はっ、そんだけ軽口が叩けるなら大丈夫か。 わかったよ」
「「指切りげんまん嘘ついたらザン○ット3一気見の刑に処す。指切った。」」
俺はヨシュアと前世から繰り返してきた約束の指切りをして、後を託す。
「・・・頼むぞ。 チームBは即座に準備と移動を開始せよ!」
チームBは行動を開始した。纏まりが良くて非常に助かる。
「チームAの方々!まずは民衆に避難誘導の勧告と、注意事項をこれを使って屋敷の外で訴えかけてください!」
「カイン様、これは。」
「これは知り合いの魔導具技師に頼んで作ってもらった魔導具です!この黒い箱と黒い棒とこの線を繋げば、拡声魔導具になります!」
歌う目的で作ってもらったが、なりふりなんて構ってられない。
「避難誘導の言葉は任せます! 注意事項は、1、他の人を押さない。2、緊急時だからこそ走らずに歩く。3、指示を通しやすくするためになるべく私語を謹んでもらうこと! この3つです!わかった方が一名、屋敷の門辺りで外に向かってこの拡声魔導具で伝えてください!」
「私が行きましょう。」
バドリフさん、確かに通る声だ、行ってもらうならここか。
「ではバドリフさん、お願いします。 魔導具を運んでくださる方! ・・・そことそこの二人で! バドリフさんを手伝ってください!」
「はっ!」
バドリフさんと指示した二人は行動を始める。
「侍女の方々も確実に退路に支障がないよう、そして避難がスムーズになるように徹底してください!」
「はい!!」
退路の確認と意識の徹底を始めたので、侍女の方々はもう良いだろう。
「最後にチームAの方々! あなた方は私と共に外に出て頂きます! バドリフさんが民衆に勧告しているので、多くの方々は守ってくれるでしょう。しかしこの緊急時に全員が守れるとは思わないでください! 走る人、パニックに陥る人、暴れる人、様々にいると思います。 暴れる人は助けなくて結構です! 走る人も屋敷に近い方は助けなくて結構です! パニックに陥ってる人や怪我人は優先的にあなた方で運んでください! キャパの限界を察知したら無理に助けに行かなくて結構です! いざとなればあなた方も自分の命を優先してください!」
「「「「はっ!!!」」」」
「よし!行くぞ!」
俺は産まれてから史上最大級の、未曾有の災害に身を突っ込んだ。




