表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

165/165

最終話 ◆◆◆◆◆『ミニ四駆』を始めたら……◆◆◆◆◆

さて、さてついに最終話です。



花火の音が響く。


皆が空を見上げる中、マリコさんはお化けボックスの中で携帯を手に持って立っていた。


「ココにいたのか」


彼女は携帯をカバンに入れると、オレの方を向いた。


「何か用か?」


「……最後のレースってどういう意味だ?」


マリナさんは、視線をそらして口を開いた。


「もうそろそろミニ四駆は潮時かなとおもって。アタシも良い大人だしね」


「なんで! 辞めるんだよ」


「知ってるだろ? 狼模型店。」


その言葉に首を立てに振る。


「アタシは、あそこの娘なんだ」


「第二次ブームの頃かな、たくさんの子供達が店に来て、

 パパやアタシたちと一緒にミニ四駆を楽しんでたんだ。

 毎日盛況でさ、また明日も来るよって……とても楽しかった。

 でも、数年もしたらブーム終わって、お店に誰も来なくなったんだ」


「それでも、パパは色々なお客さんがいつでも戻って来れるようにって色々なイベントをやって、

 どうにかこうにかお店を続けてたんだ。」


「でも、ある晩倒れてそのまま……」


「それでさ、店を閉めるって話になって……」


「その時に、なんて言えばいいんだろ……色々な気持ちがわいてきて、

 お店はアタシが絶対守るから! って約束したんだ。」


「そんな事を言ったけど、アタシの仕事もあったし、すぐに辞めれるわけでもないし

でも、レイも気持ちが同じだったらしく、店はレイが切り盛りしてくれたんだ。」


「レイは色々やってるのに、アタシは口だけで何も出来ないんだって思って」


「でも、そんな時に、ミニ四駆の第三次ブームが始まったって話を聞いて、

アタシが、いろんなレースに勝って有名になれば、皆がお店に戻って来るかなっておもったんだけど」


「優勝もできず、有名にもなれず……手段を選ばずに戦ったのにな。

 結局上手くいかなかった。追い打ちをかけるように大型店舗やネット通販が出てきて、

 店ではどんどん物が売れなくなってさ、結局店をたたむ事になったんだ。」


「まぁ、今のご時勢、小さな店が潰れるなんて事はよくある話だ。」


「これで、もうアタシに出来ることなんてないよ。」


「だから、アタシのミニ四駆は、これでおしまい。」


空を見上げながら、マリナさんがそう閉めた。


「……そっか。」


「じゃあ、今からココでレースをしよう!」


オレの言葉にマリナさんが向きなおした。


「はぁ? 今の話聞いてた?」


マリナさんの言葉を完全に無視し話を続ける。


「商店街のストレートは、まだ半分残ってる。

 ストレート一本勝負のレースだ。」


「アタシはもう辞めるって!」


「……マシン入ってるんだろ? マシンが泣くぞ。」


「マシンに愛情はないのか?」


「…………」


「分かったよ」


マリナさんとオレはマシンをカバンから取り出す。

そしてスイッチを入れた。


サンダーショットとファイヤースティンガーから

シャーーーーーーーっという軽快な音が聞こえた。


「それじゃ行くぞ!」


「レディー……ゴーー!!」


二台のマシンが一斉に走り出す。


「あっ!」


「どうした?」


「追いかけないと! 今回はカメラが無から勝敗分からない……!!」


オレが走ると同時に、マリナさんも全力で走り出す。


オレ達の前を走る2台のマシン。

マシンと人との差はどんどん広がっていく

そして2台のマシンも少しずつ差が開いていき……ゴール!


「ゼェーハァーーゼェーハァーー、っどうだった?」


「アタシの勝ちだな」


「ゼェーハァーーゼェーハァーー、それは、見てたら分かる!」


息を大きくのみ整える。

さすがにオッサンの全力疾走は力尽きる。


「そうじゃなくって、楽しかっただろ?」


「え?」


「なんか、色々理由を考えて悩んでたけど、今の気持ちを……

 どうしたいかを大切にしたほうがいいんじゃないか?」


「誰かのためとか、約束を守れなかったとか罪悪感感じてるのかもしれないけど、

 この時の楽しかったって気持ちは、ずっとずっと記憶に残るとおもう」


「狼模型で遊んだ皆も、その時のことは心に刻まれてるとはおもう……」


「その楽しかったって気持ちは、とても大切なことだから」


手にしたサンダーショットを眺めながら思い出していた事があった。


「オレの中にも大切な記憶があってさ。狼模型での記憶。」


「ある女の子と、お祭りに日に一緒にレースをしようって約束を守れなかったんだ」


「……ゴメン。」


「……覚えてたのか、子供の頃の約束なんて、よくある話だ」


「でも、あの日の思い出があったから、また本気でやろうって思えたんだ」


「だから、辞めるなんていわないで、一緒にミニ四駆やらないか?」


「……ぁ」


パァーーーン、

彼女が何かを言おうとした瞬間、大量の花火が一斉に打ちあがった。



★エピローグ


「ゼーーハァーー、ぜーはーーっーーきっ」


何で朝から走ることに、なるんだよ!

この年齢になると走ることなんてないからきっついわぁ~~。


横で走ってる若者達は元気そうだけど。


「師匠は、今年からだよなぁ」


「えっ? 何が?」


「オープンクラスだよオープンクラス!」


「あぁ、それか! これで大人とガチ勝負できるわぁ! 

自力で作ったのに、今までオヤジマシンとか言われてとったからなぁ」


その言葉に、一緒に走っていた列くんと剛くんが答える。


「師匠がジュニアからいなくなったから、オレたちの天下だぜーー!」


「おい!剛! ジュニアだって速いレーサーはいっぱいいるんだぞ!」


「今なんて、動画サイトで、いっぱいいろんなギミックの作り方広がってるし

 それを見てる作りこんでる人なんて沢山いるぞ」


列くんの言葉に頷き答える。


「そうだよなぁ、この数年でマシンの進化が、すごかったよなぁ」


「サスマシンなんて難しいギミックやれる奴いねーよ! とか思ってたら、一気に広がったしさ」


「サスが広がったと思ったら、今度はアンカー!」


「なんだそりゃっておもったよ!」


「確かにバンパーが上下に可動すれば、ジャンプからの着地時にコースに入りやすいってのは分かるし」


「それに道具だって、色々進化したよな。タイヤをキレイに成型する治具とか、

 ブレーキを決まった角度に切る治具。

 あとはブレーキの高さを確認するためのバンクチェッカーとかさ、色んなものが出てきて」


「あれを手に入れようかいっつも迷ってるんやけどなぁ。ええ値段するわぁ。バイト代で買うか悩んでまう」


と答えるは師匠。


「そういえば、師匠! 高校生になったし、純香ちゃんところでアルバイトしてるんだって?」


「シテマスヨ」


相変わらずカチコチになる師匠。


「こないだ、久々に店にいったら真紅さんが師匠の事褒めてたぞ!」


「『ひとりひとりに丁寧な接客をしてくれて、助かります』って

 あとは、純香ちゃんの方ばかり見てないで、バックヤードの作業もして欲しいって!」


「そんな事してへん!!!」


オレの言葉にそっぽを向く師匠。


「そういえば、大会のコースだって色々変わりましたよね! 

 会場ごとに、コースの内容が違うとか」


という列くんに剛くんが答えた。


「コースといえば、今の俺達みたいにマシンと一緒に走りながらやる

 ストリートミニ四駆ってのをやってる人たちがいるんだろ?」


「あれなんか楽しそうだよなぁ」


若者は元気があってヨロシ。でも……


「あれは、30超えたおっさんにはしんどすぎるわぁー」


「ここ数年で、ホント色々変わったよな。

 これからも、どんどん進化していくんだろうな……」


「おっ! ちょっと待って、今LINESに連絡がきた!」 


オレは立ち止まり、息を整えてからLINESを見る。

相変わらずかわいらしいスタンプを源さんが使ってる。


「純香ちゃんと、源さんが場所とってくれてるって!」


「とりあえず、場所は確保だな!」

「そんなことよりはやく行かないと! 受付おわりますよ!」


そうだそうだ! 急がないと!

で、俺達がどこに向かっているかというと、お察しの通りジャパンカップ2019の会場!


死にそうになりながら会場へ走り、どうにかこうにか到着!

おおよその場所は聞いてるけど、どこに居るんだーーって思いながら、あたりを見渡して


「ここですよーー!!」


と源さん大きく手を振ってた!

そして、その横には純香ちゃん。


「今年も凄い人数あつまってますねぇ」


「ホントホント!」


会場は、あいも変わらず混んでいた。

ジャパンカップの会場に来ると夏って気がするんだよな!


「それにしても、今年のコースもなかなか凄いですよね!」


「ウチの店で模擬コース作ったけど、みんなデジタルダブルドラゴンでコースアウトしてたね」


いつもながら、毎年のように車模型店では、専用のコースを準備してくれる。

テストができるって言うのはやっぱり凄くありがたい。


「確かになぁ。速度を落とせば、デジタルゾーンはクリアできるんだけど、ファントムチェンジャー登れなかったりするしなぁ」


「完走する事すら難しそうですよねぇ!」


「コースといえば、今年もお祭りでレースするのか?」


「お祭りのミニ四駆大会盛り上がったからね! 今年も二つ星さんが放送してくれるみたいだよ!」


「なんか、会長さんと色々話し込んで悪巧みしてるって、おねぇちゃんが言ってた」


「悪巧みってw。またなんか派手なことやるんだろうなあ」


あのお祭りのあと、商店街のお客さん自体はそんなに増えてはないみたいだけど

各店の店主さん達が自主的にやるきになって、少しだけど商店街に活気がでてきたみたいだ。


そんな話をしてるとトントンと肩を叩く感触。

この懐かしい感覚……振り向いたら負けな気がする!


しつこく、トントンと叩かれる。

まったく、大学生になったというのに純香ちゃんは……


って、あれ? 目の前に純香ちゃんがいる?


どういう事?


ゆっくりと振り向くと、そこには、二人の人影があった。


「にいちゃん!!」

「あっレイさん!」

列くんと剛くんが一人に寄っていく。 

「二人とも大きくなりましたね!」

「その話、会う毎に言ってるよ!」


んで、その横には……


「なんで、人が呼んでるのに何で振り向かない!」


「えっと、それは、ですねマリコさん」


「……マリナだ!」


と答えるマリナさん。あいも変わらず間違えると怒る。


「で、どうだマシンは完成したのか?」


「もちろん! この日の為に徹夜でつくった!」


マリナさんに完成したサンダーショットを、見せる。


「これで、オレが優勝する!」


「……そんなテキトウなマシンで勝てると思ってるのか?」


「優勝するのはアタシだ!」


マリナさんも、ファイヤーステインがーをオレに見せる。

相変わらずマシンは丁寧に仕上げられている。


「なら言う事はひとつだな!」


「「決勝で会おう!」」



プロット自体は、最初からほぼほぼ変わっていないのですが、

遅筆過ぎるので、なかなか書き上げるのは大変でした。

まさか3年間もかけて書くなんて思ってませんでしたよ。

毎日一定量書ける皆さんは凄いなって思います。


ほんと、ここ数年で驚くほどのペースでミニ四駆の世界も変わりましたね!

2016年のことなんてかなり忘れかけて大変でしたw

今、現在のミニ四駆事情について雰囲気が伝われば幸いです。


また何か書きたくなったら書きます。

みなさんの、楽しいミニ四駆ライフがこれからも続きますように。

2019/07/19 PEN


簡単な感想でも頂けると、うれしいです↓

https://novelcom.syosetu.com/impression/list/ncode/865625/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ