その7 変化のその先
短めですがよろしくお願いいたします。
「「想いは繋がり結ばれた!!」」
光が消えた、時が動き出す。世界は色を取り戻す、異能と呼ばれるパープファングも異常な出来事に沙夜に襲い掛かるのを忘れ振り向く、その先に見えた者に目を見開く、その瞳には恐怖が見える。自分を脅かす存在だと本能が訴える。
「…これが想い…」
隼人の右手には、一振りの剣が握られている。ロングソードより細く、刀よりは少し太い。全体の色は黒いのだが刀身部分には二本の白いラインがはいっている。
「良く手になじむ、長年使っていたかのようだ」
「我も初めて見るが言いたいことは分かる」
「頭の中からシスカの声が…」
「フム、今はハヤトの心と繋がっているからな」
シスカはいつの間にか隼人の後ろに立っている。
「道が繋がってしまう。時間が惜しい、ハヤト、あやつを倒すぞ!使い方は分かるな?」
「ああ、やり方は何となくわかる、あいつを倒して沙夜を取り戻す!」
足を踏み込んだ瞬間、物凄い速さで距離を詰めパープファングと沙夜の間に立ち塞がる。
「オマエハイッタイ…」
「時間がねぇみたいだからサッサと終わりにしようぜ!」
そういいながら、沙夜に向かって手のひらを向けると、沙夜の体が薄い光に包まれる。
みるみるうちに傷がふさがっていく。
「…お兄ちゃん!」
沙夜は混乱していた、大好きな異性が自分を助けようとし吹っ飛ばされ怪我をしたかと思うと突然光、収まったと思ったら、傷の無い剣をもったお兄ちゃんがいたかと思えば、突然目の前にいて沙夜の傷を治していく。混乱しないわけがなかった。現実にはありえないことが起こりすぎて処理ができなくなっていた。
隼人はできる限りやさしい声で笑顔を向けながら…
「沙夜…悪いが時間がなくてな…俺がお前を守るから安心しろ」
隼人の言葉を聞き沙夜は何故か悲しくて仕方がなかった、安心させてくれる言葉をかけてくれているのにもう大好きな人には逢えないような苦しく悲しい気持ちになっている。
「コノセカイノニンゲンニ、ソンナチカラハナイハズダ!グオオオ!」
パープファングは吠える、全身に力を入れ腕を横なぎに鋭く伸びた爪で隼人を切り裂こうとする。
隼人の姿がぶれる、パープファングが腕を振りぬき切り裂いたと思いニヤリを口を吊り上げるが、切り裂いた筈の相手をみる。そこには傷などがなく、刀?らしき剣?を右手で振り払う姿があった。
「ナッ…グギグガアアアアァァァァ」
押し寄せる痛みに何が起こったのか、痛みの先をみるとそこにあるはずの自身のあるはずの右腕が無くなっていた。
上空からクルクルと回転しながら何かが落ちてくる…そう右腕だ。ドスッっと鈍い音とともに地面に落ちる。
「キッ…キサマァァァ!」
怒り狂うパープファングは隼人に向かってなりかまわず突進してきた。
隼人は特に表情を変えることなく、沙夜に告げる
「…助けることができてよかった…」
「…お兄ちゃん!!」
「しかし、スゲーな!あいつ気づいてないぞ?」
「フム、よもやこれほどとは…な」
隼人とシスカが軽い口調で話していると
「ヨソミシテイルバアイカァァ…!?」
パープファングが異変に気付いたときには既に体の自由がきかないのに気付き視界が低く低くなっていきその命も潰えていった。
体と頭が切り離されていたのだった。
活動の停止したパープファングは黒い霧になって飛散して消えていった…
それに合わせたかのように、魔法陣らしきものが浮かび上がる。
「フム、ついに時間がきてしまったな…」
「これが繋がったってことか…沙夜…時間が来ちまったみたいだ…妃奈と猛にも代わりに謝っといてくれ…」
「っお兄ちゃん何をいって…!」
魔法陣が立体的に浮かびあがり眩い光を放つ、隼人とシスカを向こうの世界に召喚するように2人の足元から徐庶に上昇していく…
「…じゃぁ…沙夜…元気で…な」
「待って!待ってお兄ちゃん!!!」
沙夜の声も虚しく魔法陣は2人の頭の上まで上昇すると魔法陣と共にこの世界から消えていったのだった…
暇つぶしに読んでいただければ幸いです。