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目覚めた後


 自分の目が開こうとしたとき、生きているのからこそ開いたのか、そうじゃないのかすら、わからなかった。

「…ここは」

 どうやら生きているらしい…辺りは倒れたときと同じソファーの上にいた。

 それから胸から腹部にかけて重い。何かが乗っている事に気づき、それから慌てた。

「エムカさんっ」

 俺の上に横たわっていたエムカさんはぐったりとしていた。

 それどころか、冷たかった。

「エムカさん?どうしたんです?しっかりしてください」

 起き上がってエムカさんを抱き起こしてゆすってみるものの、彼女の体は人形のように左右に揺れるだけだった。

「しっかり…シュクシャ」

 エムカさんをソファーに寝かし、俺は扉へ向かった。

 厳重に警備しているシュクシャを呼んで、それから…

「………」

 扉を開け、シュクシャを呼ぶことはなかった。

 扉が開かれたのと同時に、よりかかっていたシュクシャのボディーが部屋に倒れこんできたのだから。

「………」

 金属の固まりが床に衝突し、足元に振動が届いた。

 天井を向くシュクシャに表情も、目の焦点もなかった。

「これは一体…これは。どうなっているんだ?あれから…

 あれからどれぐらいたったんだ?」

 シュクシャの足元に蔓が巻き付いていた。

「一体…」

 扉の外は、それ以上に無残なものだった。

 人がリラックスし、過ごしやすく泊まれるように施された建物のじゅうたんは、ほこりと土色へ変色し、ところどころに穴があいて、至るところに草が生い茂り、蔓が床を壁を這って覆いつくそうとしていた。

 天井というものはなく、過酷な太陽が惨状を照らしていた。

「これは…」

 振り返った俺は、それ以上の惨状を目の当たりにするしかなかった。

 王に忠誠を誓うすべてのロボットたちの無残な姿を

 それが積まれた山を。

「うわぁぁぁっ」

 叫び声が、自分の耳に響き…

 目が覚めた。

「…………」

 夢…

 ここが現実で、さっきのは悪夢だったと判断するまでしばらくの時を必要とした。

 辺りをくまなく見回して、訪れたときと何一つ変わらないことを確認しても、目は時計を探した。

 新緑色の時計は休むことなく秒針を働かしている。

 ここを訪ねる正確な時間はわからないけれども、数時間だけ過ぎたようだ。

「………」

 それでも、安堵のため息がでるまで、もう少しの時間がほしかった。

 だけれども、俺に覆いかぶさる影がそれを許してくれなかった。

「そ…ソシエゴ」

 背後に立っていたのはまぎれもなくソシエゴだった。

「順谷さん。エムカは、どこにいらっしゃいますか…」

 人形のように。今のソシエゴに表情というものはなかった。

 それから両方の腕も。

「ソシエゴ…その腕は、どうしたんだ」

「もぎ取りました」

「誰が?」

「僕自身です。

 『要請権』の指名をしてくださったエムカさんは、僕にアネシス-1の解体し、そのどこかに組み込まれている王冠を見つけ出せとおっしゃいました。

 でも、ご覧の通り、今の僕にはアネシス-1を解体する必要な腕がありません。作業ができないので、新しい指示をもらうため、ここの部屋を訪ねたのですが…エムカはどこにいますか?」

 … … …

 人間の命令にそむくことのできないロボットは自らを犠牲にして、抵抗した。

 大切な姉ロボットを守るため、いくら非情を持つロボットであっても思う心は存在していた。

「順谷さん。エムカは、どこにいますか?」

 …それでも。ロボットは人間に従うのだ。

 それは、あまりにも無情すぎて、今見た悪夢よりも悲しすぎた。

「エムカさんは…さあ?俺もわからない。ソシエゴ…君の腕がないということは…アネシスは?アネシスは元気なんだね」

「…。いいえ。姉さんは依然として機能停止状態です。姉さんを元に戻したいものの、エムカさんが命令した要請が優先となりますので…」

 何てことだ…それではエムカさんを探さないと…いや、一度下した要請は王冠が見つかるまで続行されるんじゃなかったのか。

「…何てことだ」

 それじゃあ、王冠が見つかるまで、アネシスもソシエゴの腕も、そのままじゃないか。

 王冠を見つけ出さなければ、でも、どこに?

「くそっ」

 湧き上がりどうすることもできない自分に、ただソファーに当たるしかなかった。

「どうすることもできないのかよっ。俺は」

 情けない。何もできないでいる自分が…

「いや、何ができるはず…そうじゃない。何かしなければならないんだ」

 立ちあがり、扉へ走った。

 開かれた扉に見張り番、シュクシャの姿はなく、ソシエゴが訪れたときにはもういなかったとのこと。(扉は口を使って開けたらしい)

 俺はとにかく走った。

「順谷さん。どこに行かれるのですか?」

 腕がなくバランスのとれないもののの、それでも後を追うソシエゴに問われ、何も考えずに飛び出したことに気づいた。

「………」

 立ち止まり、懸命に考える頭とは裏腹に、目は遊園施設を眺めていた。

 華麗に取りつけられた色とりどりの明かりはすべて消えていて、閉園を迎えていた。

 その光景は、破滅を迎えたときのようで、頭は混乱した。

「メインで使っているビルか…エムカさんのところ」

 それでも必死に考えた頭は2つの答えを出した。

 冷静に考えれば当たり前の回答であるのに。

「…ビルに行こう。そこにバッテレインがいる」

 唯一『要請権』の残っている彼の存在こそが頼みの綱だった。


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