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ここから閑話休題。
せっかくのカップルなので、いちゃいちゃ回も作ってみました。
「新しい仕事見つかったの! おめでとうエド!!」
大はしゃぎで明が笑う姿を見るとほっとする。ずっと心配かけていたから、これで少しは安心してもらえるかもしれない。
「待遇もとてもいいんだ。寮があって住み込める。京殿の家を出て自活できるんだ」
寮と言っても、狭い部屋を数人で使うような状態で、寝るスペース以外にほとんど個人スペースはないくらい。同じ部屋の同僚もどこか違う国の人間らしく、時々知らない国の言葉を話している。
根性はありそうだが、信用できなさそうな人間もいた。だが……そんな話をしたら、明が心配しそうだったから内緒にしておこう。
寮生活が始まる。少ない給料で新生活に必要な買い出しが必要になる。大きな家電や家具は、前にいた人の残していった物があるから良いのだが、生活に必要な雑貨類も多い。
あまり出費はしたくないのだが……と悩んでいたら、明が良い事を教えてくれた。
「じゃあ、100均行こう」
「ヒャッキン?」
「何でも100円で買えるお店。結構色んな雑貨があるし、とりあえず必要な物は揃うんじゃないかな? 一緒に買い物行こうよ。買い物デート。楽しいよ」
明が嬉しそうに笑う姿を見るのが嬉しい。それに自分の買い物に付き合うといっても、デートと言われれば嬉しい。
「そうだな。楽しみだ」
明に案内された店には、ぎっしりと品が詰め込まれており、本当に何でもあった。
「これが……全部100円なのか?」
「正確には消費税は別だけど、全部同じ値段だよ」
凄い……あれも、これも、欲しい物がたくさんだが、どれも100円といわれれば、安心して、どんどん買いたくなってくる。必要ない物まで……。
これがこの店の魔法かもしれない。
ついつい余計な物まで買わないように気をつけねば。
「ずいぶん買うね」
ぎっしり入った籠の中身を見て明がびっくりしてる。
「大丈夫だ。ちゃんと計算して、財布に余裕はある。色々必要な物が多いからな」
「重くない? 一度に買わなくてもまた買いにくれば良いのに」
「そうだな。生活を初めて、また足りない物が出てきたら買いに来よう。ついでに明も欲しい物とかないか?」
「……ん? 欲しいもの?」
明がうろうろ歩き始めたので一緒についていく。女性向けの雑貨が揃っている所で立ち止まり、じっくり眺めてる。
「あ……これ可愛い」
明が手に取ったのは、花の飾りがついた髪留めだった。明がつけたら可愛いだろう。
「じゃあこれも一緒だな」
そう言って明の手からとって籠の中に入れる。そのままレジへと向かった。
「ちょっと……エド」
「ん? これが欲しかったのだろう? 一緒に買うから大丈夫だ」
「……買ってくれるの? ……嬉しい。ありがとう」
明はわずか100円の髪留めで、とても嬉しそうに笑った。こんなささやかな物でも喜んでくれる、明が愛おしいと思った。
レジを終えてずっしりと重い買い物袋から、髪留めを取り出して明に渡す。明は宝物のように嬉しそうに受け取った。
「嬉しいな!」
「そんなに喜ぶ事でもないと思うぞ」
「そんな事ないよ。だってエドが初めてプレゼントしてくれたんだもん。宝物」
明にそう言われて、さーっと血の気が引いた。そういえばこの世界に来て、金が無いから、恋人の明に贈り物一つした事がなかった。しかも初めての贈り物がこんな安物……。
「それはなかった事にしてくれ。今度はもっと良い物を買うから」
明の手から髪留めを取り返そうとするが、するりと逃げて距離をとる。
「ダメ。返さない。もう貰ったもん」
明がイタズラっぽく笑う姿に大きくため息をつきつつ、まだまだ甲斐性がない自分に落ち込む。情けない贈り物の挽回をしようと……食事に誘ったのだが……。
「本当にここでいいのか? もうちょっといい店でも奢ったのに……」
明は大きな口でハンバーガーにかぶりついて笑ってた。ここはただのファーストフードのハンバーガー屋。しかも明が選んだのはセットでワンコインの安いものだった。
「だってエドだってお金あんまりないし、これから出費も多いし、無駄遣いしちゃダメだよ。それに……私ハンバーガー好きだしいいんだもん。エドが初めて奢ってくれるんだし。それだけで嬉しいの」
なんというか……明は年の割にしっかりしすぎな気がする。この国は平和で、明と同じくらいの女子高生といわれる少女らはもっと幼い顔をしている。突然の異世界でも生き抜いた明は特別なのかもしれない。
「次は……もっと稼いで良いものを奢る」
「うん。楽しみにしてる。そうだ……クリスマスデートしよ」
「クリスマス?」
「調べておいてね」
明に言われて頷いた。帰ったら京殿にパソコン借りて調べておこう。クリスマスデートというのはもっと良い店に連れて行く。そしていつか自力でもっと稼いで、明が驚くほどの贈り物をしよう。そう心に固く誓った。




