◆◆◆◆◆『無職』が『女子高生』とぶつかったら『ミニ四駆』をはじめる事になった件③◆◆◆◆◆
皆さん、初めて買ったミニ四駆は何でしょうか?
ちなみに私は……
一通りホウキで叩かれたあと、純香ちゃんが誤解を解いてくれてどうにかなった。
「ごめんなさい! 純香の手伝いをしてくれた方だとは知らず」
女性は、深々と頭を下げる。
「真紅さーん、お会計いいかな?」
「はーい、ちょっと待っててください」
店の中から聞こえた声に少し大きな声で答えるとレジへと向かっていった。
「それじゃ、アタシ着替えてくるから、
おねぇちゃんの手が開いたら荷物の事は聞いてみて」
そういうと、純香ちゃんは階段をかけあがっていった。
なんか、いいように扱われているような気もしないでもない。
店は閉店間際らしく、おねぇさんは、何組かのお客から代金をもらって見送っている。
店の中を見渡してみる。
テーブルが4つあるのみで喫茶店としては、こじんまりとしている。
でも、こんな時間までお客が入っているから商店街の喫茶店としては、
ぼちぼち繁盛しいるようだ。
が……オレが来たのは確か模型屋のはずだったんだけど、頭の中にたくさんの?が出てくる。
まぁ、それでも当初の目的である荷物を渡しさえすれば
一区切りだし、ここが模型店であるかどうかは、どうでも良いといえば、どうでも良い。
「これ、どこに置いたらいいです?」
レジ業務が一通り終わったのを確認して声をかける。
「えーっと、奥の扉をくぐった部屋の先にバックヤードが見えると思うんで、そこに置いてもらえればいいですよ」
そう言うとおねぇさんは、奥を指差した。
「わかりました!」
俺は、ミニ四駆のコースの箱を持ち部屋の奥へと進んでいく。
「なんじゃこりゅあ!!」
扉を開けた瞬間目に入ってきたのは、
巨大なコースだった!
高校の教室の半分くらいはあるだろうと思えるサイズの巨大なコース。
へアピンカーブにS字カーブなどなど……本物のサーキットを彷彿させる姿をしていた。
そして、その周りを囲むように、椅子と机が並んである。
喫茶店? 模型店?
うん?
???
プラモ喫茶?
「もしかして、ミニ四駆に興味があります?」
コースを見て固まっている俺に
いきなり後ろからおねぇさんが話しかけてきた。
「いや、喫茶店なのか、模型店なのか良くわからなくって」
おねぇさんの問いに、答えになっていない答えをしてしまった。
「そうですか……」
俺の答えに興味無いと捕らえてしまったのか、しょぼーん。
と、あからさまに沈んだ顔をする。
「あっ! ミニ四駆は、やってましたよ。子供の頃に
だから、よけいにびっくりしちゃって……このコースの大きさとか感動して!!」
自分でも驚くほど、必死に訂正をしてしまった。
「俺が遊んだ頃のコースなんて、ただの楕円だったのに
最近のコースって長いストレートやヘアピンカーブとかスラロームとか、こんなに複雑になってたんですね」
「そうです! 最近のお店のコースは、複雑で面白くなってるんですよ」
子供の頃にに読んだ漫画の中で出てきた巨大コースの事を思い出した。
一度はそんな巨大なコース見てみたかったんだよなぁ……
とは思ってたけど、本当にそれに近いものがこんなに近くで見られるなんて!!
まぁ、さすがに走って追いかけたりするレベルの大きさではないけど。
驚いている俺を見て、おねぇさんは俺を見るとニコッと笑った。
「それじゃ、せっかくですし、このコースで走らせてみません?
ここにあるミニ四駆の中から1台好きなのをプレゼントしますよ!」
「えっ? 良いんですか?」
「純を手伝っていただきましたし、勘違いで思いっきり叩いちゃいましたし……」
店に並べられているミニ四駆の箱。
子供の頃、600円を握りながら、どのミニ四駆を買おうかと思ってじーっと見ていた。
今もここに並んであるミニ四駆を見ると、あの当時と同じものが売っていてびっくりする。
マグナムとか、今見てもカッコイイ!
よくコースアウトした時に、コースアウトしたんじゃねぇ!
マグナムトルネードの練習だ! とか言ってたっけ……
うわ! シャイニングスコーピオンまである!!
アニメみたいに七色に光るって思ってたけどなぁ。
他には、どんなミニ四駆があるんだろう……
って、あそこにあるのって!!
アバンテだよアバンテ!!
この低い車高がカッコよかったんだよな!
おっ! そこにあるのってサンダーショットだ!
昔、持ってた!
友達がフルカウルミニ四駆使ってる中で、俺だけレーサーミニ四駆使ってたよなぁ。
って?
あれ? こんなシュッとしてたっけ?
ガンプラが、だんだんとリアルになるのと同じ感じで進化してるって事なのか?
箱を手に取ってみると、見覚えのないシャーシが目にはいってきた。
なんだこれ!? モーターが真ん中にある?
サンダーショットって、確か後ろにモーターがなかったか?
「サンダーショットmk2かぁ」
声の主を探して振り向くと、ホットパンツにTシャツとラフな格好に着替えを終えた純香ちゃんが、声をかけてきた。
「カッコよさの中にも、可愛さがあって男女問わず好まれる良いミニ四駆だよね!」
「そうだな。このミニ四駆、俺も好きだったよ」
そういえば、あのサンダーショットどうしたんだっけ?
誰かに、あげたような記憶はあるけど。
「そのマシンにします?」
「あっ、はい。それでお願いします」
久しぶりに、サンダーショットと対面か、家に帰ったら作ってみるか。
「せっかくだしさ、あたしも今から一台作るから、そのミニ四駆でレースやらない?」
「うん?」
この巨大なコースでレース?
漫画の中の世界だと思っていた巨大なこのコースで?
「無職君! それだけじゃやる気でない?」
俺が黙っているのを、勘違いしたのか
「それじゃ、負けたほうが勝ったほうからお願いをひとつ聞くっていうのでどうかな?」
という新たな提案をしてきた。
ふふふ、俺が勝ったら、あんなことやこんな事してもらうからな!!
そんな事を思いつつ、うなづいた。
私が最初に買ったのは……フォックスです!
もういっぺん欲しいなぁ……