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ウエストルム・キングダム  作者: 楠木あいら
ロボットの遊園地
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遊園地の夜

「アネシィちゃんの、面目まるつぶれよぉ」

 その事件も一通り処理できた夜。アネシスは向かい合わせに座り、とりあえず話してくれた。

 ここは遊園地内にある宿泊施設。おじさんか、エムカさんかはわからないけれど手配してくれた部屋は、落ち着いた色合いの家具がおかれた、高級感のある部屋だった。スイートルームと最安値の真ん中になると思う。それなりの気配りをしてくれて嬉しかった。

「部下ロボットに何かあった時、かならず信号を発信して異常を知らせられるのに、それすらなく。今頃になって、それも捜した末に見つかったのよぉ」

 アネシスが成人女性ならば、その手にアルコールが握られていた事だろう…。

「それに気づかないで呑気にエムカ-03421のプレートをしたシュクシャを捜してたなんて、情けないにもほどがあるっていうもんよぉ」

「アネシス、本当に飲んでないだろうな?」

「しかも、一体のロボットを守れなかったし。セキュリティロボットの指揮者として…あーもう、ボスになんて報告すればいいのよぉ」

「アネシス。君の気持ちは良くわかった。わかったから、俺から離れてくれ」

 アネシスは、俺に抱きついた状態で話してくれた。

「だって、順谷ってエムカみたいに温かくて、落ち着くんだもん」

「俺は落ち着けないんだ」

 アネシスも冷たい体をしているが柔らかさは人間と変わらず…とにかく離れてもらったが、元来、人懐っこい性分であるため、そんなに離れてくれなかったけれども。

 アネシスの失敗により、おじさんの機嫌は悪い方向に進み、エムカさんからもストップがかかった。会えない事にほっとしてしまう。

「でも、大丈夫だからね、順谷」

「何がだい?」

「今日はアネシスが自ら順谷の見張りになるから。2度とシュクシャに連れ去られることはないから」

「見張りってアネシス。夜は充電時間になるって言ってたじゃないか」

「大丈夫、エネルギーパックがあるから」

「そういってもなぁ。アネシスが見張りしている所で呑気に寝られないよ」

 ロボットとはいえ人と変わらない娘が頑張っているのに、気にせず寝られる無情な人間ではない。

「大丈夫だよ。順谷がぐっすり眠られるように、アネシスは静かにしているから。もし順谷の寝相が悪くて蒲団がずれたらアネシスがちゃんと戻してあげる」

「ちょっと待て。部屋の中で見張りをするつもりなのか」

 部屋の外で見張りさせる気はないが、部屋の中はもっとない。俺には『男の性分』が抜け切らない以上は、危険すぎる。

「アーネーシス。どこに消えたかと思ったら」

 ノックする音と共に現れたのはエムカだった。

 つかつかと歩み寄ってきたエムカはアネシスを猫の子のように首の後ろから掴んだ。

「やーん。エムカ離してよ。アネシスは順谷の警備に当たるって、ボスに伝えて」

「そういうわけにはいかないのよ。ボスは『エネルギーパックに頼ることなく十分な休息をとれ』って命令がきているんだからね。もちろん、今回の報告も忘れずに」

「それが嫌なのぉ~」

「聞き分けのない子供じゃないんだから。私からもフォローするから」

「…………」

 アネシスは、大人しくなった。

 とりあえず、助かった。

「じゃあ、順谷さん。お騒がせしました」

「おやすみ~順谷」

 アネシスは、そう言ったものの、その目は明かに『できれば、止めてほしいなぁ』と訴えていた。後ろめたいがわからない振りをした…すまん、アネシス。


「ピピピッ 」

 それから数分して、エムカが渡してくれた敷地内で使える携帯がメールの受信を告げた。

 宛名はエムカさんのものだった。

 とりあえず、アネシスの報告が無事に終わったことと。

 ロボットの事について。


 ロボットとはいえ、コマンダーレベルとなれば、心、精神的に左右される事が多くなります。人のようにに考え、行動していきます。

 特にアネシスは、人の痛みを知らなければならない(直前まで)看護ロボットとして作られていったもの。

 人、ボスのために働く事に喜びを持ち、自分の存在を知り。

 逆に、見放されることにより、不安、恐れを感じ取れます。

 ロボットは人を守るためならば自分を滅ぼしても苦と思いませんが、自分が役にたたず捨てられることをもっとも恐れています。同じ廃棄処分でありながらも。悲しい存在ですね。

 ロボットは、ロボットなのです。

 同じ型として出来上がったソシエゴよりも感受性が強いでしょう。

 だからこそ、順谷さんの所に逃げるという手立てを思いついたのです。


 アネシスの行動についてだった。

 確かに、アネシスはロボットなのにもかかわらず、人に抱きついて愚痴を言うのはロボットにはない行動でしかなかった。

「人に近い存在か…」

 とはいえ、アネシスはロボットだった。

 人に仕えることに喜びを持ち、役に立たないことを恐れる。

「ロボットはロボット…」

 エムカさんが書いた、その言葉が頭に引っかかって離れなかった。

 人以上に力を持つのにもかかわらず、人に左右される存在なんて…。

「俺は…どうなんだろう」

 思わず口にしてしまったことに、ぞっとしてしまった…。



 順谷へ

 選択は、お前にある。

 もし、この門をくぐる気があるならば、お前を王子として認めよう。


 おじさんからもらって手紙の一文に、そう書いてあった。

 でも、おじさん。俺に選択の余地なんてあるのでしょうか?


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