表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第2部】運命の出会い
92/147

第十二章① こんにちは故郷

 ドルドネからポートまでは、意外なほど近かった。なんと、明後日の午後にはポートに到着するらしい。

 こんな近い場所で、いったい俺は何をしていたのか。もちろん島にいた時は脱出できるなんて思っていなかったけど、あまりに近くて笑っちゃったね。もちろんポート国籍の高速船だから、飛びぬけて速く行けるっていうのもあるけど。


 ホーシー一団の現状を見て、迎えに来た船員たちは絶句した。船長まで動員して病人を船に運び、さっさとドルドネから出航してしまった。俺らよりも、応援の船員たちがパニックを起こす始末。そのせいで、俺が増えたこともサザムが減ったことも、出航後しばらく経ってから気づいたほどだった。


 そうそう。サザムの奴、いつの間にか消えてたんだ。船が来る少し前にはちゃんと眠っていたのに。原住民が交代で見張りをしていたが、見張りをボコボコにして消えていた。

 見張り番がいうには、ふと意識を失って、気づいたら倒れていたらしい。幸い見張りをしていた奴は軽症だったので、原住民に治療を任せられた。

 だが、いったいどうやってサザムが逃げ出したのか、どこに消えたのか、わからずじまいだった。


 かなり強力な眠り薬を作ったのに、サザムには効かなかったのだろうか。ルルの推察では「呪術を使う者だから、一般人以上に魔力が効きにくい」らしい。だから俺の想定よりも早く解けたのではという結論に至った。


 よくわからんが、サザムは本当に厄介な奴だ。前の戦いで土を蛇のように扱っていたが、思えば通常より発動が早かった。いつから詠唱していたのかと思ったが、奴を捕縛した時に俺は見た。腕にびっしりと描かれた術式の刺青を。

 腕から肩、背中にかけての巨大刺青は、数日で彫れる量じゃない。緻密な術式なので、爪ほどの大きさでもかなり時間がかかっただろう。奴隷商人といた時にはなかったと思う。もしあったなら、もっと楽に俺をぶちのめしていたからだ。

 前回俺と別れた後に入れたというなら、よほど無理したはずだ。尋常じゃない痛みに耐えねばならない。改めて、サザムの執念が窺われた。


 そしてもっと恐ろしいのが、その術式が、術者の神経回路を弄るというもの。魔力に変換された想念が通る経路を大幅に繋ぎ直し、呪術の発動を早めているのだ。

 この術式があれば、大幅に術の発動スピードを速められる。しかし、そんなことをすれば、膨大な魔力が体内を縦横無尽に走り回り、不必要に身体を痛めつける。簡単な呪術を使うだけで、相当な痛みが生じるはずだ。そこまでするのかと俺は愕然とした。


 この状態のサザムを、見過ごすわけにはいかない。奴を野放しにしても、決していいことにはならないだろう。

 だから俺は、サザムの背中の術式に、一本線を書き足してやった。つまり、緻密な術式を壊してやったんだ! あんな量の術式なら、どこが欠損してるか見つけるだけでも一苦労。しかも身体に彫り込んだから、見つけたとしても修復不可さ。

 鬼みたいな所業だけど、これであの術式は役立たずだ。ざまあみろ!


    ×    ×    ×


 サザムのいない航海は、順調そのものだった。これまでのことを思い返しながら船に揺られ、早一日。昼食後にデッキから海を見ていると、地平線上に薄っすらと陸地が見えてきた。

 どんどん近づき、肉眼でも見える距離まで迫っていた。途中、船員に聞いたら、このまま海岸線沿いに北上し、ポートを目指すらしい。


 陸地が見えるほどに、俺は動悸を覚えた。胸がざわめくというか、不安に襲われるというか。なんだか落ち着かない。でもその原因はわからずにいた。

 そして陸地の全容がわかった時、俺は直感した。ここが初代の出身地だと。


 俺はすぐさま船員を捕まえた。

「あの、あそこの港には寄らないのか?」

「寄りませんよ。たった三日の日程ですし」

 船員は面倒くさそうに答えた。


「昼寝でもしたらどうです。すぐポートに着きますよ」

 だがここまで来て、引き下がるわけにはいかない。


 冷静に考えれば、ポートに行ってから、再度故郷を訪れればいいとわかる。でもこの時の俺は、次なんて考えられなかった。まるで誘蛾灯に誘われる羽虫のごとく、どうしても今行かねばならないという使命感に燃えていたのだ。


 俺は部屋へ戻ると、荷造りをした。

「何をする気だ?」

 一連のやり取りを聞いていたルルが、不安そうに尋ねた。

「あいつの真似だよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ