復讐
『和倉高校2年生の姫川美琴さんが学校の屋上から飛び降りて死亡しました。警察の調べによるといじめがあった可能性があるとのことで、現在関係者への事情聴取が行われています。』
「美琴が・・・自殺?」
驚いた。頭の中には驚きと疑問符が飛び交っていた。だけど、そんな私の頭の隅では、全て分かっていた。
私はいじめられていた。入学してすぐにいじめグループのリーダー福永南美に目をつけられてしまった。そのときに手を差しのべて私を助けてくれたのが美琴なのだ。その後いじめの標的は私から美琴へと変わった。美琴は私を庇っていじめられた。
きっと耐えられなくなったのだ。つまり美琴は私の変わりに死んでしまった。私が死ぬならまだ良い。しかし美琴が、私の唯一の拠り所が死んでしまうのは私が死ぬよりも辛い。
私を強烈な頭痛が襲った。頭がクラクラして立っていられなくなる。その後、私は床に倒れ込んでいた。
どのくらい眠っていただろうか。窓の外が暗いことを確認して私はスマホを手に取った。時刻は午前1時。時刻を確認してそのまま電源を切ろうと思ったそのとき、画面が変わって、電話の着信音がなった。
「もしもし?ずいぶんと、久しぶりだけど・・・」
電話の相手は私が恨んでる一人、福永南美だった。
「何の用ですか?」
「あら、しばらく見ないうちに偉い口聞くようになったじゃない。まぁ良いわ、姫川が死んだのは知ってるでしょ?んで私のところに警察とか来てて、めんどいことになってるのよ。私今お金なくて、ストレス発散にパーっと使いたいわけ。だから持ってきてくれないかしら。」
こいつは、ちっとも反省をしていない。美琴が死んだからいじめの標的を私に戻すつもりみたいだ。
「金額と場所は以前と同じで。よろしくね。あぁそれから、あんたは自殺なんて面倒なことしないわよね?」
復讐してやる。この下衆やろうは私の沸点を越えた。今回の事は神様が私に与えてくれた絶好のチャンスだ。
「えぇ、私は自殺なんてしませんよ。自殺はね・・・」
「あぁもう遅いわね、あいつ。前は遅刻なんてなかったのに。ホント良いご身分になったものだわ。」
あいつは校舎裏で私を待っていた。そっと私は近づいて家から持ってきた包丁を福永の背中に突きつけた。
「動かないでください。」
「何の冗談よ。面白くないわ、早く金を出して頂戴。」
「動かないでください。」
私は再び先ほどの台詞を繰り返した。
「私は今、手に包丁を持っています。分かりますか?お金は持ってきてません。ただし今の貴女はそれに対してなにか言える立場じゃないんです。美琴を殺したのは貴女です。貴女達が美琴をいじめたから美琴は自殺をしたんですよ?私は自殺はしません。私は復讐をします。」
「あれは、冗談というか、その・・・。」
「それで許されるはずないだろう?」
少し、刃先を彼女の肉体に差し込んだ。
「何が起こったの?」
痛みからか、尋ねる声が震えていた。
「あなたの回答がとっても卑劣だったもので。ついうっかり手を滑らせてしまいました。」
「やめ・・・、やめてっ!」
「ずいぶんと偉そうな口を利くんですね、あなたは。」
「やめて・・・ください。」
「やめて上げても良いですけど、その場合包丁を引き抜くことになります。そうなればもっと強烈な痛みがあなたを襲うことになります。」
「なんで・・・、そんなことするのよ。私が・・・何をしたって言うのよ。こんなことしなくても・・・。」
「テメェは美琴を殺しただろう。」
「違う。自殺はあの子が勝手に・・・」
「ふざけてるのか!それはあんたらが自殺に追い込んだよ!・・・って、やってしまいましたね。包丁の刃が全て刺さってしまいましたね。まぁ、あなたが悪いのですが。さてと、始末をしてから帰りますか。」
そうして私はその校舎裏に手頃なサイズの穴を掘った。そこに死体を遺棄して土を被せる。その死体は激痛からか恐怖からか、表情が歪んでしまっていた。