第四章① 俺が猿だった時の黒歴史語るぞ
時刻は夜の九時前。俺の街では、多くの人々が寝る用意を整える時間だ。
街は朝六時から動き出すので、遅くても住人のほとんどが十時には就寝していた。
そんな時間に、俺は街を歩いていた、ルルに手首を引っ張られ、強制的に前に進まされる。ルルの手を振りほどくのは簡単だ。
自慢じゃないが、普段から重い貨物を運んでいるから力はある。か弱い女子なら、振り払った勢いで倒れてしまうかもしれない。だが母さんに叱られた。「ルルちゃんの言うこと聞いてあげなさい」だと。
くそ、どんな言葉で母さんを洗脳したんだ、コイツは。
魔力の高いルルだが、魔法を使った場面は一度も見たことがない。いや、一度だけあるか。だがそれは、ルルにとっては魔法とも呼べないようなお遊びだった。
それは俺らが学校に入学してすぐのこと。
まだ四歳だった俺らは本当に悪ガキだった。四六時中騒いで、担任からはいつも殴られていた。「お猿さんの方がもっとお利口さんですよ」とおばちゃん先生はいつも怒っていた。
そんな俺らとは対照的に、ルルは教室でも大人しい方だった。まあ、男子と女子で、交わる機会が少なかったのもある。
やはりルルは女子グループから浮き、教室ではボーっと窓の外を眺めるような奴だった。誰かが可哀そうだからと話しかけたが、本人は好き好んで外を見ていることがわかると、誰も話しかけなくなった。本人はちっとも悲しそうじゃなかったし、一人でいることに何の疑問も持っていなかった。
だから変わった奴だとは思いつつも、誰もが「そんなもの」だとしてルルをほっといた。
入学してすぐに、城外ハイキングがあった。