プログラム
「バッテ…レイン?」
携帯を切り、何気なく見上げた時にはもう、彼の目は大きく開かれていた。
「バッテレイン、どうしたんだ」
充電切れか、それとも別の、新たなる異常かと頭によぎった。
『…、………』
表情をなくしてしまったロボットは、その目から2筋の涙を流していた。
「バッテレイン?」
彼は、泣いていた。
ロボットなのに。
『候補者宣言し、バッテレイン-1に特殊感情プログラムが始動しました』
その声はバッテレインのものだった。でも、感情はなく、機械そのものの声で。
『これによりバッテレイン-1の精神プログラムを動かした時点で、このプログラムが始動いたします。
あとは『要請権』を持つ者に開放宣言させられれば、箱は、開かれます』
一度口を閉ざすと、表情のなくなった場って連いは、頭上から脚まで視線を移動した。
『候補者A大累順谷様。あなた様にはバッテレイン-1の要請権があります。
ご宣言を』
もし、バッテレインの特殊なプログラムを発動させたものが要請権のない者だったらどなるのだろうと、ふと頭によぎった。
でも、俺は運が良かったらしい。
「…。バッテレイン。箱を開けてくれ。王冠の入った箱を」
『箱が開かれる』といわれたので、俺はそう素直に言った。
でも、箱はどこに?
『了解プログラム始動。バッテレイン-1にデータ-『Crown』をアップデートいたします』
感情のこもっていない声で宣言し作業を始めた。
アップデートって、確か、ソフトの不具合を直したり、新しいバージョンを取り入れたりする事で、バッテレインの場合は多分『Crown』というデータ-をバッテレインの中にいれることなんだろうか。
バッテレイン達コマンダー・ロボットは『Crown』の場所を知らないっていってたから、アップデートによって『Crown』の場所を知るバッテレインになるのだろうな。
『アップデート終了』
「…バッテレイン?」
俺はおそるおそるコマンダー・ロボットの名を呼んでみた。
彼は…にっこりと笑みを浮かべ、元のバッテレインに戻ったことを教えてくれた。
「順谷さん。どうやら私が『王冠を入れた箱』を開けられるコマンダー・ロボットでした。
知らなかったとはいえ、いままでの非礼、お許し下さい」
「知らなかったんだから、仕方ないよ。
それよりも、バッテレイン」
「ええ。『王冠を入れる箱』ですね。それならば、ここにあります」
そう言ったバッテレインは人差し指を自分に向けた。
「…?」
「私は『王冠を入れる箱』を開けられるコマンダー・ロボットであり『王冠』そのものなのです」
予期していない後半に瞬きしてから尋ねると、バッテレインはにこっと笑みを浮かべてから立ち上がった。
「百聞は一見にしかず、です。順谷さん」
バッテレインはローブをめくり、中に来ているランニングシャツの中かから十本の指を乗せて、そのまま、めり込ませていった。
いや、バッテレインのボディーに溝が生まれ、その中に指を入れたのだ。
そのま、上着をめくるように、金属製ボディーを左右に開いていく。
「面白い仕組みになっているでしょう、順谷さん」
「…空洞」
ボディーの中は暗色だけで、本来ロボットならばあるばすである、無数のケーブルや基板といったものは何一つ見当たらない。
「バッテレイン、君は一体…」
「もちろん、ロボットですよ。半導体といった精密部分は頭に、その他は皮のほうにうめ込まれているだけですよ」
皮、開いた部分ことだろう。
『順谷さん、これが捜し求めていた『王冠』です」
発言のあと、ウィーンというわずかな機械音と共にそれが胸の辺りまで降りてきた。
『王冠』は、青色の淡い光を放つ輪だった。
「これが王冠…」
「さあ、順谷さん。私の中に入ってください」
「え、中に?」
「私が『王冠』そのものであると行ったのは、このことなのです。
この中にある輪は一体化しています。外れることのない、私の一部なのです」
「だからバッテレインが王冠そのものだっていうのかい」
「はい」
戸惑うものの理解したことを確認するとバッテレインは両脚、両腕のも動と同じように開けて人が入れる空洞を現した。
「順谷さんに合わせて手足、胴の調節をされます」
バッテレインの変わらない笑顔に決心し、近づいた。
近づいて、背を向けて後退しし、行き止まりにたどり着いた。
新しい王のめたの配慮なのか、柔らかいクッションが敷き詰められていた。
「扉が閉まります。じはらくの間、目を閉じたほうが良いでしょう」
バッテレインの言われるがままに従うと、目の前で閉まっていく圧迫感と共に『このまま閉じ込められるのではないか』という恐怖概念が現れたもののすぐに消えてくれた。
わずかな音をたてて下りてくる輪が額のあたりで止まると、調整したらく、ゆるみがなくなった。
「手足の調整を行います。僅かに揺れますが、落ち着いていれば大丈夫です」
バッテレインの説明と下り、機械音が響いたけれども場って連が言う『僅かな揺れ』は感じ取れなかった。
「調整終了。これから『王冠モード』に切り替わります。
順谷さん『王冠モード』に入ると私との会話は一切できません」
「え、じゃあ、これからどうすれば、いいんだい?」
「王の口と手の所へ行ってください。
移動は、順谷さんが普段歩くように手足を動かしてくれれば自由に動きます。ただ、慣れるまで走らないほうがいいでしょう」
「…わかった」
「では、順谷さん。
『王冠モード』に切り替わります」
宣言の後、近くに感じられたバッテ連の気配が消えたような気がした。
それから目を開けた。
暗色の世界を創造していたのに目が映し出す世界は、バッテレイン、いや『王冠』に入る前のと変わらなかった。
額にある輪のせいなのだろうか、それとも顔の先にある特殊な画面があるからなのだろうかわからなった。
手で触って確かめようにも、ロボットの腕ごと動いてしまうので、後で聞くしかないようだ。
「…ロボットの中に入って動かすとは…夢にも思わなかった」
今、置かれている立場を忘れ、感想が口からこぼれ落ちた。
「…………………」
それから現実に戻った。




