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3話「世界お乗換えキャンペーン」

「私の名前はクロノス、この世界の担当神です。」


 匡は少女の言葉に呆然としている。


「――お前が……神?」

「はい!時を司る神をやらせてもらっています。」


 少し考える、目の前にいる自称神のクロノスと名乗る少女。普段の儂なら鼻で笑うところだが、今まで見てきた異常な出来事とこの少女が前触れもなく急に現れたことに今の自分では説明がつかない以上、このクロノスを神だという過程を前提に話すことにする。


「儂のイメージしている神と呼ばれる存在は頭にいばらを巻いてたりするか蓮の花上に座ってるんじゃがのう?」

「あぁ、それは現地採用の方々ですね!」

「現地採用!?」

「はい、人間の中にも稀に神に近い力をお持ちの方いて、そんな方をスカウ――」

「分かった!分かった!この話は終わりじゃ!!これ以上は儂のなけなしの信仰心が聞くなと言っておる。」

「???」

「と、とりあえず、儂は貴女が神であるという証拠が欲しいんじゃ」


 唐突に話を止めたことにクロノスが首をかしげているが、神々の話をしていたはずなのに現地採用とかいう神秘もへったくれの無いワードが出てきたので一旦話を仕切り直すことにした。


「神である証拠ですか?それは難しい質問ですね……あぁ、そうだ!《時の支配者(タイムドミネーター)[停止](フリーズ)》」


 先ほどまで悩みながら机に座っていたクロノスの姿がまるで映画フィルムをぶった切ってクロノスのいないシーンに無理やりつなげたかのように雑に消えた。

 目の前で起きたことに面食らっていると右肩を誰かに叩かれ反射的に振り向く。

 振り向きざまに頬に人差し指が当たり、その先にはしたり顔をしたクロノスがいた。


「これで信じてもらえませんか?」

「今のは一体なにをしたんじゃ?」

「今のはですね、時間を止めたんです!」

「時間停止じゃと!?原理はどうなっている?……極限までのスピード加速か?いや人間の体感時間とは異なる時間軸への移動?いやそれとも――」

「え~と、もしも~し?聞こえてますか?」


 目の前起こった現象を時間停止と認めたくはないが否定する材料を提示できない以上、クロノスをとりあえず神いう仮定を覆すことができない。


「あぁ、聞こえとる。とりあえず貴女を神という話を信じよう」

「とりあえずですか、ははは」


クロノスは完全には認めてもらえないことがショックなのか乾いた笑いを漏らしながら机に戻り、話始めた。


「こほん、残念ですが藤堂匡さんあなたは先ほど亡くなりました。お辛いでしょうが、あなたには今後に関わる選択肢があります。」


 神がいた言うことはやはり儂の仮説は正しかった!


「一つは高確率で記憶を無くしてしまいますが、あなたの生まれた世界に再び生を受けるか……」


 ということはここは神の世界ということになるが、生きていた頃の物理法則は通用しない。

 そもそもこの部屋にある物の組成も地球に存在しない物質で出来ている可能性もある。定性分析をしたい所だが、ここにはそれができる設備がないのが悔やまれる。


「もう一つは、他の世界に記憶を引き継いだまま転生することができます。」


 この時計も一つずつの張りの針スピードが異なっているのもこの部屋の時間経過が通常ではないということか?


「異世界への転生の際には貴方の善行と悪行の差引して残った善行に応じた《神の祝福(デウスギフト)》を選ぶことができます。――そして!」


 クロノスは一呼吸置いてから話を続ける。


「なんと今だけ!世界お乗換えキャンペーンをおこなっております!」


 そもそも相対性理論が――――ん?


 クロノスの話そっちのけで考え事をしていた所に聞き逃せないワードが飛び込んできた事で思考が止まる。そして聞き流していた話からも聞き流してはいけなかったワードがあったことに気付く。


「異世界への転生?……世界お乗換えキャンペーン?……」


 前者の言葉には思い当たる節はあった、しかし後者の言葉、そのふざけた名前から言い知れぬ恐怖感を感じる。


「はい、世界お乗換えキャンペーンは本来差引をした善行ですと強力な《神の祝福(デウスギフト)》を得ることはできません。ですが、転生した異世界で起きている問題を解決することを約束して頂けるなら差引後の善行を大幅に増やすことのできるキャンペーンなのです!」


 クロノスの語るキャンペーン内容に少し眩暈がする。


「話を止めて悪いんじゃが、いくつか質問をいいか?」

「はい!どうぞ。」

「異世界とやらでそのギフトとやらを得るとどうなる?」

「そうですね、ギフトは那由多に近い数の種類がありまして、一例をあげると単純に身体機能や魔術適性を引き上げるギフトもあれば人では普通は手にすることのできない武器のギフトもありますし、最近ですと種族変更のギフトや自身の持ってる道具をギフトによって高性能化して持っていく方もいらっしゃいますね。」

「それは好条件じゃな、それでどれくらいの人がそのキャンペーンとやらを使用するんじゃ?」

「そうですね、九割五分くらいの方が利用されて異世界に転生されてますね。」


 頭の中の仮定が事実と合致して定説になった。

 いままで自分が立ち向かってきた問題がこんなことの為に起こっていたのか……

 こんなことの為にあれだけの犠牲を払い、こんなことの為に人々が苦しんできたのか?

 途端に思考が怒りの感情に支配される。次の瞬間にはクロノスの胸ぐらに掴みかかっていた。


「ふざけるな!そんなことの為に儂らの世界が滅びかけているというのか!!」

「ごめんなさいごめんなさい、でもこのキャンペーンも前任の担当神が他の異世界の神々と決めたことで私は神の盟約でこれを言わないといけないルールなんです!私だって担当世界が滅びそうだから言いたくないんですよ!」

「うるさい!今すぐ儂をあの世界に戻せ!どんな困難でも、どんな手を使っても、儂はあの世界を救わないといけないんじゃ!!」


 クロノスの胸ぐらをつかんでぐらぐらと揺らしながら激昂する。


「《時の支配者(タイムドミネーター)[停止](フリーズ)》」


 気がつくと先ほどまでつかんでいたクロノスが姿を消す。今までの経験から後ろを振り向くとそこにクロノスが立っていた。


「どんな困難でも、どんな手を使っても世界を救う……貴方は今そう言いましたね。」

「そうじゃ!だから今すぐ儂をあの世界に生き返らせろ!神ならそれくらいできるじゃろ!」

「死者の蘇生はできないルールです。仮に生き返らせたとしても、貴方の力を持ってしてもあの世界は救えない。」


 クロノスの言葉は確かに正しい。儂が戻ってたとしてもそれは滅びを停滞させるだけだろう。魂が異世界に流れている以上、儂ができることは限られている上にそれを行うのに何年かかるかもわからない。

 だが、だからと言ってこのまま何もせずにいられる訳がない、あぁそんなことはあってはならない。


「そう、今の貴方では世界は救えない。ですが、これからの貴方なら世界を救う方法はあります。」

「――なんじゃと……一体、どうやって?」


「今、唯一この世界を救う方法、それは異世界転生です。」

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