表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が居座るせいで始まりの町から出られません  作者: 団 卑弥呼
【第1部】はじまりの旅が始まらない
1/147

第一章① 古の勇者よ、なぜあと10年頑張れなかった

 春になると、様々な生物が目を覚ます。昆虫とか小動物とか魔王とか。

 嘘みたいな話だが、今年の春に魔王が復活した。皮肉なことに、魔王討伐を祝う春光祭に。


 今になってわかった話だが、どうやら過去に行われたのは討伐ではなく封印で、しかも二百九十年後に封印が解けるらしい。

 なんだよ区切り悪いな。あと十年頑張れよと思ったが、復活してしまったのだからしょうがない。


 というわけで、今年の春光祭は阿鼻叫喚である。

 当たり前だ、死んだはずの魔王がやってきたのだから。


 正午のベルと同時に空一面が真っ黒になり、王都の空一面、魔物が四方八方に飛び交ったのだとか。

 見た人は、さぞ度肝を抜かれただろう。武器屋のおやじはショックのあまり、毛髪が抜け落ちたらしい。まあ元々はげているから、彼なりのジョークなのだが。普段はクソ寒いのだが、不覚にも笑ってしまった。


 さて、なぜ俺が他人事のように書いているかというと、現場を見ていないからだ。

 不幸なことに、春光祭当日は寝込んでいた。高熱が出たのだ。


 あんなに苦しんだのは、人生初だ。本当に死ぬかと思った。

 しかし翌日にはケロリとし、前日の苦しみはなんだったんだと思う。


 ただ今となっては、逆に寝込んで正解だったと思っている。


 うちは王都の西方はずれ、王都を取り囲む城壁付近にある。

 春光祭当日、住人は城付近のパレードに詰め掛けていたため、人々の悲鳴は一切届かなかった。


 そんなわけで、快復した俺にはすべてが信じられないことだった。

 家族からは「絶対外に出るな」と言われている。といっても、父は蒸発したので母が言うだけだが。


 行くなと言われると行きたくなるのが人の性だが、俺も窓の外を見て外出をやめた。

 空には黒い影が飛び交っている。詳しくはわからないが、本で読んだ魔物に似ていた。怖いわけではないが、用心するに越したことはない。


 母の言うことをまとめると、こうだ。(続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ