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魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第3部】おわりの町ですべてが終わる
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第五章② 【朗報】息子の悪癖、ついに理由が判明

「サザムを倒すしかないね」ジュニアが単刀直入に切り出した。

「多分だけど、ノコみたいな仲間がたくさんいると思う。一人ずつ倒すより、リーダーを討った方が何倍も早い」

「それはわかるが、どうやってアイツを倒す?」


 俺がこの町の魔力を見た限り、そこらじゅうに怨念が渦巻いている。住人たちからもごく微量だが怨念が発せられている。そもそも町全体から怨念が立ち上っているのだ。三百年前に殲滅された恨みが、今も残っているのだろうか。過去の行いの残忍性を思い知り、改めて取り返しのつかないことをしてしまったと実感した。しかし、過去の行いはどうしようもない。

 まぁそれはさておいて、問題はこの町、いや、この国で戦ったら、サザム率いる呪術師軍団がかなり有利だということだ。相手が一人ならいざ知らず、向こうがチームでいる以上、俺たち二人で挑むのは危険だった。


「一つだけ方法があるんだけど」ジュニアはモジモジしながら言った。


「なんだ、そんな方法があるなら早く言え」

「でも、父さんが信じてくれるか不安なんだ」


 ジュニアの言葉を聞いて、俺は驚いた。これまで信じなかったことなんてない。ただ突拍子もないジュニアの思考が読めず、理解できないことも多いが。


「安心しろ。お前のことは信じているさ」

「本当?」

「こんな嘘ついてどうする」


 俺が笑って見せると、ジュニアも安心したように笑った。その笑顔には幼少時の面影がある。こんなに大きくなったのに、まだ子供なのだと実感した。


「父さんは精霊って信じる?」

 精霊とは、魔物の対をなす存在。神聖なものとして、神の使いや何かを守護する存在といわれている。絵本に載っているから知ってはいるが、俺は今まで見たことはない。まあ、魔王が出現した時に散々魔物を見たので、精霊も信じていないわけではないが。


「まあ、いるだろうなって思うけど」

「精霊に怨念を浄化してもらおうと思うんだ」


 確かに、魔物とは真逆の神聖な力を持つ精霊なら、怨念を払うこともできるだろう。人間にできない強大なこともやってのけるはずだ。

 だがこのプランには問題がある。


「いいとは思うが、どうやって精霊に頼むんだ?」

「僕から頼むよ」

「そんなことできるのが?」

「ほら、信じてない!」


 ジュニアに指さされ、俺は言葉に詰まった。しかし、常識的に考えて無理だ。相当魔力が高い俺でも精霊が見えないし、先代たちも見たことがない。これまで精霊に会ったという話は聞いたことがないし、俺は妖精が絵本にしか出てこない存在だと思っていた。


「僕が今まで精霊と話してたの、知ってるでしょ」

「あっ、よくブツブツ言ってる怪しい独り言か!」

 ジュニアが音楽を奏でながら、誰かと喋っているのを思い出した。

「ひどい、そういう目で見てたんだ!」

「仕方ないだろ。俺にはそうとしか見えないんだから」

「そっか。まあ、そうだよね」

 ジュニアは悲しそうだったが、すんなりと納得していた。


 ちょっと考えてから、ジュニアは自分の右肩を指さした。

「じゃあやっぱり、この子も見えないんだよね?」


 俺には何も見えない。ただ宙を指さしているだけだ。


「父さんでも、見えないもんなんだね」

「無茶を言うな。見える方が少ないんだから」

「だよね。みんなもそう言ってた」

 ジュニアは笑って自分の右肩に向かって微笑んだ。まるで誰かが乗っているとでも言わんばかりに。


「で、精霊にお願いできるのか?」

「うん、それは大丈夫。精霊たちも苦しんでるから、喜んで協力してくれると思うよ」

「だったら、今すぐにでも頼んでくれ。というか、そんなことができるなら、精霊たちもさっさと怨念を払ってくれればいいのに」


 俺が言うと、ジュニアは大きなため息を吐いた。


「できるもんなら、してるに決まってるじゃない」

「じゃあなんでやらないんだ?」

「アイツらに封じされているからさ」


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