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戴冠式


 外側から見ると、どういう風に見えるのだろう。

 バッテレインが普通に動いているようにしか見えないのだろうかな。

 その中にいる俺も、いつものように歩いていた。

 何1つ違和感を感じない。

 照明のあるビルを出て闇の多い外に出て。

 王冠を手にした俺は夢心地で進む。

 閉園時間を過ぎた園内を進む途中、アネシスの警備ロボットたちの姿を目にした。

 警備ロボットは、俺の方向を見るものの、中の状況に気づくことはなく、通り過ぎて行く。

 長いような短い移動が終わり、王の口と手がいるロボット製造工場の前に立ち止まった。

 最初。ここを訪れたときはアネシスやエムカさんの声があったから開いた。

 2番目は、アネシスの閉め忘れ。

 そして3番目は自ら開いていた。

「王冠を手に入れし者よ。そのまま、まっすぐ進んでください」

 言われるままに進み、王の口と手のいるメインルームへ。

「とうとう王冠を手にしましたね、新王よ」

 ガラス貼りの製造機の中に、王の口と手の映像が現れた。

「さあ、新王、順谷様。最後の仕上げです。我が中へ」

 王の口と手の映像が消えて、ガラス製の筒が上へあがっていった。

「順谷様。軽く跳び上がればたどりつけますが、お手伝いいたしまょうか?」

「いや、自分でやってみます」

 王の口と手のあるところまで2メートルほど。

 勇気を出して跳び上がってみる…と

 ふわりと周りの景色が上昇し、思ってた以上に跳んでいた。

 とはいえバッテレインの重たい金属製の大きな体。ある程度上がると、すぐに下降し、王の口と手の元へたどり着くことができた。

「新王。これから景色が一変しますが、あなた様は王冠の中にいますので、決して害はありません」

「それって、電気とか流れるって事ですか」

「そう言うことになります」

 王の口と手の返答と共にガラスの筒が降りてきた。

「これから新王のデータ-を全てのロボット、機能停止中のは後日となりますが、上書きいたします。

 それにより、あなた様はウエストルム・キングダムの正式な王となります」

「…それって。これは戴冠式になるのかい?」

「はい」

「…。王の口と手、データ-が上書きされる前に答えてください。

 俺が王になったら、エムカさんはどうなるのですか?」

「前王の発言ではエムカはエムカ-1の復権があります。

 すべては新王によるもの、ウエストルム・キングダムの言葉はお客様だけではなく、すべての人間に該当いたします」


 ウエストルム、あなたがたの王国。


 その言葉はすべてに従うロボットたちを年締めているのとばかり思いこんでいた。

 でも、この言葉には、すべての責任を背負うものにも指し示していた。

「…すべてはウエストルムのために、なのですね」

 ロボットは人のためにつくし、王は、ロボットのためにつくすこと。

「新王、データ-上書きを始めます。よろしいですか?」

「はい」

 王冠の中にいるものの、一気に流れ込んできた水色の液体も、生き物のようにするりするりと下りてくる無数のケーブルも、間近にあるとしか思えられなかった。

 それが王冠のボディにつながって行く感触が伝わって行く中、目に入りこむ映像は別なものだった。

 自分の体が浮かび上がっているような気がした。

 王冠というボディの中に入り、なおかつ王の口と手の中に入っているというのに、この目から入りこむ映像はすべてを無視した状態になっていた。

『特別モードに切り替えることを宣言します。

 <Program beginning/>…

 プログラムという名の機械語が耳に届く中、目に入る光景はどんどん上昇を続けて行く。

 建物という天上をするりと通り抜けて

 ロボット製造工場の奥嬢にまでたどりついていた。

「わぁ…」

 奥嬢から見渡す光景に歓声をあげ、目を開いたまま、閉じることはなかった。

 閉園したはずの園内、すべてのアトラクションに明かりが点されていた。

 そして、すべと思わせるロボットが園内に現れていた。

『新王、順谷様。機能停止した以外、全てのロボットが現れました』

 姿は見えないけれども、王の口と手の声がすぐ近くから聞こえた。

「すべてのロボットが…。園内に宿泊しているお客さんは、びっくりしてないかな…」

「ご心配に及びません、新王。純也様の頭上に王冠が下りた時点で、お客様には特別なイベントとして申し上げました。

 人体に影響はありませんが、混乱を防ぐ以上、室内からご鑑賞されるようお願いしました」

「なら、大丈夫だね」

「新王、大累順谷様。すべての準備が整いました。

 データ-を上書きいたします」

 王の口と手が開始の宣言をすると…

 光が。淡い光が自分の体から生まれ出した。

 胸の当たりで光るそれはどんどん大きくなり手足や髪の先まで発光した。

 体の隅々まで行き届いたそれはまぶしいほどに力を増し、そして頭上から一線が放出された。

 俺の体から飛び出した光りは高く上がり、花火…そう花火のように、空高く上がり、そして無数に飛び散った。

 無数に、ここにいる全てのロボットたちの分まで分かれ、消えることなく、そのまま落下していった。

 落下し、吸収され、ようやく消えた。

 ピピッという電子音が鳴り『上書き終了』とロボットが確認を唱えた。

 一体一体、すべてのロボットが口々に発するそれは雑音というより騒音に近かった。

 それから、辺りは静寂に包まれた。

 ウエストルム・キングダムのロボットたちは動くことを止めて、そして一方向を見上げていた。

 工事用の屋上を。

 新しき王を見つめるために。


 こうしてロボットたちの新しい王が誕生した。


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