1話「神から魔剣を与えられた俺は世界最強だった件、その1」
俺の名前は田中輝男、ごく普通のニートの30歳だった、ある日コンビニで立ち読みしていたらブレーキとアクセルを間違えた車がコンビニに突撃し、その車に轢かれて死んでしまった。
しかし神様から選ばし者にのみに扱える伝説の剣、レバテインを託され、世界を支配しようとする魔王討伐の為に田中輝男改めクリストン・アーキュライとして異世界「アーヴェイン」に転生した。
転生した異世界ではいろいろあって、今はエイントリー王国の勇者として活躍している。
魔法が得意なエイントリー王国の姫であるレイ、奴隷商人から助けた拳闘志で女獣人のワンダ、俺との死闘の末に魔王と袂を別った元魔王軍女幹部のルーダ、この3人の美少女達と共にエイントリー王国を拠点として世界の征服を企む魔王を討伐する為に日々冒険の毎日を送っている。
最近は人間と獣人が仲良く暮らす「ノスリア」って国の王族が魔王軍と同盟を組もうとしてるって話を聞いて、魔王に与する奴らを許するわけにはいかないのでその王族を討伐し、国民たちを開放してきた。その戦いの休息をするために拠点であるエイントリー王国に戻っていたある日、俺達の元にある事件が舞い込んできた。
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王宮から東へ約50キロ、エイントリー王国東城門付近の街「エリスカ」
商人たちが行きかう商業ルートに面している為、商業の街として栄えてる商業都市。
人々が行きかい常に活気にあふれる街だった。
そんな活気にあふれた街は見る影はなく、見えるのは見渡す限りの瓦礫と炎、そして遠くに見える大きく破壊された城門だった。
「<探知>……周囲に敵がいない?普通の攻撃じゃないな……まさか!空からか!?」
見上げると少し陰り始めている空、そしてその空には「この世界」で見るはずのない飛行機雲が遠くの空へ伸びている。
エイントリー王国は国全体を城壁で守られた城壁国家であり、城壁には東西南北に4つの門がある。その門全てが一斉に破壊されたという知らせを受け、魔王軍からの襲撃に違いないと考えた俺達4人はそれぞれの門の様子を確認しに向かったのだが、思っていた以上に事は重大だったようだ。
「まずは状況把握だな<広域探知>……」
広範囲の生体反応と動体反応を探知する魔術であたりの状態を確認する。
「生存者無し、動体反応、400……いや、500くらいか?」
反応があった方に振り向くと破壊された門のさらに先に多くの人影が迫って来るのが見えた。だが、その人影は人間にしては動きがぎこちなく、かといって魔物というには明らかに人の形状をしている。
「なんだ、あいつら?……<遠見>」
遠見の魔術を行使し確認すると人影の正体は人間でも魔族なかった。
遠目では人間に見えた「それら」は全身が金属でできており人と呼ぶにはあまりにも異質な容姿であり、魔王の配下にしては奴らは訓練された軍隊以上の一糸乱れる動きでこちらに迫ってきている。
初めて見る物だったが転生者である俺には鉄の人間達がなんであるか一発で理解できた
「あれは……ロボット!?」
視認できた成人男性サイズの人型ロボット。黒き鉄で出来た体に感情を感じられない機械的な動き、そして各部に備え付けられている剣や銃器、その見た目は明らかに兵器であり友好的な対話は難しそうなことが窺えた。
「難民からの噂で聞いていたが、まさかこのファンタジーみたいな世界で本当にロボットと戦う事になるとはな。元の世界にいる時には考えもしなかったぜ。」
そんな軽口を叩きながら腰の剣に手を掛け、体の重心を低く構えた。
「<筋力強化>……<耐久力強化>……<速度強化>……」
複数の強化魔法を自身にかける、大気中のマナが術式によって光となり体を包み、力が満ち溢れのを感じる。
そして次の瞬間、凄まじい勢いでロボットの軍勢に向かって走りだす。強化された脚力瞬く間にロボットの軍勢の前にたどり着き、剣を抜いた。
「燃え盛れ!レバテイン!!」
その斬撃は最前列の数体を真っ二つにし、剣から炎が溢れ出す。炎は後方のロボット兵をも飲み込み溶かす。
街を焼く炎より強い炎を放つ勇者に人間の兵士なら怯む所なのだろうが、ロボット兵達は構うことなくターゲットをクリストンに定め攻撃を開始する。
「俺の名はエイントリー王国の勇者!クリストン・アーキュライ!!この国に攻めて来た事を後悔させてやるぜぇ!!」
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数時間後、クリストンとロボット兵達の戦いも遂に終わりを迎えようとしていた。
「こいつで、最後!」
叫びながらレバテインのフルスイングで最後のロボット兵の首を刎ね落とした。
辺りはレバテインの炎で建物の瓦礫すら残らずその代わりにロボット兵の残骸が散乱している。
「はぁ……はぁ……さすがに……しんどい……」
その場に片膝を地面ついて荒くなった息を整える。さすがの王国最強の勇者って言っても1度に数百の敵を相手するのは骨が折れる。
「とりあえず城に戻って王様に報告しないといけないしレイ達が心配だ」
一旦城に戻りこの事態の報告と仲間の安否を確かめる為にその場を後にしようと転移の魔術を記した巻物を取り出す。
「おいおい……マジかよぉ」
巻物は先ほどの戦闘で破損したのか銃弾で打ち抜かれたような穴が開いている。これではもはや使い物にならず、疲労状態の上に徒歩で王宮まで戻らなければいけないという現状に俺は大きな溜息をつく。
「途中の街で馬車でも借りてどうにかするかぁ…こんなことなら転移魔法を習得しておくんだったな。」
己の不幸に肩を落としながら城に向かって歩きだそうとした瞬間に足元から伝わる小さな振動を感じその場に立ち止まる。
その小さな振動は少しずつ大きくなる。嫌な予感がする。
そう、その振動はまるで何かが近づいて来るような振動なのだ。
「嘘……だろ?」
恐る恐る振り向く、そこに見えた光景に俺は全身から血の気が引いて行くのを感じた。
自分のいる場所まで数分もすればたどり着く距離にさっきと同じロボット兵やその後ろには10mはあるであろうサイズの大型ロボットが先ほどの数倍の数が大挙して押し寄せている様が見えた。
「あ、あんな数!……相手できるわけがないだろ!に……逃げるか?」
今すぐ迎撃すべきか?撤退してこの危機を国王に伝え、仲間たちが揃うのを待ってから迎撃するか?考えうる対処法を考え、必死に思考を巡らせる。
突然に背後から「パーン」と大きな音がした。その唐突に鳴った音に思考を止めた、ロボットの大群は先ほどより距離が近くなっていたが、音の大きさからしてあの距離からではない。音のした背後に振り返る。振り返った先には最後に倒したロボットが首のない状態で銃口をクリストンに向けて構えていた。その銃口からは煙が白い硝煙がくゆりながら立ち昇っている。
それに気づくと同時に右足から今まで感じた事のない激痛が走った。
「クソッタレが!」
痛みを堪えながらもロボット兵に剣激を叩きこみ、完全に機能を停止させた。
弾丸は右太ももに当たっており弾丸は貫通しておらず太もも内に残っていて傷口からは血が溢れ出している。
遂には激痛で足に力が入らずクリストンは崩れ落ちるように倒れた。
「ぐっ……回復薬で……治療しないと」
手持ちの回復薬で可能な範囲での治療を試みた。
いつもならば完全回復とまでいかなくても止血程度なら問題なくできるはずの回復薬を使ったはずだというのに、血は止まるどころか出血量が増えた。
激痛に耐えながら彼はこの現象の答えにたどり着く。
「これは……治癒封じの呪いを込めた銃弾かよ!」
治癒封じの呪い、治癒に関する行動を行うと逆に怪我が悪化する呪術。
弾丸にはその呪いが込められていた。解呪してから治療をすれば問題なく治療できる、しかし彼は解呪の魔術を習得していない、転生しチート武器や高い身体能力を手にした。その圧倒的な強さ故に習得する必要が無いと切り捨てた魔術だったからだ。
もはや正常な思考ができなくなっていた。
「に、逃げなきゃ……殺される……死にたくない……」
迫りくるロボット兵から逃れる為、地面に真っ赤なラインを引きながら逃げる。
しかし治癒封じの呪いによって悪化した傷とその痛みによってその歩みはあまりにも遅く、程なくしてロボット兵団の足音がすぐそばまで近づいていた。
「ひっ!?……<障壁展開>」
術式を起動させ彼を中心とした半円状のバリアが展開された。
最初にたどり着いた成人サイズのロボットが碗部に内臓された剣を展開し、バリアに振り下ろした。
剣はバリアによって弾かれ、ロボットはその反動でのけぞりながら一歩退く。
ロボットは少しの間動きを止めたが、すぐにまた剣を振り下ろし始めた、後から来た他のロボット数体がバリアを取り囲み同じように剣を振り下ろし、弾かれる。
ロボット達はこの動作を一定のタイミングでひたすら繰り返す。
しばらくすると、その機械的な一定の斬撃によってバリアの各部に亀裂が入りはじめた。
「嫌だ!?ヤダヤダヤダ!!死にたくないぃ」
本来ならば身の安全を守る為のバリアは今の彼にとっては迫りくる死の恐怖を増幅するだけの檻と化していた。
このままバリアが破られたとしても、攻撃に魔力を回せば極小ながらも助かる可能性もあるのだが、恐怖に感情を支配された彼にその選択肢はもうなかった。
ガラスの割れるような音が響きわたる。その直後、断末魔が辺りに響いた。
最強戦力を失ったエイントリー王国は数時間後、この世界の歴史から消滅した。
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「いかに勇者と言えど、儂の魔導機兵隊の性能と圧倒的物量にはかなわなかったか!ワハハハハハハハハ!」
無数のホログラムモニターの明かりだけが照らす薄暗い部屋で白衣を着て老人が一人でマンガに出てくる悪の首領のように高笑いをしている。
無数のモニターに映し出されているのは燃える街、逃げ惑う人々、そして人々に襲いかかるロボット兵逹、映像の中にはクリストンの死体も映っていた。
少しするとクリストンの死体に変化が起き始めた。死体が光の粒子になっていく。その粒子が空に向かって舞い上がりそのまま跡形もなく遺体が消滅した。
「エイントリーの勇者……あの力はやはり転生者だったか」
先ほどまで機嫌よく高笑いをしていた老人はまるでスイッチをオフにしたかのように急に冷静さを取り戻していた。
「ソフィア、現在の進行状況の報告はどうなっておる?」
〔はいマスター、機兵隊はすでに各地に展開を完了しており、エイントリーの制圧完了時間は約6時間後を予定しております。〕
老人は誰もいない部屋で誰かに話しかけるとすぐに電子音声のような声質に機械的な口調の少女の声が部屋全体に響く。
「よろしい、では魔王軍の動向はどうなっておる?」
〔魔王を我が軍に倒された後、第一王子が新魔王に即位、人類軍と手を組み連合軍を結成しました。〕
「長年争っていた人と魔族が儂という共通の敵を得た結果、期せずして手と手を取り合う関係になるとはのう、皮肉なものじゃな。」
老人は嘲笑しながらホログラムのキーボードを操作する。
画面には数式や何かの設計図が映るウィンドウが無数に現れる。
「エイントリー制圧後は跡地をタスク‐9078の実験用地として転用する。」
〔かしこまりましたタスク‐9078を待機状態に移行します。〕
「それとタスク‐2725の状況はどうなっている?」
〔タスク‐2725は魔力炉心として回収した魔王の遺体から心臓の摘出作業を現在行っております。対象に蘇生魔術を常時発動状態での作業の為、予定より20%の遅れが出ています。〕
「炉心となる心臓を傷つけるわけにはいかんな、作業はそのままのペースで実行し……」
老人は会話の途中で口をつぐんだ。
〔マスター、どうかなさいましたか?〕
少女の声が機械的な口調ながらも会話を止めた老人を気遣った。
「そうか……遂に…遂にやり遂げたのか!!」
少女の声がまるで聞こえていない老人は声を振るわせながら何かをつぶやいている。
〔マスターの身体に異常を検知しました。〕
「そうだろうな」
少女の声が言う通り老人の体に異常が起きていた。
体が先ほどの勇者のように徐々に光の粒子状になって消えかかっている。
〔マスターの身体をスキャン……異常の原因を発見できません。再スキャンを実行します。〕
「これは異常では無いんじゃよソフィア。ようやく儂の「この世界」での仕事が終わったんじゃよ」
老人の体は半分以上消滅しかけているがその顔に恐怖は見られるどころか達成感を持っていた。
「……ソフィア!タスクの追加だ!儂、藤堂 匡の名においてタスク‐0の発動する!!」
〔かしこまりました……マスター……タスク‐0を最優先での実行を開始します。〕
少女の声が老人の指示を復唱し終えると初めからそこに老人など居なかったかのように消えていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回、人生で初めて小説を書きましたので拙い文章だと思いますがご容赦いただきたく存じます。
まだ右も左もわからない若輩者ではございますが、とりあえず完結目指して頑張ります。