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ウエストルム・キングダム  作者: 楠木あいら
ロボットの遊園地
3/26

JBVS

「お食事中、失礼します」

 現れた影は二人いた…いや2体かな。

 さっきの運び屋と変わらない外見年齢になるんだけれども、今度の二人は明かに違う空気を持っていた。

「ふんふん。あなたが順谷?」

 2人とも体格や大まかな顔形は変わらないのに、赤い警備員の制服を着た子は人懐っこそうな顔を間近に近づけて、好奇心の目を向けた。

「姉さん…失礼のないようにと、あれほど言ったじゃないですか」

 水色のマントを羽織った大人しそうな子は、慌てて姉ロボットを後ろにさげせたものの、好奇心の目は向けたままだった。

「でも、ボスは好きなように順谷と接しなさいって言ってたじゃないの」

「限度があります。

 すみません…うちの姉が無礼な行為を働いて」

「いや、別に」

「気にしてないっているじゃない。それに、そっしぃの敬語使いまくりの方が順谷との距離を離しているわよ」

 姉さんロボットの発言は以外と的を射ってたりする。

「でも、無理です。これが僕にプログラムされた、人との接し方なのですから」

 長い三つ編みをした大人しそうな子けれども、男らしい。

「2人とも、言い争いは順谷さんに自己紹介終えてからにしてちょうだい」

 エムカの的確な言葉に、二人のロボットは改めて一礼した。

「初めまして、順谷。私はセキュリティのコマンダーロボットアネシスで、こっちが弟のそっしぃ」

「…ソシエゴと申します。衛生のコマンダーロボットです」

「衛生というと、飲食店とかの取り締まりとか、やっているのかい?」

「はい。衛生、健康に関する事、すべてを担当しております。飲食店の検査やお客様及びロボットの看護、修復作業。園内の清掃など」

「今日は、2人が案内します」

「え。エムカは?それにロボットを指揮するロボットなのに、仕事の方は大丈夫なのかい?」

「エムカは、ボスに頼まれた仕事が山のようにあるの」

 アネシスは大きなため息をつき、弟は次の質問に答えてくれた。

「コマンダーと呼ばれるロボットは、ただ指揮するだけの存在。通常業務は二桁ナンバーのロボットが動いていますので」

「朝の命令以外、暇なのよね~まあ、アネシスは、遊べるからいいけれども」

「そうなんだ」

 返答したところで、エムカが謝罪しながら立ち上がった。

「お食事中の所、席をたってすみませんが、どうしても行かなければならないので」

 そういうと、エムカさんはそそくさと店を後にした。

「エムカは、ボスのお気に入りだからね、大変なの」

 エムカの座っていた席にどっかりと座ったアネシスは、簡単に説明してくれた。

「まあ、エムカのおかげで、僕たちも助かっていますけれど」

「助かっているって?」

「順谷には、こっそり言っちゃうけれども。最近のボス、気むずかしくなってね。ボスの下で働くロボットとはいえ、ちょ~っと、ね」

 ロボットも色々大変らしい…。

 いつかは、あいさつしに行かなければならない者にとって、不安が増してきた。


 エスカレーターの扉が開くと、いつものコマンダーたちの集い場兼朝の切り替えプログラム実効場所にエムカは到着した。

「楽しそうなことしているわね」

 奥の寝椅子から一歩も離れないスィージィは、起き上がることも、振り向くこともなく同僚に聞いた。

 スィージィ

 寝椅子に預けるその体には。他のロボットと比べものにならない精密なデーター処理装置が備えられていた。

 あまりにも精密で、ほっそとりした体から思えないほどの重量により、自由に動くこともできなかった。

 しかし、彼女も人に作られたロボットであり、動けない事に苦痛は感じることはなく、彼女に送られてくる大量のデーターを処理していった。

 ロボットにとって苦痛は自分の力が発揮できないことであり、発揮できず、鉄屑になること。スィージィも同じ概念を持っていた。

「眠り姫が、こんな時間に起きているなんて珍しいわね」

 プログラムを処理、実行する時、その目は閉じられており、仲間の中からそう呼ばれるようになった。

「まあね。ところで、眠り姫。順谷さんたちはどこにいるの?」

 しかし、本体が眠りに着いていても、中身は眠ることなく。王国内の情報収集するスィージィほど物知りなロボットはいなかった。

「絶叫ものの『断末BOX』よ。

 それはそうと、エムカ。ボスから、例の企画、早く実行しさないってメールで届いたわよ」

「JBVSね」

「JBVS?」

「順谷さんを(J)びっくりさせて(B)ウエストルム(Vラテン語でVESTRUMになるから)仕組みを(S)わかってもらおう企画」

「…。わかりやすいわね」

 スィージィは一度、口を閉ざした。

「という事は。ボスは順谷さんを後継者に決めている事なのかしら」

「ボスからは何も聞いていないけれども。候補にあがっている、と推測できるわね。

 ロボットは、ボスが決めたことに従うだけの存在。変わったら、それに応じるだけのもの」

「そうね」

 会話終了と判断したスィージィは目を閉じた。

 仲間が目を閉じたと判断したエムカは、視線を部屋奥から離した。

「…。後継者が決まる。これで、よどんでいた空間に風が流れるのね」

 エムカは、聞いていないかも知れない仲間に言葉を残し、先に進んだ。


 一方

「大丈夫ですか?」

 衛生管理のロボット、ソシエゴは順谷を不安げに見下ろし尋ねたものの、ベンチに横たえる俺は手を横に手って答えた。

「ほらぁ。やっぱり、姉さんのお任せコースに問題があったんですよ」

 アネシスの『お任せコース』とは

 カメレオンの舌

 断末BOX

 と、後ろにそびえ立つ、バンジーコースター

 名前の通り、どれも高速で動く絶叫ものしかなかった。

 高校生になってから行くこともなかった者にとって、いきなりそれらを体験したら、どうなるか…おわかりでしょう。

「…………」

「順谷さん。お顔の色が悪いですよ。一度、ホテルで休まれた方が」

「いや。休んでいれば大丈夫だよ。それよりも、気になっていることがあってね」

 俺は改めて2人を交互に見つめた。

 見れば見るほど疑問がでてくる、この2人。

「順谷、もしかしてアネシスとそっしぃの秘密じゃない?」

「秘密って、やっぱり何かあるんだ」

「秘密?何のことです?」

 何のことか分からないソシエゴはきょとんとしていたけれども、アネシスは俺の疑問に気づいてくれていた。

「順谷は、どうして、明るく元気なアネシスが警備で。地味なソシエゴが衛生担当のコマンダーロボットなのか。って事でしょ」

「ああ。男女の差がなくなったとはいえ。警備が女性で衛生が男っていうのは…疑問になっていたよ」

 俺は改めてアネシスの派手な警備服を見つめた。

「順谷の言う通りだよ。本当はアネシスちゃんが衛生でそっしぃが警備になるはずだったんだ」

「直前まで、そうだったんですが…僕たちの顔を見たボスの一言で変わってし待つんです」

「え…おじさんの一言で」

「はい。ボスの命令は絶対ですから」

「………」

 絶対厳守するロボットとはいえ、そんなわがままが通用する叔父さんに感嘆してしまう。

 まあ虫も殺さないような優しい顔をしたソシエゴと元気いっぱい…元気過ぎるアネシスでは、変更したくなねのは無理もないけれど。

「でも、赤い制服はアネシスだけだよ」

 俺の視線に気づいていたアネシスは、念のためにと教えてくれた。

 元気いっぱいのアネシスが急変したのは、その直後だった。

 それはソシエゴも同じ…いや、少々戸惑った顔をしていた。

「…2人ともどう…」

 問いかける前に前方から黒い風が現れたと思いきや、自分の体がふわりと浮き上がった。

「え、なっ、おい…」

 突然現れたロボットに持ち上げられたと気づいたときにはもう、2体の姉弟ロボットは下の方に小さくなっていた。

 その光景を目の当りにした2人は驚いた表情わていたものの、動く気配はなく館がるの様に飛び上がっていく1人と1体を眺めているだけであった。

「おたっゃで~」

「こら、そっしぃ。手なんか振ったら順谷にバレるでしょ」

 呑気に手を振る弟の手をさげてから、アネシスは口を一度閉ざしてから大きく開いた。

『アネシス-1が命令する。

 活動しているすべてのセキュリティロボットは、エムカー00372を見つけ出し、報告と追跡を開始するように』

 プログラミング言語に訳した言葉は、アネシスの体内に組み込まれている携帯のメール機能で送信した。

 アネシスの命令は、ウエストルム・キングダム敷地内にある収容局に一旦送られ、そこから複数にコピーされてアネシスが管轄するロボットたちだけに送信されていく。

「送信完了」

 ロボットだから出来ること。

「さて、さっそくエムカが指定したA地点へれっごーよ、そっしぃ」

 体内に組み込まれている携帯電話機能は、もちろん電話として役割も備えている。

「あ、エムカ。今、無事に連れ去れたところだよ」

 頭の中でエムカの声が届いたアネシスは声を出して、相手に返答した。

「姉さん…。見えない相手に声を出して返答すると、変に見られますよ」

 回りの目を気にするソシエゴに注意され、アネシスは口を閉ざし、頭野中で声を放った。

『で、今からA地点に向かうからね』

『え?どういう事?』

「え?」

 閉ざしていたはずの口から疑問の声が出た。

『今からJBVS企画をはじめるところよ。アネシス達が、どこらへんにいるのか聞こうと思って電話したんだけれども』

「…え。ちょっと待ってよ。じゃあ、今、順谷をつれていったロボットは?」

 … … …

 答えは簡単。

 本当に連れ去られた…。

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