神友
僕には一人 親友がいる
彼の名前は 神という
僕らは二人 海に行き
陽射しを楽しむ 人々を見る
さざなみ楽しむ人々を
眺めているのが 僕らの楽しみ
二人でラムネを傾けてると
神はすっくと立ち上がり
ズボンの砂粒 叩いて落とす
「行くのかい」
僕が見上げて 尋ねると
神は小さく頷いた
「この世を創った責任さ
救わなければ 立つ瀬がない」
神は小さく呟いて 地球の裏へ飛んでった
神の尻跡 残る砂辺に
清い乙女が 現れた
彼女の名前は 滅びといって
僕の愛しい 恋人だった
滅びは 砂をひと掬い
指から零して 嘲笑う
「あいつの身体は ひとつだけ
あいつの腕は 二本だけ
百人救えど 無駄なこと
あいつが百人 救う間に
私は千人 殺してのける」
大言壮語の恋人に 僕は苦笑を禁じ得ず
浜辺に遊ぶ人々を 指差し 彼女に問いかける
「あの人たちを 殺してごらん
波 呼び寄せて 浚ってごらん
神より先に 生まれた君だ
神より強く 生まれた君だ
あの人たちを 殺すくらい
朝飯前に できるだろう?」
僕の安易な挑発に 滅びは嘆息 砂に座す
「私が奪える 命の数は
一日千人 そういう決まり
けれども 私が為すより先に
日に千人が破滅する
人間同士で殺し合い
まばたきする間に 千人が死ぬ
私の仕事は奪われて
ここ千年は 一人も殺せぬ」
清い乙女は 大いに嘆き
神の残したラムネを掴み
腹いせ紛れに飲み干した
僕は 滅びの膝を枕に
暮れゆく空を ぼんやり見上げた
真っ赤な波が打ち寄せて
静かに引いて 逝く音が
日の沈むまで 繰り返された




