第二章⑤ 小さい子って何考えてるのかマジでわからん
まずは荷物の点検。ありがたいことに、老夫は俺の荷物を全部持ってきてくれた。まあ、剣とギターしかないんだけど。
思えば、ろくでもない装備だ。だが、それも仕方ない。ほぼ何も持たずに街を飛び出したからな。次の町に着いたら、せめて鞄くらいは買おうと思う。
点検が終わった時には、ちょうどいい頃合いになってきた。
外に出ると、ユウヒダケのカサが少しだけ広がっている。まだら模様はまだよく見えないが、今日は仕方ない。ツクシと見分けがつけばよいので、小屋周辺のユウヒダケを使う分だけ採取した。
そして調合開始。お椀の中で、各種素材をすりつぶしていく。
本来は薬を乾燥させて粉末にするのだが、時間もないし、今回は団子状の錠剤にしよう。効く時間が変わってくるが、効果は同じなら問題ないだろう。
また、本来なら完治させるためには毎日服用しなければならない。だが俺も長くは留まれないので、今回は痛みが強い時に飲む、頓服薬にした。ま、俺が作ったんだし、かなりひどい神経痛も和らぐはずだ。もしこの薬がもっと欲しいと思ったら、町で買えばいい。魔法薬を扱う店なら、どこでも買えるような一般的な薬だ。この国での魔法薬の位置づけは知らないけど、少なくとも王都へ行けば買える。この薬で完治はできないが、魔法薬のお試しになればいいと思っていた。
ペーストを団子状に丸めたら、薬は完成。後はシャナに渡すだけである。
早く渡してあげようと、俺は外に出た。
外は夕方の気配に包まれている。西の空はすっかりオレンジ色。まもなく夜がやってくるだろう。
今なら辛うじて出発できる。これ以上遅くなれば、もう一泊することになるだろう。これ以上の迷惑をかけないために、早くシャナに会わなければ。
「シャナはどこですか?」
俺は老夫に尋ねた。だが老夫もどこか、ソワソワしている。
「それがいないんだ」
「どういうことですか?」
「いつもなら、この時間は夕食の手伝いをしてくれる。だが姿が見えないんだ。あんたこそ、シャナがどこにいるか知らないか?」
そんなこと言われても、俺が知るわけがない。今日会ったばかりで、老夫と孫娘がどう暮らしているかなんて、まったく知らないんだから。
「とにかく探しましょう」
「わしもみんなに声をかけてくる」
後から知ったが、森の中には小さな村があるらしい。点在と呼べるほどお互いの家同士は遠いのだが、何かあればお互いに協力し合って暮らしているとのこと。
老夫が仲間に声をかけに行く間、俺も独自に森の中を探した。
やはりこういう時、頼りになるのはルルである。元々魔獣なので、野生の勘というのが働くのだろう。二人っきりになると、ルルは俺に声をかけた。
「こちらの方に嫌な気配を感じる。何か武器を持って行った方がいいだろう」
俺は一旦小屋に戻り、剣を携えると、再び森の中に飛び込んだ。