10話:買い物の途中に同級生と出くわす(ミリア視点)
私はジークさんから貰ったお金を手にして貸部屋から出ていった。
そして街中にある雑貨屋さんにやって来た。ここは日用品から食料まで幅広く扱っているお店だ。
「お会計は銀貨7枚となります。購入品が多いので大き目の紙袋に詰めておきますね」
「わわ、ありがとうございます。それでは丁度銀貨7枚です。確認お願いします」
「はい。丁度銀貨7枚頂きました。毎度ありがとうございます。それでは購入品を詰めた紙袋をどうぞ。帰る際には中身を落とさないように気を付けてくださいね」
「はい、ご親切にありがとうございます。それでは失礼いたします」
―― カランコロン♪
私は雑貨屋さんの店員にそう言って店から出た。
私は雑貨屋さんで裁縫用の糸と布だけでなく、お昼ご飯用の食材と水も買ったので、結構な大荷物になってしまった。
大きな紙袋にまとめてくれた店員さんに本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。
そして紙袋の中身を落としたりしないようにするために、私は紙袋を両手でしっかりと抱きかかえながらゆっくりと帰路に付いていった。
「それじゃあ落とさないようにゆっくりと帰らなきゃ……って、あれ?」
「あはは、マジかよそれー……あれ?」
「ふふ、そうなのよー。って、どうしたのセシル? そんな変な顔をして?」
「あっちの方を見て何かあったの? って、あれは……もしかして?」
その時、私の前方から賑やかな男女の声が聞こえてきた。それは三人組のグループだった。そして私は彼らの事は知っていた。
彼らは私が通っていた貴族学園の同級生の子達だ。だから彼らは私の事を知っているし、なんなら……。
「ぷはは、何だよお前。ルドガー様に婚約破棄された間抜けな女じゃないか!」
「ぷぷ、婚約破棄されるとか貴族令嬢として終わってるわよねー。私がアンタの立場だったら同じ女として一生外を歩けないわよー」
「確かに確かに。あんな酷い婚約破棄を言い渡されたのに、よくもまぁ外を出歩けるわね。神経図太すぎでしょ。あははー」
目の前の三人組の男女は大きく笑いながら私の事を馬鹿にしてきた。彼らにとって私は馬鹿にされる対象だったんだ。
「そういえばあの婚約破棄騒動で知ったんだけどさー、アンタってあれなんでしょ? 転校生の女の子をずっとイジメてたんでしょ? 友達全くいなくていつもジメジメと暗い顔してたアンタが影では他の生徒をイジメてたとかマジでキモ過ぎー」
「い、いえ……そんな酷い事は私……決してやっていません……」
「はぁ? でもアンタの元許嫁のルドガー様も転校生のジュリア嬢も、他の取り巻き連中も皆証言してたじゃない。アンタがジュリア嬢を酷くイジメてたって。そんな証言が沢山あるのにどうして認めないのよ?」
「アンタってジメジメと暗い女のクセにそんなイジめとかする汚い女だったなんてねぇ……まぁでもアンタの見た目からして汚そうな女だったし当然か。ぷぷ」
「そ、そんな……私……汚くなんて……」
「いやアンタは汚いでしょ。だってアンタは色々な業界人に身体を売って、色々と融通して貰ってたんでしょ? そんな話も皆言ってるし、アンタってかなりヤバイ女だったのよね。ぷはは、そりゃあこんな女は婚約破棄されて同然よねー」
「そ、そんな事……してません……ぐすっ……」
私は俯きながらそう呟いた。もちろん皆が言ってる話は全部嘘だ。私は転校生のジュリア様をイジメた事なんて一度も無い。私はそんな酷い事は絶対にしない。
それに業界人に身体を売って色々と融通して貰ったなんて事も一度も無い。私は淑女として婚約者以外に肌を触れさせるのはよくないと教わって来た。身体を捧げるのは結婚した旦那様のみにだと厳しく教え込まれてきた。
だから私は婚約者のルドガー様以外の殿方と接する事は極力しないようにしてきたし、ちゃんとルドガー様と結婚をするまでは操を守り続けていたんだ。
そんな淑女として当然の義務をひたすら守って清くずっと生きてきたのに……それなのに私は転校生をイジメるし、身体を売って業界人と仲良くしてる酷い女だというレッテルをずっと貼られてしまっていたんだ……。
「ま、私はアンタの事は最初から気持ち悪い女だと思ってたけどね。ふふ、それにしてもアンタさ……これからどうやって生きていくのよ?」
「……え?」
「くすくす。確かにね。周りの子をイジめたりとか、身体を売ったりしてるヤバい女だってのはもう周りでは有名な話でしょ? そんなヤバイ女はこれから新しい婚約者なんて結べる訳ないものね。そしたらアンタはこれから一生独り身よ? 貴族令嬢なのにこれから一生誰とも結婚も出来ずに人生を終えるなんて終わってるわね」
「ぷはは、確かにそうだな。こんな悪評ばっかりの女……誰も結婚相手になんて選ばねぇな! 俺だってこんな病気持ってそうなヤベェ女はお断りだよ!」
「……うっ……ぐすっ……」
私は三人組の男女から嘲笑われながらそう言われて……でも私は何も言い返せずにそのまま静かに涙を流していった。しかしその時……。
「……おい、何笑ってんだテメェら」
「ぷはは……って、え?」
「あはは……って、わわっ!?」
「ひ、ひぇっ!?」
「……え? あっ……」
その時、私の後ろからとある男性の人の声が聞こえてきた。それはとても安心する男性の声だった。
私はすぐに後ろに振り向いていってその声が聞こえた方を見た。するとそこには……ジークさんが私の後ろに立っていた。




