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鏡の中の優先順位

この作品には〔残酷描写〕が含まれています。

この作品には〔妄想・想像〕が含まれています。

文章も意味不明な点が多々あります。

苦手な方はご注意ください。

朝の満員電車ほど辛いものはない。

目的地までは家畜のように箱詰めされ、奴隷のように立たされる。

その中でも僕は運が良い。

まだ人が混み合う前に座席に着くことができるのだから。

今日もいつものように、車両の連結部分の近くである、一番端のいつもの席に座った。

電車が発車すると、駅を迎える度に人が増えていく、増えていく。車内はあっという間に満員になってしまった。

立ち尽くす人々の苦痛に歪む顔を見て、優越感に浸っていると、急に右隣の扉が開いた。隣の車両へ移るための扉だ。

着物をきた老婆だ。

窮屈な空間を、わずかな隙間を見つけて車内へ入り込んでいく。そして、僕の対面の席のほうへ向かっていき、やがて人ごみに消えていった。

あちらは確か、優先席だ。誰かが譲ってくれると思っているのだろう。

しかし、この状況で席を譲る人がいるだろうか。優先席とはいえ、この状況では誰もが優先したい席だ。老若男女は関係ない。やがては、こちらの席にも目星をつけてくるだろう。

思ったとおり、老婆はこちら側の席に来た。

席に座っている面々は老婆と目を合わせまいと、顔を伏せる。僕も当然、そうした。


「え―――――。」


なぜか、老婆と目が合う。正しくは、顔を下から覗きこまれている。

大きな黒目と、分厚い赤い唇。鼻を線香の香りがつく。

なんだ。なんなんだ。


「あ、あの、良かったら、ここ、僕は……。」


そう言いながら、席を立って、逃げるように扉を開ける。

連結部分の蛇腹の空間に入り込む。

くそ。席をとられてしまった。駅まではまだ遠い。

引き返すのもばつが悪いので、そのまま隣の車両へ移ろうとして、止まった。

連結部分の扉には車内を見ることができる窓がついている。

その窓の向こうでも、座席が満員だった。しかし、誰一人立ってはいない。座席だけが人々に埋め尽くされていた。異様な光景だ。

夕陽が射しこむ、その車内に一人の老婆がゆっくりと歩きまわっている。

夕陽……?今は朝のはずだ。それに、あれは、さっきの老婆じゃないか?

老婆は座席の派手なピンク色のスーツを着た女性に向かうと、どこからか、金づちとテントを張るときに使うような杭を取り出した。

そして、腰を屈めると、その座っている女性の、曲げられた膝もとへ狙いをつけて、杭を打ち付けた。

金属同士を叩きつける音が頭に響く。一度、二度、三度。

痛々しい光景だが、目を離すことができない。

女性は痛がる様子もなく、死んでいるように、目を瞑ったままだ。

片方の膝に杭が埋まる頃には、老婆はもう片方の膝へ杭を打ち付けていた。

そして、今度は隣の男性へ同じ行動を繰り返す。

次々に。平等的に、優先的に。

一しきり終えたあと、老婆は、一番端の座席に向かい、座った。そこの座席だけが空いていた。

嫌な予感がして振り向いた。後ろの車内は変わらずに満員だ。しかし扉近くの席だけが空いている。

さっきまで僕が座っていた席だ。その座席だけが誰かのもののように、誰も座ろうとしない。

身体が震え、呼吸が荒くなる。

そして、またあの金属の音が響くと、僕はそこから一歩も動けなくなってしまった。


連結部分ってなんかいいですよね。

不思議な空間というか、何もなさそうで何かありそうな。


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