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魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第3部】おわりの町ですべてが終わる
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第一章⑦ アズールの決断

 俺は矛盾を指摘してやろうと何度も疑ったが、話に落ち度はない。断りたいが、断る理由が見つからないほどにいい話だった。

 恐ろしいことに、商売をしていると時々、本当に嘘みたいに上手い話が転がっていたりする。今回もその手の話で、判断が難しいところだった。


 だが、ここで一つ閃いた。新支部を立ち上げて、アーサーに任せてもいいのかと。いや、いっそのこと今ある仕事をアーサーに譲り、俺が支部長としてマーリマリで小さなビジネスを始めてもいいかもしれない。


 アーサーは俺の事業を引き継ぐ気満々だし、早めに世代交代した方が現場もアーサーにも負担はかからないだろう。


 マーリマリならアーサーニュも近いし、ルルと一緒に実家に戻って来れる。十五年前はポートに行くのも一苦労だったが、資金がある今なら、実家のアーサーニュと自宅のポートを行き来するのも簡単だ。


 もし事業に失敗しても、本業が無事なら問題ない。俺の引退後の人生を考えた時、これほどいい話はなかった。



「わかった」と俺はノコに告げた。

「一度見に行こう。それでいいか?」


「もちろんでございます。ぜひご家族揃ってお越しください」

「考えておく」


 ノコは東地区の安い下宿に泊まっているらしく、祭りが終わったらマーリマリに帰るらしい。俺は帰省時に一緒にマーリマリへ同行することを約束して、その場は別れた。



 取り残された俺は、またぼんやりと人混みを眺めた。ちょうどパレードが終わり、人々が解散している。


「あ、お父さんばっかりずるい!」

 戻ってきたミーナが俺を指さした。この短時間で、ジェラートはドロドロに溶けていた。


「私も食べる!」

「はいはい、わかったから」


 俺はミーナに数枚の紙幣を渡した。子供たちは喜んでジェラート屋に走った。あと何回こんな光景を見られるんだろう。この時の俺は、走り去る子供たちの背中を見て、なんだか寂しくなった。

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