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エムカプログラム

「………」

 停止したロボットのようになった男をエムカは表情一つ変えずに見つめた。

「この男は…」

 それから近づいてしゃがみ、順谷の頬に触れる。

「温かい」

 これは人間…でも本物とはいえない。

「………」

 私は順谷君に好意を持っていた。でも、それは本当に1人の男として好きなのか?あの人のクローンだからなのか…。

「…そうなのかしら」

 いや、そもそも。

 私は本当にボスが好きだったのかもわからない。

 機械だらけの孤独な城に住むただ1人の男だったから。そう思うようになったのかもしれない。

「……………」

 それからエムカは手を離し、長い間、再び見続けた。

 順谷の事…自分の思いが本当だったのか見分けるために。


 長い事見つめ、エムカはぽつりとつぶやいた。

「…わからない」

 この男を見つづけて鼓動が速くなることはないのに、自分以外の娘、アネシスが一緒にいるのは許せない。

「わからない…」

 弱々しく同じ言葉を吐き出したエムカはふらりと立ちあがった。

「ちょっと出かけます。警備を続けておいてちょうだい」

 扉を開け、命令を出すとそのまま、ふらふらとした足取りでホテルを後にした。


 私の脚はボスの私室へと運んでくれた。

 後ろのエレベーターが閉まると、いつものように生存した時の映像が現れ、暗唱できるほど聞いた順谷君へのメッセージが流れ、そして姿を消す。

「………」

 足は進み、偽りでなく本物のボスがいる奥へ進む。

「ボス…」

 私はロボットじゃないから、映像やこれが言葉を返してくれないのは百も承知だけれども…問わずにはいられなかった。

「ボス、あなたは何を望んでいるのですか?あなたのいなくなったこの王国は、どうしてほしいんですか?王冠を見つけたものには何を望んでいるのですか?」

「ウエストルムを。思い描いた通りに。あなただけの王国を築き上げてほしい」

 すべての時が止まったかのように思えた。

 聞き間違えることのできないボスの声なのだから。

 呆然と頭が真っ白になったものの、その声がした後方へ向き。

 見開いた目が元に戻っていった。

「スィージィ」

 『眠り姫』の異名を持ち、めったに動くことのないロボットだけれども、今は驚く気にもなれない。

「ノックもせず、入ってきてすみません。でも、ボス。あなたが出した条件をすべてクリアしてしまい、私に組み込まれたプログラムが発動してしまいました」

「プログラム?」

「ええ。

 1.エムカ1人で、この部屋を訪れる事

 2.エムカ1人ないし、複数のものの中にエムカを含めた後継者候補となった場合

 3.後継者宣言をして、30時間以上たち、なおかつ王冠が見つからない事

 4.エムカが精神的にダメージを持っていると判断した場合


 その4つすべてがそろった場合、私は強制的にこの部屋へ入室しボスが録音したメッセージを流すようにプログラムされました」

「確かに…。揃っているわね」

「ボス。やはり、いけなかった事ですか?これは明らかに比例であることはわかっています。

 …。

 ボス、やはり、怒っていらっしゃるのですね」

「スィージィ。ボスは疲れて眠っているわ。怒ってなんかいないわよ」

 返答しないのは怒りによる虫と判断してしまうスィージィに違う解釈をさせてあげた。

 彼女も万能たる管理ロボットであっても、機械なのだから。

「良かった。眠っていらっしゃるのならば、エムカ。起こさないように、下に移りませんか?

 ボスが録音されたメッセージはまだ残っています。いくら、プログラムとはいえ、これもボスの命令であります。すべて実行しなければなりません」

「そうね」


『エムカよ。

 毎日見るお前の表情がかげっていくのを見て、自分の体が急激に蝕んでいることを理解しないければならないようだ。

 だから、スィージィ-1に言葉を残すことにした。

 だが、このメッセージを聞く状態に、私のせいで陥っているようだな。すまない。

 エムカよ。この王国の進化および末端の従業員すべてが王に従う。その王になりし者は、すべてが許される。華麗なる反映も、一瞬による方かいでさえも。すべて。

 この(ロボット)たちには『野心』というものがない。だから王に歯向かう者もいない。すべては王の力による。王にも『ウエストルム』の言葉が適用されている。ウエストルム、あなただけの王国だ。責任重大なものかな』

 スィージィの口から流れ出るボスの声は優しく温かいものだった。

 目を閉じれば、ボスのがいるのではないかと思ってしまうほど。

『後継者はお前でも、私のクローン、順谷でも構わない…いや、王冠を手に入れたものならば、と思っている。これも、勝手すぎるか?でも私も勝手にこの国を作り、新王になるためのルールを勝手に作ってしまった。勝手なる王だ。

 エムカよ、お前が履歴書を持って現れなければ、順谷以外に考えられなかった。孤独なる王に日とという存在はないと思っていたからだ。これは勝手すぎるな。1人の生命を勝手に創っておきながら。

 エムカよ。順谷の頭に王冠が乗らなかった時、あの子が1人立ちするまで見守ってくれ。勝手なる王の唯一の頼みだ』

「………」

 返答を待っているかのように、しばらくの時間が流れてから、ボスの声が再び、流れ出した。

『エムカよ。候補となった今、お前はエムカ-1から人間に戻った。

 だが、お前が望むのならばロボットに戻ることもできる。すべてエムカ、君の判断による。…これも勝手すぎるかな』

「勝手すぎます」

 ボスのメッセージがそれで終了し。もう2度とボスの映像やメッセージがないこともわかった。

「………」

 最期のメッセージなのに…あの人はとうとう何も言ってくれなかった。

 ボス…あなたにとって私はロボットでしたか?それとも、人間でしたか?

 勝手過ぎる想いだったとしても、私に言ってくれないのですね。


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