表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホームレス王子  作者: 斉凛
元王子のジョブチェンジ
7/32

「お買い得品が安いとは限らない。広告の品が狙い目だな」


 私はスーパーでどの食材が安いか念入りに選んでいた。今日の夜の献立や、無駄な食材を買わないように吟味していたのだ。

 初めの頃は色々買いすぎて、食べきれずに食材を無駄にしたり、いらない物まで余計に買ってしまって出費が増えたりしたが、今では節約レシピでそこそこ美味しい料理を作れるようになった。

 大進歩ではないだろうか。


「エドまた腕を上げたわね。美味しい! この鯖味噌も細かい所で差がでるのよね」

「明から京殿の好物と聞いていたから、それは一番力をいれて作った」


「いやーん。嬉しい。仕事の後にイケメンの作る、美味しい手料理。癒される」


 京殿は嬉しそうに、他にも好物について語ったので、それを記憶して明日の夕食の献立を考え始めた。


「何考えてるの?」

「いや……。明日の夕食に京殿の好物をつくろうと……」


「食事の最中に、すでに次の食事の事を考えるなんて、主夫ね! もういっそ仕事なんてしないで主夫になっちゃえば。明が働いて稼げばいいじゃない」


 京殿の言葉がぐさりとささる。家事というのも重要な仕事だ。やり始めれば色々と大変なのがわかる。

 ワイドショーの料理講座や、ネットで調べた掃除のまめ知識、洗濯物の正しい干し方。

 色々工夫のしがいがあって、できる限り金を使わずに、いかに家事をこなすか。やってみると面白い。


 だが、しかし!


 男として女に養われて暮らすのは、やはり気持ち的によくない。これはプライドの問題だ。明のために甲斐性のある男になりたい。

 とはいうものの、仕事どころか、身分証の問題一つ解決しそうにないのだが。


「ねえ。金曜日も暇でしょう。合コンに来てよ」

「合コン?」


「まあ……飲み会よ。たまには飲みに言ってもいいじゃない」


 確かにこちらに来て飲みにいった事は無い。たまに京殿の晩酌の付き合いで、ビール一缶くらいか。けっこう飲める口としては、少し物足りなくもあった。しかし……。


「なんだか嫌な予感がする……。ちょっと調べさせてもらう」


 そう言って伝家の宝刀・グーグルで「合コン」と検索。京殿がなぜか止めるが無視した。

 そして調べた所、合コンは恋人が欲しい男女が出会う為の飲み会だとわかった。


「京殿……私には明という恋人がいる。合コンにはいきたくない」

「男のメンツが足りないのよ。イケメンがくるって女子には話しちゃって、もう皆乗り気だし。ねえ……別に浮気するわけでもなし、ただ飲みに行くだけなんだから。そんなに難しく考えなくても……」


「……」


 私は無言で拒否を貫いた。明は夏休みの課題で忙しく、最近会っていない。そんな間に合コンにいっていたと知ったら、傷つくかもしれない。絶対に嫌だ。

 しばらく京殿の説得は続いたが、私は無言で抵抗を続けた。すると京殿は、むすっと不機嫌な表情になる。こういう表情も明によく似ている。

 そしてしばらくして凄く意地の悪い笑みを浮かべた。この表情。明と同じで何かよくない事を思いついた時の表情だ。


「明に嫌われるのが嫌なら、明の了解がでれば良いのよね♪」

「な! そういう事では」


 京殿はすぐに携帯で明に連絡した。しばらくなにか話していたが、声のトーンで京殿の機嫌が良くなったのはわかった。


「明はOKだって。これで文句ないでしょう。参加してね。大丈夫参加費はだすから。家主の命令よ」


 こう言われては首を縦にふるしか無かった。恐らく明も私を京殿の家に住まわせてもらってるから、断りづらかったのだろう。

 飲み会と言っても、気が重い。


「あ……明からの伝言。女の人にお持ち帰りされちゃダメだよ。ですって」

「お持ち帰り……?」


「ああ……飲んだ勢いで二人きり……ね」


 京殿の含み笑いでだいたい察しがついた。


「そんな事するか……」

「エドは明にメロメロだものね」


 やはり明も心配してるんじゃないか。きっと次に明に会った時が大変だな。

 そこまで考えてふと思いついた。


「京殿。合コンに行く代わりに、一つお願いしたい」

「何?」


「今度明に手料理を振る舞いたい。できるだけ豪華な料理を。場所と食材費の提供をお願いできるだろうか?」

「あら……その豪華な食事、私も食べてみたいな♪」


 できれば明と二人きりの方が嬉しいのだが……さすがに家主にでていけと言えないか。


「わかってるわよ。私は外食してくるから、二人でのんびり食べてなさい」


 京殿は察してくれたらしい。ほっと一安心しつつ、明の喜ぶ食事の献立を考えて、合コンという面倒事を忘れる事にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ