第十四章① おわりの町で人生終えました
気づけば、俺の前にサザムがいた。あの時は焦ったね。ジュニアを殺して坑道に入ってきたと思ったんだから。
でも違った。
後からわかったんだが、この時の俺は「古き神に挑む者」になっていた。説明が難しいんだけど、神様の一歩手前の状態っていうかな。認められる前の神様って感じだ。この説明でわかってもらえるかわからないけど。
そして今いるここは、現実世界と関係ない。どこなのかは今だにわからないが、多分サザムのテリトリーなんだと思う。だからジュニアには一切影響が出ない。害はなくて助かった。
サザムは何かを叫び、俺に悪意をぶつけてきた。ああ、魔王と戦った時と同じか。瞬時に悟った俺は、負けじと自分の魔力で迎撃した。
さすがは神の力! サザムの悪意はこれまでに感じたことがないほど、重くて暗かった。あんなに苦戦した魔王の力がひ弱に感じられるほどだ。
でも俺だって負けてない。
精霊たちのおかげなのか、自分の奥底から無限に魔力が湧きだしてくる。世界中が俺に力を貸してくれてるってわかった。
そして奴と魔力が触れ合った時に思ったね。「これなら勝てる」って。
× × ×
× × ×
永い時間、俺たちはお互いの魔力をぶつけ合っていたと思う。
そしてある時、突如として終わった。
砂の城が崩れるように、サザムがホロホロと崩れ出したんだ。
サザムが最後の一片になった時、初めて言葉を放った。耳を澄まさないと聞こえないくらいに、弱々しい声だった。
【なあ、本当にこれでよかったのか?】
何について言ってるのか、よくわからない。でもサザムはこれ以上会話できないようだったので、俺は俺の想いを伝えた。
「いいんだよ。俺たちの時代は終わったんだ」
サザムは憎々し気に、そして観念したように笑った。
【そうだな】
最後の一片は消えた。
そこからは、一気に世界が静寂に包まれた。急に俺一人になり、俺は不安に押しつぶされそうになった。空間全部が暗転し、俺にのしかかってくる。でも俺には耐えるしかできなくて──
× × ×
それからどれくらい経っただろう。遠くに点が見えた。白い点、いや、灯りだ。誰かが俺のために灯りをともしてくれる。そして俺を祀ってくれてるんだ。
ようやく俺は正気を取り戻した。急に現実に戻ったというか、平穏を取り戻したというか。いつもの俺に戻れたんだよ。
そして俺が今置かれている状況を知った。バーハタの守り神として、ちゃんと崇められていたんだ。
あの灯りを見つけたことで闇が切り開かれ、俺は現世に戻ってきた。
人間の時間にして、あれから千年以上が経っていた。当然だけど、子孫たちはいない。ルルも死んだし、俺の故郷は分割されて、別の国に吸収されたと聞いた。
俺が戻ってきた時には、ケンジャすらいない世界になっていたんだ。
それからの俺は、見ての通りさ。生前にケンジャの振る舞いを見てたおかげで、楽しい守り神ライフを満喫してるよ。町を出歩く楽しみがあるってわかったし、新しい世界で友達を作ろうと思った。
でもさ、今の人って魔力がない奴ばっかりなんだよな。だから俺のことが見えるって奴には、ほとんど会えなくて。だからこうやって会いに来てくれて、本当に嬉しかったぜ……って、あれ? なんかインクが出てないんだけど。