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魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第3部】おわりの町ですべてが終わる
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第十二章② 決意。

 自分の声なのに、妙に明るく聞こえた。

「ジュニアにしかできないなんて、スゴイじゃないか。遠慮なく俺を使え!」


「でも、そんなことしたら父さんが……」

「俺はいいんだよ。むしろお前の力になれるなんて嬉しいぞ!」


 最大限に口角をあげ、ジュニアに笑ってみせた。目元が見えないから伝わるかわからないが、俺は本心で喜んでいたんだ。



 本音をいえば、少しは嫌な気持ちもある。なんで俺がこんな目にって思えば、どす黒い感情が心の奥で渦巻く。

 でも俺は、それ以上に嬉しかったんだ。嬉しかったんだよ。俺にも役目があることが。そして、その役目は俺にしかできないってことが。王都だけじゃなく、世界中から必要とされている気分だ!



 夢に父さんが出てきたのは、きっと警告だったんだろう。父さんは俺が、自分を犠牲にして無理やり生贄になると思ったんだ。

 そうやって心配してくれる気持ちは本当に嬉しい。泣けてくるよ。


 でも父さんは誤解した。俺は自分の意志で、犠牲になりたいと思ったんだ。

 ヒーローになるのは気分がいいけど、周りに言われたからなるわけじゃないんだよ。なんていうか、俺が生まれた意味、今ここにいる意味だと思ったんだ。



 だから父さんには悪いことしちまったと思う。俺の死後、天国で会えるのを楽しみにしてただろうからさ。

 でも父さんなら、きっと俺のことわかってくれる。魔王に人生振り回されてきたんだから、先代たちもみんなわかってくれるよ。きっと魔王と戦った時みたいに、俺のこと応援してくれるはずだ。修行を通して精神を通わせたからこそ、俺にはわかるんだ。



 そして、俺はジュニアの気持ちもわかる。


 きっとこれからの人生で、ジュニアは苦しみ続けるだろう。父親を犠牲にしたってね。それに長男として、家族への責任を感じるだろう。若くして一家を守ることになるからな。

 本当ならそんな負い目を感じさせたくないけど、息子が犠牲になるよりは何倍もマシだ。


 ジュニアも、自分の運命と戦っている。だから俺も戦うんだ。先祖代々続いた魔王との因縁、いや隣国との因縁を完全に終わらせるために。



 それにしても、すべてが上手く整いすぎている。ジュニアのような稀有な才能を持った子が生まれたのも、先代たちが三百年にわたって徳を積んでくれたおかげだろう。だから俺の息子として生まれてきてくれた。


 そう。すべてが繋がったんだ。

 後は流れを受け入れるだけ。どうせ流れに沿って動くなら、前向きな気持ちで取り組みたい。



 俺はこれまでのことをすべてジュニアに伝えた。

 今思ったこと。先代たちとのこと。もう知ってることもあっただろうし、今のジュニアに理解できないこともあっただろう。でも全部話した。知るべきだと思ったから。


 ジュニアは一生懸命に聞いていた。理解できたかわからない。でも悲しみ一色だったジュニアのモヤが怒りの色など、様々な感情に揺れていた。しかし話すほどにだんだんと落ち着き、ジュニアらしい穏やかなモヤになっていた。

 今のジュニアなら、サザムの言動に揺るがないだろう。負の感情に支配されることもないはずだ。



 ジュニアはまだ泣いていたが、俺の覚悟も自身の役目も受け入れてくれた。そして儀式をすると約束した。

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