三話
三話 恋の始まり
チュンチュンチュン
鳥のさえずりと共に目を覚ましたクロはルアーナが居ないことに気づいた。
「どこに行ったのかなルアーナ?」
そう言って歩き出す。水を飲みに川に行ってるのかな?と思ったクロは川に向かう。歩いて数秒の所にあるのですぐに見つけられた。
……が川は見つかっても肝心のルアーナは見つからなかった。
「ん〜、おかしいな?」
その瞬間、川の中心が膨れ上がったかと思うと
「ぷはぁ……」
そう言ってルアーナは姿を現した。水浴びをしていたようだ。
「あ、ルアーナ」
「……………………………………………………………」
「どうしたの?ルアーナ」
止まったまま動かないルアーナに対してクロは心配になり
「とりあえず体拭いて服きたら?」
「死ねーーーーーーーーーーーーーー」
そう言って叩こうとするも避けられてしまい
「子供の体になんて興味無いよ!」
と、言いながらクロは戻って行った。
「後で覚えてるといいわ」
そう言って体を吹き服を着るのだった。その後気まずくも合流した二人は、軽く食事を取り出発の準備をするのだった。
「このペースだと着くのは三日後かな」
そういったクロは、キノコを採取していた。文句を言いたがったがついて行くので精一杯なので何も言えないのであった。
(こいつの足どうなっているのかし……)
ルアーナがクロの足を見ると靴は履いておらず傷だらけで凄い出血だった。
「ね、ねぇ…その足っ」
「ん?足?」
「たくさん血出てるし治療しないと……」
「僕は黒髪だよ〜?もう忘れたの?」
よく見るとクロの体には拷問を受けたかのような傷が沢山あった。それを見てると胸が苦しくて仕方がなかった。
「クロ足出しなさい!」
そう言うとルアーナはナイフを取りだし自らの服を切りクロの足に巻いた。
「えーと、何してんの?」
「包帯替わりよ!」
少し驚いたような顔をしたあと少し微笑んで
「……ありがと、ルアーナ」
そんなクロの笑顔を見て、顔を赤くしたルアーナは
「も、もっとお礼してもいいんだからねっ」
それを見たクロは察したかのごとく笑みを浮かべて
「惚れた?」
と聞いた瞬間、大量の石を投げつけられた。そんな事を繰り返しながら歩いて行く。お昼頃になると燻製肉を食べながら歩いた。
「このお肉……どうしたの?」
「うさぎからだよ、熊や猪には勝てないからね」
「勝てたら怖いけどね」
このたわいのない会話もさっきからずっと繰り返していた。
(同じ繰り返しなのに屋敷にいた頃とは違う。話してると胸が踊るというか……胸がいっぱいになる)
そんな事を考えながらルアーナは黒の後ろ姿を見ていた。貧相な服なのに清潔なのが分かる。クロから目を離して一つの木を見る。その木にはたくさんの実がなっているがどれも見た事のない実だった。
「なんの実なのかな?」
そう思ってクロに聞こうとクロの方を見ると
「あれ?いない?」
クロとは離れ離れになってしまっていた。遭難した時は動かないのが一番、子供でも分かるのにルアーナは分からなかった。
「多分こっちね!」
そう言うとルアーナはクロとは違う方向に歩き出した。
「まいったな〜」
ルアーナと離れ離れになっているのに気づいたクロはルアーナが方向音痴なのも知っているため、どうしたもんかと悩んでいた。
溜息をつきながらも何処と無く楽しそうなクロは来た道を戻り始めた。足に巻いてある布のせいで多少の歩きづらさはあったがそれでも布を取ることは無く、むしろ、それを見る度に笑顔になっているのが分かる。
「早く見つけてやらんとな〜」
そんなことを言いながら歩いてると兎が目の前を通った。
「……………」
その瞬間、兎を捕まえようと走り出す。
「待てっ!」
そう言いながら、全速力で走り出した。だが、偶然にも向かってる方向はルアーナのいる場所でもあった。
「よいしょっ…と」
自分の数倍の高さはある木に一瞬で登ると、木と木を飛びうつりながら兎を追いかけた。兎の真上まで来て捕まえる準備をしていると
「う……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そんなルアーナの叫び声が聞こえた。叫び声が聞こえた場所を見ると一匹の熊と金色の髪を持つ少女が見える。
「金色の髪って…ルアーナしかいないな」
そう言ってルアーナの場所へ急いで向かうのだった。
「ふざけないでよ……」
そう言いながら自分のお腹に手を当てた。深い切り傷ができているのと同時に大量の血が流れていた。手の色は真っ赤に染まる。涙を流しながらも熊を睨む。
「……グルルルル」
逃げたくても木と熊に挟まれ逃げることは出来ない。それ以前に足が震えて動けない。
(どうして?猪の時は動けたじゃない!)
自分に言い聞かせようと必死に考えるが何も思いつかない。
熊が手を構える。
(あ……死ぬんだ私)
そう思った瞬間、体の力が完全に抜け何も考えられなくなると頭の中でふと一人の少年の笑顔が写った。
(あ…………クロだ)
まだ死にたくないとそんな言葉が頭によぎるがそれはもう遅い。目の前には熊の手が爪が迫っていた。
グチュッ……グチュグチュチュチュ
えぐれる音が鳴る。
「ん……っぐ……っっ」
ルアーナの目に映るのは赤色に染った景色だ。けど自分の体はお腹の傷以外はなんともない。じゃあ目の前に移るこの赤い景色はなんだろうと思っていると
「はぁ〜………何して……んの?」
声が聞こえた。沢山聞いたわけじゃない。なのに耳から離れず忘れられない声が聞こえた。
頭に手が乗る。初めての感覚なのに心が安らぎ気づくと涙は止まっていた。
「大丈夫だよ……僕が……君…を守る……から」
そう言った黒い髪をした少年はその少女に笑いかけた。とぎれとぎれで全く安心できないはずなのに足の震えも止まっていた。
(そっか……私、知らないうちにクロがいないと生きていけない体になってたんだ…)
会って二日しか経っていないが、これが一目惚れというものなのだろうか?
「……私……クロのことが…」
そう言おうとした瞬間だった。
ブシュッッッッッ
そんな音と共にクロは倒れた。お腹の三分の一近く切られたのだ。声も開けず静かに倒れた。クロの手は私の頭を離れ、赤く血塗られた私の手に乗っかった。
顔を見ると静かに笑みを浮かべていた。
全てが真っ赤に染まる。冷たくなっていくクロの手と生暖かい血はルアーナに現実だと教えている。
何も考えられず、気づいたら私を探していたメイドが熊を倒し私とクロは病室に運ばれていた。