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魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第3部】おわりの町ですべてが終わる
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第二章⑤ ここからは息子のターン!

 今までは比較的広い道を進んできたが、ノコの前に広がる道は、異様に狭い。追加で堀ったせいか、道というよりも小さな小窓を覗き込んでいるような感じだった。

「ここに厚い岩盤があるのであまり掘れませんが、試しに掘ってみたらもうザックザク。大当たりだったんです」


 ノコは俺に道を譲った。中を覗き込んで俺は絶句した。小さい空間の全面がダイヤモンドなのだ。暗いせいでしっかりと確認できないが、確かに宝石特有の光を放っている。露出している分だけでも、小さな家が買えるほどの金額になるだろう。まさに宝の山だった。


「どうです。圧巻でしょう」

「ああ、驚いた」

「これはまだ推測ですが、この厚い岩盤全部がダイヤモンドだと私は考えています」

「その可能性は高いな」

「いかがですか。この話を引き受けてくださいますでしょうか」

「ああ、検討しよう」


 正直驚きすぎて、冷静な判断ができない。まずポートから専門家を連れてきて、しっかり検分する必要があるだろう。これだけ大量の原石が出るんだから、商人ではなく研究者を連れてきた方がいいかもしれない。俺の心臓は高鳴りっぱなしだった。


 俺とノコが話している間に、ジュニアも岩盤を覗いた。途中、吐きそうな声を出していたが、しっかりと観察している。立ち上がったジュニアは具合が悪そうだった。だが松明のせいで、どれほど弱っているか理解できなかった。


「おい、大丈夫か?」

「うん、大丈夫」というが、ジュニアの声に力がない。


「おかしいですね。ガスもないのですが」

 ノコはジュニアに手を貸そうとしたが、ジュニアは後ずさりした。


「大丈夫。ちょっと風に当たってくるから、父さんたちは先に戻ってて」

 そういうと、ジュニアはフラフラと先に戻ってしまった。


「おい、道はわかるのか?」

 ジュニアは右手を挙げて、ブラブラと振った。まあ、大丈夫ということなのだろう。まあ、俺たちもこんな場所に長居するつもりはないので、ジュニアの背中を追うように町へ戻った。



 俺たちが町へ着いた時には、すっかり陽が落ちていた。坑道から出た後のジュニアがどこに行ったかわからない。ただ待っていても仕方ないので、俺は民宿を手配した。

 ノコは「自分の家に泊まったらいい」と申し出てくれたが、そこまで甘えるつもりはない。仕事や食事は一緒にするが、それ以外は別行動にしようとこちらから提案した。

 ノコは最後まで粘っていたが、ついには折れて別行動を認めてくれた。そしてこの町唯一の民宿を紹介してくれたのである。まあ、小さな民宿なので、俺とジュニアは同じ部屋。ノコの家に泊っているのと大差ない感じだった。



 荷ほどきを終えて、ノコと話しに行こうと思った頃、ジュニアが戻ってきた。


 民宿に着くなり、ジュニアはベッドに倒れ込む。さっきは具合が悪そうだったが、ひとまず今はちゃんと歩いてて安心した。

「何か薬を飲むか?」

「さっき飲んだから大丈夫。もう少ししたら効くよ」

 ジュニアの奴、いったいどこで薬を調達したんだ? 問い詰めようかと思ったが、病人に質問攻めするのもよくないだろう。


「ノコが一緒に夕食をしようと言うんだが、行けそうか?」

「ねえ、もうあの人に受けるって言っちゃったの?」

「いや、まだだけど」

 宿の確保に時間がかかり、具体的な商談はまだしていなかった。


「あのさ、父さんは本当にこの話に乗るつもり?」

 ベッドにうつぶせたまま、ジュニアが俺を見つめてきた。


 驚いた。まさかジュニアから商売の話をされるとは。だが俺の期待とは裏腹に、ジュニアのテンションは低い。

「ああ、大まかな合意は取りたいところだな」

「父さんは、本当にあの人が信用できると思ってるの?」

「どういうことだ?」

「まだ気づかない?」

 そういって見つめるジュニアの瞳は澄みわたり、いっそ冷たさを感じた。

【筆者から大事なお知らせ】

 本日も本作を読んでくださり、本当にありがとうございます。ここまで読んでくださったことに深く感謝申し上げます。


 さて、連載当時から毎週土曜0時に更新していた本作ですが、この回以降は【毎日投稿】します。毎晩0時に次話が更新されますので、ぜひ明日も読みに来てください。


 2021年から続いた本作も終盤に入り、まもなく完結です。最後まで今しばらくお付き合いくださいますようお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎日投稿! 大変だと思いますが、楽しみにしていますね!
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