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魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第3部】おわりの町ですべてが終わる
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第十一章② 知られざるジュニアの真実

 俺が起きると、ジュニアが荷物を整理していた。


「ジュニア?」

「父さん、おはよう」

「おはよう。何をしているんだ?」

「帰るんだよ」

「どこへ?」

「もちろん僕たちの家にさ」


 ジュニアが片付ける手を止めた。

「こんな国、もう出よう」


 ジュニアなりに決意したのだろう。魔力を通して真剣さが伝わってきた。

「なあ、昨日のことを教えてくれよ。じゃないと、またこの国がひどい目に……」

「関係ない!」


 ジュニアが声を荒らげた。俺が記憶する限り、初めてのことだった。


「どんなにこの国が大変だからって、父さんがひどい目に遭うことはないよ!」


 ジュニアは俺に抱きついた。

「もう嫌だよ。僕もう耐えられない」


 俺はジュニアをなだめるように、頭を撫でてやった。ジュニアは涙を噛み殺しているのだろう。泣くのを我慢するような、押し殺せない呻きが口から洩れていた。


「本当は僕、知ってたんだ」

 少し落ち着いてから、ジュニアが口を開いた。


「何を?」

「この国で起こること」

「……」俺は何と返したらいいかわからない。


「父さん前に言ったよね。『これからどうするんだ』って。僕さ、自分がどうするかわかるんだよ。自分に関すること限定だけど、ちょっとだけ未来がわかるんだ。精霊たちに教えてくれるのか夢で見るのかわからないんだけど、いつの間にか『ああ、こうなるんだな』ってわかるんだよ。嘘だと思う?」


「いいや」

 精霊と話せる以外に特殊能力があったとしても不思議ではない。驚きはしたが、疑う気持ちは一切起きなかった。


「僕は古き神を殺して、この国に新しい守り神を招く役目があるんだよ」


 へえ、そうだったのか。そうであれば、ジュニアがサザムを殺すことになる。俺には止める手立てが思いつかなかったが、ジュニアならサザムを止められるだろう。最悪の事態は免れたわけだ。


「すごいじゃないか。だったらこの国から逃げる必要ないだろう。さっさとアイツを封印すればいいんだから」


 俺は褒めたつもりだったのに、ジュニアの悲しみは深まった。


「父さんはそう言うけどさぁ。それができないから困ってるんじゃないかぁ!」

 ジュニアは子どものように泣いていた。


 何か失言があったか?

 それとも、そんなに大変なことなのか?

 まあ、神を殺すだなんて、誰でも躊躇するよな。特に精霊たちと交流していたジュニアから見れば、なおさらだろう。


「ごめんな。軽く考えて。頑張ろう、な。父さんにできることがあれば、何でもするから」

 最後の一言で、ジュニアの泣き声は一層大きくなる。


 ああ、もう本当にわからない。

 すっかり持て余し、俺はジュニアが落ち着くのを待った。


 ある程度喋れるようになってから、ジュニアは途切れ途切れ教えてくれた。

「どうやって古き神を殺すか。父さんは知ってる? 新しい神と力比べして、相手が守護する領域を奪うんだ。そして相手へ魔力を送り、存在自体を消滅させる。本当は力比べに負けた時点で追い出せるんだけど、今回は特殊だからさ。消してしまわないと、また戻る恐れがあるからね」

「じゃあ新しい神ってのを連れて来ればいいんだろ。父さんも一緒に探してやるよ」

「……」


 ジュニアはチーンと鼻をかんでから続けた。

「新しい神ってのは、父さんだよ」


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