13話:顔を真っ赤にしてるミリアに話しかける
そんな訳で三人組の男女を退けた後。
「ふぅ……おい、ミリア。大丈夫だったか?」
「ふ、ふぇっ!? あ、え、えっと……そ、その……!」
俺がそう話しかけると、ミリアは顔を真っ赤にしながら凄くあたふたとしだした。
「何あたふたとしてんだよ? それに顔も赤いぞ? 熱でもあんのか??」
「ふ、ふぇっ? あ、い、いや、熱は無いです! だ、大丈夫です! と、というかジークさんは何でここにいるんですか? た、確かお仕事に行ってたはずでは……?」
「今日の仕事はもう終わったんだよ。そんで帰宅途中にお前達が口論している現場を見つけたから仲裁しに入ったってだけだ。ってかミリアこそこんな所で何をしてたんだ?」
「え、えっと、私はその……ご飯とか色々と買おうと思って、それで街中で買い物をしてたんですけど……そうしたら貴族学園の同級生と偶然出会ってしまって……それで色々と誹謗中傷をされてたといいますか……」
「ふぅん。なるほど。それじゃあやっぱりアイツらは貴族様だったって事か。だけど貴族様ってのは軟弱なヤツばっかりなのか? 俺みたいな一般庶民がちょっと脅しただけで逃げるなんてガッカリだな。この国の偉いヤツらなんだからもっと堂々としろよな。はぁ、全く」
「い、いえ、そ、そんな軟弱な方ばかりという事は決してないとは思いますが……って、そ、そうだ、ジークさん! さ、さっきの話の中で……そ、その……ジークさんって……ここら辺のアウトロー界隈で知れ渡ってると言ってましたけど……そ、それによく見たら全身に血が付いてますし……も、もしかしてジークさんって……ほ、本当は物凄く怖い人……なんですか……?」
ミリアはちょっとだけ怖がった表情をしながらそう尋ねてきた。やっぱりコイツ……ちょっとピュア過ぎるな。
「はぁ、何言ってんだお前。俺がここら辺のアウトロー界隈に知れ渡ってるって……そんなの全部嘘に決まってんだろ」
「え? う、うそ……? そ、そうだったんですか?」
「そうだよ。そもそもアウトロー界隈って何だよ。そんな痛すぎる界隈が存在する訳ねぇだろ」
「え……で、でもその……ここはスラップラード通りだから……だからその……治安の悪い通りという話は昔から聞いた事がありますし……だからアウトロー界隈があるのでは……?」
「そりゃあ裏路地とかは人が少ないから、そこでスリとかひったくりをしてる馬鹿野郎はいるけどよ……でもスラップラード通りだって王都の一部なんだぞ? そんな危ないアウトロー界隈が本当にあったとしたら王都の騎士団やら警備団が全部摘発してるに決まってんだろ。だからスラップラード通りにそんなヤベェ界隈は存在してねぇよ。ま、でもスリとかひったくりとかの軽犯罪をしてる馬鹿野郎はいるからそれは注意しろよ」
という事で俺はミリアにスラップラード通りにそんなヤベェ界隈は存在しない事をハッキリと伝えた。
もしそんなヤベェ界隈が本当に存在しているとしたら、俺は孤児院のガキ共を連れて串焼き屋に連れて行ってねぇし、そもそもクソババアが俺をスラップラード通りの貸部屋に住ませる事を絶対に許可なんてしてねぇからな。
まぁ王都の中でもスラップラード通りの治安は多少悪いのは本当だから、色々と変な噂が出てきてしまうのもわかるけどな。
「あ、そ、そうだったんですね。でもそれじゃあそのジークさんの身体に付着している血は……? そ、それはその……誰か人を切った時に付いた血なのでは……?」
「これは仕事で付着した血だ。俺は冒険者なんだよ。だからこれはさっきまで討伐してたモンスターの血だよ」
「あ、そ、そうだったん……え、えぇっ!? ジ、ジークさんって冒険者だったんですか!?」
「ん? そうだけど?」
俺が冒険者だという事を伝えるとミリアは途端に驚愕としていった。何も変な事を言ったつもりは無いんだけど……どうしたんだろう?
「? 何でミリアはそんなビックリとした顔をしてんだよ? って、あぁ、もしかしてあれか? 俺がそんな底辺職をしているなんて……って事でビックリとしてるのか? はん。そんなの仕方ねぇだろ。俺は勉強出来ないし、若くて資格とかも何も持ってねぇから、出来る仕事なんて底辺職の冒険者くらいしか――」
「い、いえ、違いますよ! 逆です! 私は冒険者は素晴らしい仕事だと思っています! だからジークさんはそんな素晴らしい仕事をしているんだと思って、それで大きな声を出してしまったんです!」
「はぁ? 冒険者が素晴らしい仕事? 何言ってんだお前? 冒険者の何処が素晴らしい仕事だって言うんだよ?」
「だって冒険者様と言えば、いつも街に住んでる皆様の困り事を解決するために一生懸命に働いて下さってる凄い方々じゃないですか! 私も冒険者様には何度も依頼した事がありますし、何度も助けて貰いました! そんな素晴らしい仕事をされてるなんて……ジークさんは凄いですよ!」
「……なんだそりゃ。そもそもミリアは“冒険者”という職業が周りから一般的に何て言われてるのか知ってるのか? 誰でも出来る最底辺の職業だって言われてるんだぞ? ミリアはそんな事も知らねぇのかよ? だからそんな最底辺の職業に付いてる俺は別に凄くとも何ともねぇよ」
「いえ、そんな事はないです! 冒険者というのは本当に素晴らしいお仕事ですよ! 街の皆のために大変な仕事とかも引き受けて下さる素敵な方々なんです! だからいつもありがとうございます! 困ってる人達をいつも沢山助けて頂いて、もう本当に感謝の気持ちでいっぱいです!」
「……っち。お前はあれだな。変な女だな……ま、別にいいけど……」
俺はミリアにそんな事を言われるとは全く思わなくて、プイっとそっぽを向きながらそう呟いていった。
もしかしたらちょっとだけ顔が赤くなってるかもしれない……。
「……? どうしたんですか? ジークさん?」
「……別に。何でもねぇよ。それで? ミリアは今から貸部屋に帰るのか?」
「あ、はい。そうです。買い物が終わったので今から帰る所だったんです。そしたらそのタイミングで同級生とバッタリと会ったと言いますか……」
「そうか。それじゃあ俺も今から帰る所だったから一緒に帰ろうぜ。って事でその紙袋をこっちに寄越せよ。俺が持ってやる」
「あ、は、はい、ありがとうございます、ジークさん! そ、それじゃあお願いします!」
「おうよ」
そう言って俺はミリアが抱きかかえていた紙袋を受け取った。そして俺はそのままミリアと一緒に自宅へと帰っていった。




