ブロッコリーのポテンシャル
「豚薄切り肉 ブロッコリー」
私はキッチンの前に立ちながら、スマホのブラウザにこう入力した。
(彼を蔑ろにしてしまっただろうか)
先日、冷蔵庫に豚薄切り肉、キャベツ、ブロッコリーしか無い状態で、禄に考えもせずブロッコリーを戦力外扱いしてしまったことを反省していた。彼にだって何かできたかもしれない。
一度スマホを置いて、冷蔵庫の野菜室を引き出し、確認する。
ブロッコリーの他、トマト、玉ねぎ、ピーマン、アスパラ…と、たくさんの野菜たちが顔を覗かせている。
今回はサブ食材もたっぷり準備しておいた。にんにくや生姜もある。食材に少々の違いは出るかもしれないが、大抵のレシピには対応できるだろう。
引き出しを閉め、再びスマホを手に取り、どんと来い、と検索をかけた。
すると結果は想像以上で、豚薄切り肉とブロッコリーのみを使う料理だけでもざっと10件以上は出てきた。ブロッコリーのポテンシャルに驚くと共に、よく調べもせず彼に責任を押し付け、簡単に切り捨ててしまった自分を恥じた。
(どれにしようか)
気を取り直して検索結果のレシピを見比べる。
どれもこれも美味しそうではないか。彼の鮮やかな緑色が、豚肉の合間になんと映えていることか。
(……オイスターソースは苦手だからやめておこう)
(塩味……地味ながら無難そうだ)
(おや、これは……)
夕飯の時間になると、いつも通り家族が降りてきた。
「おっ、初めて見る料理だね。……うん、美味しい!」
「やっぱりね、こういうのが好きかと思って」
二人で豚肉とブロッコリーのオーロラソース炒めを頬張りながら私は、後でこのレシピをブックマークに加えなければ、と思ったのだった。