第十二章② 決意。
自分の声なのに、妙に明るく聞こえた。
「ジュニアにしかできないなんて、スゴイじゃないか。遠慮なく俺を使え!」
「でも、そんなことしたら父さんが……」
「俺はいいんだよ。むしろお前の力になれるなんて嬉しいぞ!」
最大限に口角をあげ、ジュニアに笑ってみせた。目元が見えないから伝わるかわからないが、俺は本心で喜んでいたんだ。
本音をいえば、少しは嫌な気持ちもある。なんで俺がこんな目にって思えば、どす黒い感情が心の奥で渦巻く。
でも俺は、それ以上に嬉しかったんだ。嬉しかったんだよ。俺にも役目があることが。そして、その役目は俺にしかできないってことが。王都だけじゃなく、世界中から必要とされている気分だ!
夢に父さんが出てきたのは、きっと警告だったんだろう。父さんは俺が、自分を犠牲にして無理やり生贄になると思ったんだ。
そうやって心配してくれる気持ちは本当に嬉しい。泣けてくるよ。
でも父さんは誤解した。俺は自分の意志で、犠牲になりたいと思ったんだ。
ヒーローになるのは気分がいいけど、周りに言われたからなるわけじゃないんだよ。なんていうか、俺が生まれた意味、今ここにいる意味だと思ったんだ。
だから父さんには悪いことしちまったと思う。俺の死後、天国で会えるのを楽しみにしてただろうからさ。
でも父さんなら、きっと俺のことわかってくれる。魔王に人生振り回されてきたんだから、先代たちもみんなわかってくれるよ。きっと魔王と戦った時みたいに、俺のこと応援してくれるはずだ。修行を通して精神を通わせたからこそ、俺にはわかるんだ。
そして、俺はジュニアの気持ちもわかる。
きっとこれからの人生で、ジュニアは苦しみ続けるだろう。父親を犠牲にしたってね。それに長男として、家族への責任を感じるだろう。若くして一家を守ることになるからな。
本当ならそんな負い目を感じさせたくないけど、息子が犠牲になるよりは何倍もマシだ。
ジュニアも、自分の運命と戦っている。だから俺も戦うんだ。先祖代々続いた魔王との因縁、いや隣国との因縁を完全に終わらせるために。
それにしても、すべてが上手く整いすぎている。ジュニアのような稀有な才能を持った子が生まれたのも、先代たちが三百年にわたって徳を積んでくれたおかげだろう。だから俺の息子として生まれてきてくれた。
そう。すべてが繋がったんだ。
後は流れを受け入れるだけ。どうせ流れに沿って動くなら、前向きな気持ちで取り組みたい。
俺はこれまでのことをすべてジュニアに伝えた。
今思ったこと。先代たちとのこと。もう知ってることもあっただろうし、今のジュニアに理解できないこともあっただろう。でも全部話した。知るべきだと思ったから。
ジュニアは一生懸命に聞いていた。理解できたかわからない。でも悲しみ一色だったジュニアのモヤが怒りの色など、様々な感情に揺れていた。しかし話すほどにだんだんと落ち着き、ジュニアらしい穏やかなモヤになっていた。
今のジュニアなら、サザムの言動に揺るがないだろう。負の感情に支配されることもないはずだ。
ジュニアはまだ泣いていたが、俺の覚悟も自身の役目も受け入れてくれた。そして儀式をすると約束した。