表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救国の神子と呼ばれた少女の話  作者: 海鳥
第一章 運命の扉が開く音
8/20

7



「今日から、私はなにをしたらいいの?」


朝食を終え、鏡台の前に座り、カミラに後ろの髪を直してもらいながらアカリは聞いた。


「本日はひとまず、イーサン様が城内を案内してくださるそうですわ。」

「イーサンさんが?でも、隊長って言ってたよ。忙しいんじゃないの?」

「神子様の護衛も含まれてますので」


護衛。その言葉にアカリは目を丸くした。


「お城の中だから安全なんじゃないの?」


そう言うアカリに、カミラはにっこり笑った。


「万が一の事がございますから」

「万が一」

「えぇ、万が一ですわ」


生活圏の宮殿内で万が一を心配をするなんて、日本では考えられないことにアカリは驚いた。

しかし思い直せば、現代の日本では安全でも、授業で習う日本を含めた世界の歴史では、命のやり取りがたくさん起こっていた。きっとアカリが知らないだけで現代の世界でも。


(大変な世界に来ちゃったなぁ。)


アカリは頬を掻いた。


「ボウズ、準備できたかぁ?」

「え!」


驚いて振り返ると、ドアのノックと共にイーサンが部屋に入ってきた。


「まぁ!イーサン様!了承もなく入室するなんて!神子様に無礼ですわよ!」


カミラも目を見開いて、イーサンに詰め寄った。


「っと。すまねぇ。つい癖で」


「癖で、と言うことは。・・・ーーまさか!殿下にも行ってますのね!イーサン様、わたくし常々、貴方に申したいと思っていたことがありますのよ!イーサン様はそもそもーー」


「悪かった!悪かったって。気をつけるから、な?許してくれカミラ。ボウズもすまなかったな」


声を荒げるカミラに、耳に指で栓をするイーサンを見てアカリはクスクスと笑った。


「大丈夫です。びっくりしただけだから」


カミラは言い足らないらしく頬を膨らませながら、まだぷりぷりと怒っている。


「イーサンさん、今日はお忙しい中、お城を案内をしてくださるそうで。よろしくお願いします」


そう頭を下げるアカリを見て、イーサンは少し驚いた。

昨日の様子ではもっと死にそうな様子だったからだ。

今日もきっと暗く沈んでいるのだろうと思っていた。

部屋の中に閉じ込めるよりも、気分転換になるようにとアルバートに言われ、アカリの部屋に足を運んだが。


(大丈夫そうか?)


イーサンは、いつもの癖でぽりぽりと頭を掻いた。






「そいじゃ、行くかぁ」

「はい!」

「行ってらっしゃいませ」


送り出すカミラを背にして、アカリは部屋を出た。

部屋を出ると、昨日もイーサンの隣にいた細目の男、キースが立っていた。


「おはようございます神子様」

「おはようございます。キースさん」

「早速覚えていただけて光栄ですねぇ」


「昨日は、ご挨拶出来なくてすみません。改めまして、お世話になります。よろしくお願いします」


頭を下げるアカリにキースは細い目を更に細めた。


「こちらこそ、昨日ちゃんとご挨拶してなくてすみません。キース・ブラウンと申します。よろしくお願いします」


キースはニヤニヤとした笑顔をアカリに向けた。


「すみません。うちの隊長、ちょっと礼儀を知らなくて。止める間もなく入っていくから、こっちもびっくりしちゃって」

「悪かったって」

「カミラもプンプンでした」

「でしょうねぇ。次、失礼な事があったら遠慮なく言ってくださいねー。止められそうなら止るんで」

「止めると言ってくれ」

「厳しいでしょうねぇ」


アカリは二人の気心知れた軽口に、笑いを抑えられなかった。


「あはは!そしたら、またカミラに怒ってもらいます!」

「言いますねぇ」

「それだけは勘弁してくれ」


イーサンはその大きな体を縮こませ項垂れた。

アカリとキースは声を上げて笑った。



イーサンが教えてくれる後ろを、アカリは雛のようについていく。


「こっから上の階は、王家の方専用で立ち入り禁止だ。あそこに見える塔は、いまは使われてねぇな。危ねぇからあんま近づくなよ。あそこを角を曲がると図書室、それからそっちに行くと食堂で、この先を行くと厨房になる。つまみ食いにいくなよ?めちゃくちゃどやされるから。あっちの広い部屋がボールルーム。そんでーーー」

「待ってください。イーサンさん。私、目が回って」

「隊長って本当に雑ですよねぇ」


案内してもらったがいいが、全然覚えられそうにない。なんせ部屋の数が多すぎる。

同じような廊下、同じような扉。いま、自分が何階にいるかも怪しくなってきた。

アカリは次々と紹介される部屋の数の多さに目を回した。


「そうか?新人に教えるときもこんなもんだろ?」

「隊の新人と神子様を一緒にしないでください。そうだ。庭をまだ案内してませんから、休憩も兼ねて案内して差し上げればどうですか?神子様、今の時期なら花も咲いてますし、綺麗ですよ」

「それは、是非ともお願いします。」


キースの心配りにアカリは感謝した。

丁度、外の空気を吸いたいと思っていた。


「じゃあ、茶でも届けさせるか」


イーサンは近くを通り過ぎる使用人を呼び止めて、庭にお茶と軽い茶菓子の用意を頼んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ