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魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第3部】おわりの町ですべてが終わる
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第八章① あぁ、ハッピーエンドが遠い…

 ジュニアは目をパチクリさせ、数秒固まった。

「どういうこと?」


 俺は周囲を見渡した。だが左目で見ても右目で見ても、不審なものは何一つ見当たらない。ただ穏やかな水面が広がっているだけだった。

「くそっ!」


「父さん、説明してよ!」

 俺は膝裏を軽くパンチされた。計らずもジュニアを無視してしまったからだ。


「お前、怨念とか感じるか?」

「感じるわけないじゃん。今全部消したんだから」

「いいか。人に感情がある限り、負の感情はイチになっても、ゼロにはならない。ということは、イチになった感情がどこかにあるはずだ。そこに怨念が集まってる恐れがある」


「そんなことできるの?」

「できる。町全体に術式を施せばな。いや、きちんと術式が組めれば、国全体の怨念を集めることだって不可能じゃない。ありえないほどに途方もない労力が必要だけどな。組織で動いていれば、できないこともないだろう」


「でも、どこに集めるのさ?」

「精霊の影響を受けない存在なんて、一つしかない。守り神だよ」

「守り神は知ってるけど、そんなことするかな?」


 ジュニアの言う通り。守り神は本来、自分が治めるエリアに住む住人の幸せを願い、加護する存在である。住人が不幸になるようなことには決して加担しない。魔王と対局の存在でもあるため、怨念などご法度。自分の力も下がるため、普通は呪術や怨念を嫌うものである。



 怒りのあまり、俺は自分の太腿を殴った。

「くそっ、早く気づいていれば……。むしろ国全体に影響を及ぼしてるんだ。先に守り神を手中に収めたに違いない」

「待ってよ。僕、ついていけない」

「俺だってわかんねぇよ。でも今起こっていることを考えると、これしかない。ああ、アイツは昔っから本当に意味がわからん!」


 こうして雑談している間にも、怨念どころか負の感情すら一切感じられない。この時は無風で、湖面はシンと静まり返っている。それがなんだか不気味に思えて、俺の中の不安はますます掻き立てられた。


「とにかく、まずは守り神の安否だ。封じられているか弱体化させられているか。まあ、殺されてるってことはないだろうけど、なんとかしないと」


 殺されるという言葉にビビったのか、ジュニアは悲しそうな顔をしていた。


「大丈夫。サザムだって、怨念がなきゃただの人間だ。俺とお前、そして精霊たちがいれば敵じゃないさ!」

 俺はジュニアの頭を撫でてやった。それでもジュニアは不安そうなままだった。

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