序章
あるところに、どんな願いでも叶えてくれる不思議な唄を奏でる楽器がありました。
その楽器の力で、この国の人々はとても平和で幸福な生活を送っていました。
人々はこの楽器を、決して悪用させてはならないと、長い時代に渡って守り続けてきました。
ところがある日、突如現れた悪い魔術師の手によって、楽器は持ち去られてしまいました。
魔術師は楽器に言いました。
「私に、この世の全てを支配する力をおくれ。私はこの世界の神となるのだ!」
魔術師が楽器に触れると、楽器は唄を奏で始めました。
唄の力で、魔術師は強大な力を手に入れました。
それだけに留まらず、唄は世界中を荒廃した土地へと変え、魔術師の魔力によって生み出された魔物の群れが徘徊する暗黒の世界へと作り変えてしまったのでした。
世界の神となった魔術師は、楽器から唄を奪い取り、数多の『音の欠片』にして配下の魔物たちに与えました。楽器が奏でる『願いを叶える唄』の力によって、自分の存在が脅かされることを恐れたからです。
唄を奪われた楽器は、その日以来音を紡ぐことはなくなってしまいました。
人々は嘆き悲しみました。
魔物の脅威に怯えながら、ただ願いました。奪われた楽器と唄が、自分たちの元へ戻ってくることを。
ただひたすら、ひたすら願い続け──
そして遂に、暗黒の世界にひとつの希望の光が舞い降りました。
魔術師を倒して世界を元に戻すために旅をしているという若者が現れたのです。
「必ず、楽器と唄を取り戻してみせます」
大勢の人々の願いと希望を背負い、若者は魔術師が住むという幻の居城を目指して長い長い冒険の旅に出発したのでした──




