02話:道端にボロボロの女が座り込んでる
ボロボロな孤児院から出て数時間後。
俺は引き受けた冒険依頼を行うために、王都から一番近い森林に入ってモンスター退治をしていった。
そしてその冒険依頼も無事に終わり、王都の冒険者ギルドに戻って報酬を受け取った後。
―― ポツポツ……
「ん? 雨か?」
冒険者ギルドから出たタイミングで急に雨が降り出した。ちょっと待てよ。傘なんて持ってきてねぇぞ。
「はぁ、仕方ねぇな。今日は寄り道せずにさっさと帰るとするか」
今は夕方過ぎだし晩飯を食ってから帰宅したかったんだけど、でもここから雨が本格的に降りだしたら最悪過ぎるし早く帰るとするか。風邪なんて引きたくねぇし。
という事でこのままさっさと帰ろうとして、俺は街中を一気に駆け脚で走り抜けていこうとした。でもその途中で……。
「……ん? あれは?」
でもその途中、街中の隅っこの方でペタっと地面に倒れこんでいる女を見かけた。ちょっと遠くにいるから見た目はわからねぇけど、でも多分若い女だ。
それに何だか綺麗なドレスを着ているようだ。こんな人の少ない過疎ってる通り道であんな綺麗なドレスを着てる女がいるなんてちょっと場違いだな。
でもよく見たらそんな豪華なドレスは少しボロボロな感じになっている。所々ドレスが破れている。それに靴は片方脱げているし、タイツも破けている。髪も乱れに乱れている。
その様子からして何か大変な事があったようにしか見えない。もしかしたら悪党にでも襲われちまったとかか?
「はっ。物騒な世の中になっちまったもんだな」
俺はボロボロな女を見てそんな軽口を叩いた。そしてそのまま俺は女を無視してさっさと帰ろうと思ったんだけど……でも俺の足は途中で止まってしまった。
今俺達がいるこの通りは“スラップラード通り”と呼ばれている通りで、王都の中では治安はあんまり良くねぇ場所なんだ。だから人も少ないんだ。
そんな治安の悪い通りにこのままあの女を放置しちまったら、まぁ十中八九悪い人間に捕まっちまうだろうな。そして泣く程辛い目に遭わされる事になるだろう。
「……っち。仕方ねぇな」
俺はため息交じりにそう呟いた。このまま女を見殺しにしても別に心は痛まねぇけど、でもなんか目覚めが悪くなっちまうかもしれねぇし……そしたら明日の冒険仕事にもちょっとは影響が出ちまいそうで嫌だな。
まぁそれにあの女は綺麗なドレスを着ている。という事はもしかしたら高価なドレスかもしれねぇし、そうだとしたら良い家柄のお嬢様って可能性もあるよな?
もしそうだとしたら、そんな良い家柄のお嬢様を助けたとしたら、あの女の両親から謝礼で金一封が貰えるかもしれないよな?
(……ま、金が貰える可能性があるなら助けてやっても良いか)
という事で俺は地面にペタっと座り込んでる女に近づいて声をかけてみる事にした。もちろん金のためだ。それ以上の他意はねぇからな。
「おい。そこのお前」
「……ぇ……?」
俺はその女に近づいて声をかけてみた。すると女はゆっくりと顔を上げながら俺の事を見てきた。
顔を見てみるとかなり綺麗な女だった。だけど目はどす黒く淀んでいる。血の気も全然ない。まるで死人のような様子だ。
まぁ誰がどう見ても訳アリの女だな。でもドレスはかなり綺麗だし、おそらく高級素材を使ったブランド物だと思う。
という事はやっぱりこの女は良い家柄のお嬢様なんだろうな。
でもそう考えるとますます意味がわからない。なんでこんな治安が良くない“スラップラード通り”に良い家柄のお嬢様が一人でいるんだ?
「……ま、いいか。お前、雨に打たれて寒いだろ。こんな所で何してんだよ?」
「……いえ……別に……特に何もしておりません……」
「……はぁ? 何言ってんだお前? 何もしてねぇんだったらさっさと帰れよ。家は何処だよ? 近いのか? それなら俺が送ってやるぞ?」
「……」
「……っち。無視かよ。まぁ喋りたくねぇなら別に良いけど、でも雨降ってるのにこのまま外に居続けたら風邪引いちまうぞ。だからとりあえず俺の貸部屋に来いよ。雨宿りくらいならさせてやるからよ」
「……ぇ……?」
「ん? なんだよその顔? 俺なんか変な事言ったか?」
「……いえ。別に……変な事は仰ってません……はい、わかりました……それではその……アナタ様のお部屋に行かせて頂きます……」
「おう、わかった。それじゃあさっさと行こうぜ。こっちだ」
「……はい……」
という事で俺はその地面に座り込んでいた女を引き連れて、俺が住んでいる貸部屋に帰っていった。




