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前世で言う最終回、来世で言うプロローグ。〜友達を添えて〜


 あ、マジでこれやばいかも。って思考に至る展開は、いつも頭の中でそれを考えてない時に限ってやってくる。


 「なぁ海崎、俺は船酔いだと思ってるんだけど、もしかして、この船、揺れてね?」


 「あ〜義也、ごめん、俺も自分が船酔いしてると思うようにしてたけど、やっぱり揺れてるよな?」


 俺は友達の義也の大学卒業祝いと俺自身の専門学校卒業祝いを兼ねて沖縄で卒業旅行を企画し、取り敢えずのノリで目的の島に向かう途中の九州〜沖縄便に乗ってた。そうなんだよ、まだ沖縄どころかギリ九州なんだよ。


 『乗船のお客様にご連絡申し上げます。つい先刻に、季節外れの爆弾低気圧が予想を遥かに超える速度で接近。緊急の事態につき本船は航路を引き返します、繰り返し申し上げますー』


 うぉー、まじかー。


 「海崎ぃ!早速予定破綻してんじゃん!お前が『台風?来たらやばいけど沖縄独特の建築技術の中だったら案外いけんじゃね?』とか言ってたけどこれじゃ辿り着けないって!!」


 「そうだなぁ、義也がいつも以上の寝坊をかましたから飛行機逃して急ぎで特急取ったもんな〜。お陰で元の予定から丸一日ぐらいズレてたからこりゃ辿り着けんかもなぁ。」


 「それはすまんって。マジお前と行く安心感が強すぎていつも以上に寝る前の腕立て伏せに精が入ってぐっすりした挙げ句に寝過ごしてしまったんよ。」


 「さっさと寝ることって俺この一ヶ月で五回は言ったけどなぁ…。まあしゃーない。大人しく戻ろうぜ。沖縄じゃなくても九州だって大分には温泉あるし博多にはラーメンあるし、なんとかなるだろ。取り敢えず着陸したらホテルは予約取るわ。」


 「ほんとすまん。」


 「いや、元々の俺のノリの計画自体が無茶要素の詰め込みパックだったからこっちはこっちで普通に楽しそうだぞ。」


 こんなことなら『お前の卒論終わったら即出発な!』とか言わなきゃ良かった。とは少しだけ思う。けど、まぁ結局どこだろうとこいつとバカやってりゃ楽しいから良いや。


 『ご連絡申し上げます。本船は間もなく着港致します、乗客の皆様は、下船の準備をよろしくお願い致します。』


 「・・・だってよ〜。そろそろ準備しようぜ。」


 「あぁ、すまん海崎、マジの方の船酔いが酷すぎて動けん。起こしてもらって良い?」


 「嘘だろ義也、それ俺がお願いしようと思ってたんだけど。俺の声のトーンに元気ない時点で俺も船酔いしてるんだよ。」


 「あれ…?これもしかして俺ら終わる?」


 「・・・こればっかりは対策してなかったなぁ。」


 職員さん俺たちです。助けてください。そんなくだらないことを考えていると、今度はアナウンスの音から警報が鳴ったっぽい。聞いたこと無いけどこんなロッ○マンシリーズとかのボス部屋に入った時のWORNING!!みたいな激しい音、絶対警報だろ。


 「俺らもしかして、死ぬ?」


 「ワンチャンありそうよな〜。縁起でもねえけど船酔いで呂律も怪しくなってきら…。」


 「あ、わかる。おれも…。」


 「んじゃもうヤケだよ、今世て残した未練言おうぜ。俺からな。」


 「おう、吐きそうだからなるはやで頼む。」


 「八年間友達の義也の誕生日を一度だけでもまともに祝いたかった。」


 「お、おう、海崎にしてはまとも過ぎて別人かと思った。」


 「俺のサイコパス要素は親父譲りら。そこ以外は俺は良識あるアホだから恨むなら親父(そっち)で頼む。」


 「人をノリでって言って笑顔で殴る親父さんと口から鬼畜な現実しか出ないお前だとお前の方が百万倍マシだから安心しれくれ。」


 「理解早くて助かる。あ〜、無理、これ以上喋ると俺の胃の中のデビルがリバースしちゃう。」


 「んじゃ黙ろうぜ。」


 「んじゃ黙ってる間に義也の未練よろしく。うっぷ」


 やっば、限界近い。


 「俺の未練はいっぱいあるよ?人生で一度は彼女ほしかったしまだ童貞だし!俺も海崎の誕生日まともに祝ってねえし、てかお前と遊ぶ日はどんなことがあっても大雨になったから一回ぐらい晴れてほしかったかな〜。」


 「あ、それすげえわかる。やべ、も無理。」


 気持ち悪すぎて俺は目を閉じた。酔いすぎて頭とか良く回んねぇ。ぐるぐるする。ぐるぐるぐるぐるぐーるぐる。どっかーん。…あ〜、頭の中で色んなぐるぐるの音声が混ざってる〜。酔いがより酷くなる前兆じゃん。あ〜気持ちわり〜。


 ・・・んで、義也の誕生日、6月の何日だっけ?やべえなぁ、これじゃ来年も祝えねえじゃん。


 目を開けると真っ白な空間に居た。真隣に義也があぐらをかいて座っている。


 「なあ義也、これ夢?」


 「え?俺も夢だと思ってたんだけど、お前本人がそれ聞いてくるってことはワンチャン現実なの?」


 「いや〜まさか、きっとあれだよ、超常的なアレで夢の中で邂逅しちまったんだよ。あ、このことはあいつらに言うなよ、また薄い本書かれるから。」


 「それは激しく同意なんだけど、海崎の言葉がより夢じゃないような感覚を刻みつけてくるんだけど。」


 「知らねえよ!てか夢だろこんなん!現実にこんな空間あったら俺一生ゴロゴロしてぐーたらしてるわ!」


 「夢じゃないわい!!馬鹿かお主らは!!」


 「おじいさん…どなたですか?」


 「義也、こんな人が話してる間を割って入って唐突に怒鳴り散らしてくる老人のことを老害って言うんだ。老害に敬語は要らない。つまり…・・・おいジジイ、誰だてめぇ。」


 「例えどんなおじいさんであっても敬語がないと色々まずいと思うけどぉ!?」


 「うぉっほん!・・・まあよい。儂は神じゃ。お主らが二人もセットで予定外の死をぶち込みやがったせいで仕方無しに転生させにゃならん。お主らは一生の友らしいの、良かったな、次の人生でも多分一生その縁は切れんわ。」


 「はぇ〜、死因はなんだったん?。」


 「えぇっ!?俺ら死んだの!?嘘だろ!?えええ!?!?」



 「お主ら…八年も仲良しの友達とは思えんほどリアクションが二極じゃの。あれじゃ、お主ら船酔いしたまま寝落ちたせいで下船の時間になっても現れないのをスタッフが確認しに行ったら意識不明の重体で、救急車呼びに行っとる僅かな間に突風による船の転覆でお主ら二人はドボンでおじゃんじゃ。」


 「はぇ〜・・・ってまじかよ!!まじで死んだのかよ!死ななそうなフラグの会話してたのにぃ!!」


 「ほーん、んであれか、そのピーポーくんを呼びに行ってくれたスタッフさんは無事なの?」


 「・・・あぁ、彼女は普通に無事じゃ、お主ら二人の相手、物凄く体力使うのは気の所為かのう…。」


 「神様なんだから体力なんて概念無いだろ。」


 「体力ッ!?体力を使うためには筋肉が必要ですよ神様ァ!」


 「・・・気の所為ではないの。うむ。ところでお主ら、来世でやりたいことはあるかの?なるべく便宜を図ってやるから言うだけ言うが良い。そしたらさっさと送ってやるから。」


 「おいおい、こんなので疲れてちゃ俺の親父の魂の時持たないぞ。どうすんだよ。」


 「来世!?ビバッ!筋肉ッ!!出来れば筋肉がゴリゴリに付きやすい身体にしてほしいッ!!」


 「お前それずっと言ってるよな。身長あるって割と足元見えないから不便だぞ。」


 「何言ってんだよ海崎!それが漢のロマンってやつだろう!!」


 「言ってることはわからんでもないから、まあ良いんじゃね。」


 「くぉらー!!お主らで勝手に話を進めるなぁ!!それで、そっちの海崎和也、お主は何を求む?はよ言わんか!」


 「ん?」


 うーん、わからん。ぶっちゃけ家庭内で親父に冗談のていで空手の突きを食らわせられたり犯人が明らかに姉だけど問い詰められないから精神がすり減るだけの金銭の窃盗とかそんなんがなきゃ割と何でもいいが…。強いて言うなら…。


 「アウトドア、キャンプとかバーベキューとか野宿とか、そんなやつ。」


 「・・・お主、口の悪さと心の清さが反比例してない?」


 「気の所為気の所為、ほら言ったぞ。さっさと送ってやるんだろ?はよ送ってくれ。もうそろ地に足付く所で横になりたい。」


 「・・・まあ来世は以前ほど治外法権な家庭ではないことは確かじゃから安心せえ。それじゃ来世に送るぞ。楽しんでええからはよいってこい。」


 割と悪くはない神様っぽいなぁ。


 「んじゃ義也、どうせどっかで会うだろうからまた来世でな。」


 「俺お前っぽいのに会ったら『あなたにとって筋肉とは?』って聞くからな!」


 「あぁ、お前が好きなテンプレ回答で待っててやるから早く聞きに来いよ。せめて俺が三十路になるまでには来い。」


 「道に迷ったらすまん!」


 「そんときゃ迎えに行くから問題ない。」


 「さっさと行かんか…。」


 そろそろ行くかな、あ、そうだ。


 「神様。さっき老害とか言ってすまん!勘違いだったわ〜。」


 俺の意識はそこで途切れた。


 「あいつ、やっぱり良いやつよな?」


 神様は遠い目でそう呟いたらしい。

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