第二章① ※これは夢です。
その日、不思議な夢を見た。
なんだかよくわからない場所に俺が立っている。なんというか、クリーム色の空間にポツンといるような。でも不快感とかはなくて、俺は心からリラックスしていた。
気が付くと、目の前に知らない女が立っていた。若い女で、長い髪をベールで隠している。見たこともない服装だ。
うまく説明できないが、バッチリ記憶に残っている。ちっとも似ていないが、第一印象は美女姿のケンジャに似ている、だった。
美人なのは覚えているが、顔はちっとも思い出せない。ただ宇宙のように黒くて深い瞳がじっと俺を見つめていた。それだけは脳裏に焼き付いて消えない。
「大役、ご苦労様でした」
「はあ、どうも」
なんて態度が悪いんだ!
夢の最初から、俺は自分が夢の中にいると気づいていた。だがコントロールできず、ただ見ているしかできない。自分の不遜な態度を改めることも会話をすることも、何もできない状態だった。
「御礼に一つ教えて差し上げましょう」
「はあ」
「あなたは今日、自分の運命に出会います」
「はあ」
「運命には逆らえません。受け入れることです」
「はあ」
この人は、何かを知っている。何が俺を待っているのだろう。俺は尋ねたくてたまらなかった。
だから必死で夢をねじ伏せようとした。夢の中の俺を乗っ取れそうだと思った瞬間、世界が崩れ始めた。
「おいっ!」
俺の意志が声を出せるようになった時、世界の最後──女の黒い瞳が消えた。
× × ×