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スカート

作者: 融雪
掲載日:2023/03/27

二人が別れ別れになったのを確認して、私は和真に声をかけた。


「……なーに、にやけてんのよ」


和真の頭をぶっ叩く。ワックスで固められた髪形は、私のチョップなんかものともしない。中学の頃はつけてなかったくせに。


生意気。


「いって!なんだよ、お前かよ」


私を一見した後に、すぐに和真は彼女の方向に視線を向けた。気に食わない。彼の視線の先には、校則を思いっきり無視して短くしたスカートを履く女子の後ろ姿があった。なんとなく対抗して、胸を張ってみるけど、和真は見もしなかった。


「……足なげえよな、武田さん。あ、違うわ。美雪」


「……そう見えるだけでしょ」


私の嫌味なんてどうでもいいのか、和真は相変わらず彼女の足を見ている。


むかつく。


その顔を見て、言いたくないことが沸々と浮き上がってきて、言葉になってしまう。


 「……なんで、武田さんあんたなんかの告白受けたんだろうね。罰ゲームじゃないの」


 「失礼だな、俺のアプローチが効いたんだろ、そんなん」


和真は、ようやく見つめるのを辞めて、歩き出した。私も慌てて彼に倣う。



「……つうかお前、いつから見てたんだよ」


「あんたが、武田さんのほっぺ触って、軽く引かれてたところからかな。」


「一番、見られたくないところじゃん」


「私だって見たくなかったわ。あんな可哀想な場面。ただでさえ、学校でもいちゃいちゃしてんだから、もうごちそうさまって感じなんだけど。いつ別れんの?」


「馬鹿。やめろ。」


「大体武田さん、化粧とかしてんじゃん。校則違反だよあれ。だめでしょ。」


「別にいいだろ。」


和真が少し歩くスピードを速くした。エナメルバッグに付いたバスケットボールのストラップが激しく揺れる。


高校に入学してから、和真は身長が伸びた。おのずと、歩幅も広くなる。そうなると、彼の横を並んで歩くには、私の最大全速で歩かなければならない。



「じゃあ、俺こっちだから」


軽く右手を挙げて、和真は迷いなく十字路を右に曲がっていった。私は、その後ろ姿を見つめながら、振り向けと心の中で念じる。スカートを少し上に上げる。


振り向け、振り向け、振り向け。


私の念は届かなかったらしい。


逆に、彼の姿が見えなくなるまで、私は彼の後ろ姿を見つめていた。



……罰ゲームなんかじゃないだろう。彼の努力を人一倍近くで見てきたのに、なんであんなこと言ってしまったのだろう。


高校に入ってから付け始めたワックス。


身長が伸びるからと運動神経なんて皆無なのに、バスケ部にまで入って。


彼は確実に格好良くなった。


周りは変わり始めている。


女子だって、男子だって。私はどうだろうか。いつか彼の歩くスピードにすら付いていけなくなるかもしれない。


そうなったとき、私はどうするんだろうか。


どうなるんだろうか。



いつもよりも露出された太ももに冷たい風が吹きつける。私は、こんな寒い格好ずっと続けられない。何よりも恥ずかしい。


武田さんは凄い。やっぱり私には無理だ。


スカートを元の位置に戻す。


自分の脚の長さが前よりも、スカートを上げる前よりも、短くなってしまったように感じた。

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