変えていく日常
神様が教えてくれることは大きく分けて3つだそうだ。
1つ、この世界の全ての言語。
この世界には、人族・魔族・獣族・機械族の4つの種族が存在していて、それぞれ大陸を持っているらしい。
一ヶ月後、きっと行くことになるだろうからとしっかり教えてくれるそうだ。
2つ、この世界の通貨。
この世界では、魔族以外が全て同じ通貨で物が売買されているらしい。
魔族は大陸を持っていても、いくつかの派閥に別れていて、
それぞれの派閥によって価値観が変わったり、
場所によっては物々交換だったりするらしい。
3つ、この世界の基本常識。
この世界の挨拶や、宗教、各種族の戦力など、
ここから出ても大丈夫なようにある程度教えてくれるらしい。
以上、3つ全てを一ヶ月で教えるらしい。内容的にかなりハードになりそうだ。
主に言語がやばそう。
俺は前の世界で英語が1番苦手だったからそうとうしんどいことになりそうだ。
それにしんどいことは他にもある、いじめだ。
教えてくれるということは、授業というわけで、授業ということは、成績が必然的についてくる。
神様が成績をつけようとしなくても、できるできないで勝手についてしまう。
やはりいじめられるだろう。
神様がいるから表立っていじめて来ないだろうが、確実にいじめてくると思う。
気をつけてこれから一ヶ月生活しなければ、確実に殺される。
頭の中でこれからの事を考えていると神様が入って来た。
ちなみに、今俺達がいるのは部屋がある2階ではなく、1階の授業室。
かなりの広さで、全員が入っても余裕があり、ひろびろと勉強出来そうだ。
「ハロ~皆おはよ~う。
明日から集合時間は7時、解散時間が夜の9時ね~遅れた人は厳し~い罰ゲームがあるから気をつけてね。
それじゃぁこれから第1時限目をはじめま〜す!」
神様がそう言うと天使達が数人(昨日の天使もいた)入って来て、教科書のような物を5冊持って来た。
「それじゃぁ、はじめるよ~。言い忘れたけど、この本全部覚えてもらうまでステータスの閲覧の禁止、技能の使用も禁止僕に対する質問も禁止させてもらいま~す」
まじか!?この本全部?そんなの無理に決まってるだろ!
これ1冊何ページあるんだよ?国語辞典くらい分厚いぞ?
それでも、やらないと知りたい事が知れないから俺は必死に勉強した。
周りの奴らはどんどんこの世界の知識を吸収して、2週間で全て覚えてしまった。
俺はまだ3分の2覚えたぐらいで、全然できていない。
必死に頑張ってもこの程度だと自分でも笑えてくる。あいつらどんだけ頭いいんだよ。
いじめも当然続いていて、前程ではないが暴力も受けていた。
それから2週間、やっと全部覚え切り、神様に質問するところまでやって来た。
「いや~君おそいね~、そうとう頭悪いでしょ?皆2週間前に全部覚えて、戦闘訓練やってるよ」
いくらムカつく事を言われても、相手は神様だ。
もし機嫌を損ねたりでもしたらあいつみたいに細切れになってしまう...
ここは何を言われても我慢して敬語で話す事にする。
「はぁ、すいません...」
「まぁ、いいけどさ!それで?僕に質問あるんでしょ?」
「はい。質問は全部で4つあります。」
「1つずつにしてね~」
神様は笑いながら話す
「では、1つ目。
何もしなくてもLvが上がったのはなぜですか?」
「君は、ド○○エとか、F○とかやったことある?」
以外と俗世に浸かってるな...この神様
「ありますよ?」
「どっちのゲームも、敵を倒すと経験値が入るじゃん?で、一定以上経験値が貯まるとLvが上がるでしょ?」
「はい」
「でもねこの世界は少し違うんだ...経験値が貯まるとLvが上がるところは変わらないんだけど、
筋トレをしたり今までしてこなかった事をしたりと、とりあえず頑張れば経験値が入るんだ」
つまり、頑張って筋トレしたり新しい事にチャレンジしたりして、経験を積めばLvは上がるってことか...
「それじゃ俺に経験値が入ったのは...」
「そう、天使と会話して友達になったからじゃない?」
「は?友達?」
「え?違うの?だってあの子...ラファエルっていうんだけど...君の事そうとう気に入ってるよ?」
「いやでも、ちょっと会話したくらいですよ?しかも、向こうは一言も話してないし。むしろ、嫌われてんじゃないすか?」
「君どんなお願いした?」
「何か飲み物くれませんか?ってお願いしましたよ?ちゃんとお礼も言いましたし」
そう言うと、神様はとても驚いた顔をしてこう言った。
「それは、驚いた。君の周りの子はね、当たり前のようにお礼を言わないし。
男子なんて口にできない「ピーー」や「ピーー」を要求する子がいてね?
君達の要求はできる限り叶えてあげてって言ってあったらから、いい子な天使ちゃん達はいうことを聞いちゃったらしいんだよ...」
「うっわ...」
あいつら本当にクズだな...
「で、天使達の間では君達はゴミクズ以下の評価だったんだよ」
「ゴミクズ……」
「そんな状況で、普通の頼み事をして、しっかりお礼も言える子がいるってわかったら、どうなると思う?」
「そりゃぁ、評価が跳ね上がるでしょうね」
「そう、まさしくそうなったのさ...」
「それで、加護も貰えたのか...」
「ちなみに天使は、一人一人マンツーマンでついてもらっていたから、今も君の担当にして欲しいって言ってくるよ」
「マジすか?思わぬところでモテ期(?)がやってきたなぁ。ていうか、今ので聞きたいことほとんど終わりましたよ?
あとは、固有技能についてとかだけですよ?」
「固有技能?そんなの簡単だよ。読んで時のまま、固有の技能だよ、世界中に1つしかない技能。」
「よくネタ尽きませんね...」
「保有者が死ぬと、ランダムでこれから産まれてくる子供に采配されるからね。手抜きじゃないよ?」
「そうですか...デメリットとかあります?」
「あるよ~基本的には、HPやMPが減るね」
なるほど、使う時は気をつけなきゃな
「最後にひとつ、技能や魔法もLvが上がるって言ってましたよね?」
「うん」
「固有技能のLvも上がるんですか?」
急に神様の様子が変わった。面白いおもちゃを見つけたみたいにスッと目を細めニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「お~、君鋭いね~。でも、ちょっと惜しいね。固有技能のLvは上がらないよ」
「そっすか...」
「そうがっかりしないでよ、Lvは上がらないけど進化するからさ~」
「進化?」
「そう進化。君の固有技能「略奪者」って者でしょ?」
「はい」
「それが、者→王→神って具合に進化するからね。ま~、神まで行く人はほとんどいないけどね」
「他には?」
「え...?」
「ですから、他には無いんですか?」
「つまり僕が何か隠してるってこと?」
「ええ、だって、神様さっきから雰囲気がぜんぜん違いますもん」
俺の言葉を聞いた途端、神様は突然ポーズを決めてこう言った。
「...ばれちゃァ仕方ない!本当の事を話そうじゃないか!」
「なんすか、そのキャラ...」
「まあまあ、そんなどうでもいいこと置いといてさ、話をききなさいって」
あんたさっきまで、隠してたじゃないか...
神様をジト目で睨んでいると、そんなことはどこ吹く風なのか、勝手に話し出した。
「実は、固有技能は、君自身のLvが上がるとできる事が増えるんだ。」
「すいません、もっとわかりやすくお願いします」
「まぁ、Lv上げればわかることだから。この情報を聞けただけでも収穫だと思ってよ」
あ、この神様、めんどくさくなって投げ出しやがった。
こうなったら、自分でやるしかないか...
「そうですか...ありがとうございました」
深々と一礼をする。色々な事を教えてくれたんだから、当然のことだ。
「いいよいいよ。今教えた事なんて、ほとんど例外だらけだから、それじゃぁこれから頑張ってね~あと3日だよ?僕がここにいるの」
例外だらけなのか...
「そうですね...あと3日よろしくお願いしますね」
「うん、よろしくね~。それと人を簡単に信じちゃいけないよ?」
...なんか、最後の言葉がやけに引っかかるな。人を簡単に信じるな、か...どういう意味だろうか...
ええい、めんどくさくなってきた、また今度考えよう。
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神様と別れて自分の部屋に戻って来た俺は、さっそくこれからなにをするのか考えた
「あと3日か~。神様がいるのは...」
神様が居なくなるのはあと3日、神様がいなくなってしまうと俺に対するいじめが再開されてしまう。
最悪逃げる前に殺されてしまうかもしれない。
「そうならないためには、筋トレとか頑張らなきゃな~。それでも3日でLvはどれくらい上がるか...」
どうしても死にたくない俺は、これから努力する事を誓った。






