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オタクの友達が性転換しました  作者: 藤桜


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9/13

第9話 《夜空の下で》

 今日から待ちに待った林間合宿! 2泊3日で県内の山奥にあるキャンプ場に泊まる予定だ。 

 着替えなどは前日に学校経由で送ってあるため荷物は背負っているリュック一つだけだ。

 学校指定の体操着&ジャージ姿の俺と柚月は集合場所の駅へ電車で向かって歩いていた。


「今週は晴れらしいから絶好の合宿日和だよな」

「そうだね……」

「2日間アニメ観れないからSNSでのネタバレ気を付けないとな。と言っても山奥だと電波あるか怪しいけど」

「そうだね……」


 今日みたいな晴天とは裏腹に柚月のテンションが低く表情が暗い。

 何を話しても曖昧で同じ返事しかしない。

 以前合宿の話をしたときは凄く楽しみだと言っていたのに何があったのだろう?

 体調が悪い様には見えない。


「なんかテンション低いな。何かあったのか? 相談に乗るぞ?」

「ありがとう。えっとね、合宿先って男女別のログハウスに泊まるじゃん? だから……」

「あー、その事か」


 実は先日のHR(ホームルーム)で柚月は男女どっちのログハウスに泊まるのかと議題が上がったのだ。さすがに現在女子の柚月を男子側のログハウスに泊まらせるのは無理なので教師達のログハウスに泊まるのかと思ったが秒で女子達から「女子側うちらの方に来て良いよ」と言われたのだ。

 てっきり数人が反発して話し合いになるかと思ったが誰一人反発する人が居なかった。むしろウェルカム状態だ。

 しかし柚月は正直教師と一緒でも良かったらしいが人見知りかつ相手が女子だったため断ることが出来ずそのまま話し合いは3分で終了した。

 つまり柚月は女子側のログハウスで寝泊まりすることが不安でテンションが低いみたいだ。

 柚月には悪いが正直羨ましいと思う。出来れば代わって欲しいくらいだ。と世の中の男子高校生を代表して言いたい。

 そんなテンションの低い柚月と共に集合予定の駅へ着き辺りを見渡すとロータリーの隅にすでに数人の生徒が集まっていた。


「向こうに皆いるからあそこが集合場所っぽいな」

「だね……」

「ったくテンション低いなぁ。別に寝るときだけだから就寝時間まで外とかで時間潰して時間になったらログハウス入ってさっさと寝ちまえばいいじゃん。風呂だって個別のシャワー室らしいし」

「言われてみれば……。なんだか大丈夫な気がしてきた。奏汰っ! 早く集合場所へ行こっ」


 柚月は俺の手を引きみんなが居る場所へ向かった。

 先ほどの暗さは無くなりいつもの柚月に戻った。

 全員集合したのちキャンプ場近くまで行くローカル線の電車に乗った。


「この後はバスでキャンプ場まで行くのかな?」

「いや、このまま電車でキャンプ場最寄りの駅に行き、そこから歩いてキャンプ場まで行くんだよ。道中にあるダムの近くで昼休憩だったかな? てかしおりに書いてあるだろ」

「そういえば貰ってたね。忘れてたよ」


 忘れていたのも無理はない。これを配られたのは柚月が男女どっちのログハウスに泊まるかを話し合った直後でその時柚月は抜け殻のようになっていたからだ。

 柚月はしおりを最初から読み直していた。


「ねぇ、この明日の予定にあるウォークラリーってなに?」

「チームで謎解きして目的地向かうやつだよ。中学の時もやったけどめっちゃ楽しかったな」

「何それ面白そう!」

「柚月って謎解き系好きだよな」

「だって謎が解けたときって凄く気持ちいいじゃん」

「謎解きと言えば昨日見たアニメでさ―――」


 柚月と話しているうちに電車はどんどん山奥へ入って行った。車窓からは山や空、川が広がっていたが次第に景色は木々の緑一色に替わっていった。電車は山を登るように進みようやくキャンプ場の最寄りの駅に到着。

 少し標高が高いためか地元より少し涼しく空気が澄んでいて草木の匂いがする。

 電車を降りすぐ近くにあるダムの敷地内で昼休憩した後キャンプ場までの道を歩くこと約1時間以上。ようやくキャンプ場に到着した。

 到着するなり皆はその場に座り込み、俺たちも近くの木陰に座った。


「やっと……着いたね……」

「ほとんど上り坂だったから足がヤバい……」

「この後なんだっけ?」

「施設の説明とかした後夕食まで自由時間だった気がする」

「自由時間何する?」

「駄弁りながら近く散歩でもするか」

「賛成ーっ」


 点呼を取り自由時間になった。ロッジで休む者や広場でキャッチボールやサッカーをする者など各自思い思いに自由時間を過ごし始めた。俺たちは近くを散策して時間を潰した。

 夕方になり日がまだ登っている時間から夕食の準備をし始めた。

 各クラス内で4つのグループに分かれてカレーを作ることになっている。

 グループは出席番号順に割り振られているので俺と柚月は同じグループだ。

 役割分担のじゃんけんの結果、俺と柚月は野菜を切る係りになり水道がある場所で野菜の準備をし始めた。


「えーっと、切り方はどんな形に切るんだ?」

「玉ねぎはくし切りでジャガイモと人参はいちょう切りで良いと思うよ」

「いちょう切りはなんとなく分かるけどくし切り?」

「えっとこういう切り方ね」


 柚月は手本として野菜を切った。

 驚くことに柚月の包丁さばきがまた一段と上がっている。

 俺はその切り方を見つつ歪ながら頑張って切った。

 次々と野菜を切っていき気が付けばあっという間に用意されていた野菜を切り終えていた。

 と言ってもほとんど切ったのは柚月だ。

 柚月と共に切った野菜をかまどのある場所へ持って行くとすでにかまどには火が点いていて飯盒はんごうで米を炊こうとしていた。


「僕、飯盒で炊いたご飯食べるの初めてかも」

「俺は中学の林間合宿で作ったことあるな。少し焦げて失敗したけど」


 野菜を大きな鍋に入れ軽く炒めた後、水とルーを入れしばらく煮込んだらカレーが完成。

 水っぽくもなく良い感じのとろみが付いていてる。

 ご飯も良い感じにおこげが付いていて美味そうだ。

 皿にご飯とルーを盛りつけ席に着いた。


『いただきます!』


 俺達のグループは他のクラスより少し早めに夕食を食べ始めた。

 他のグループの所を見ると少し水っぽいカレーや少し焦げたご飯を盛っているのが見える。

 辛いのが苦手な人も居るため甘口のカレーで統一され辛いのが欲しい人は唐辛子パウダーを入れて調整した。


「柚月も唐辛子パウダー入れるか?」

「ううん。僕はこのままでいいよ」

「辛いの苦手だっけ? この前作ったの中辛でも辛い方だった気がするけど」

「苦手じゃなかったんだけどね。ここ最近辛いのがちょっと無理になってきたっていうかそこまで好まなくなってきたんだよね」

「味の好みも変わったのか?」

「そうかも。前より甘いものが好きになった気がするし」


 気が付かないだけで未だに色々と変わってきているみたいだ。

 夕食後はレクリエーションだ。と言ってもほぼ自由時間と変わらない。広場では軽音楽部が野外演奏をしたり学校側で用意した小さな手持ち花火をしたりして各自自由な時間を過ごした。

 山の中だけあって風が吹くとかなり涼しく長袖を着ている生徒も何人か居る。

 俺は柚月と近くで座って軽音楽部の演奏を聴きつつ話していた。


「この後風呂入って寝るだけだか。なんだか1日があっという間だったな」

「午前は凄く長く感じたよね。午後はほとんど自由時間だったから楽だったけど」

「あれは確かにヤバかった。まぁ明後日の帰りもまた歩くけどな」

「筋肉痛確定だね」

「だな。俺ちょっと飲み物買ってくるけど柚月は何か飲むか?」

「僕は大丈夫だよ。お腹いっぱいだし」

「そんじゃちょっと買ってくるわ」

「ここで待ってるね」


 俺は広場から少し歩いたところにある管理棟前の自販機へ向かった。

 ここはキャンプ場唯一の自販機がある場所だ。向かう途中何人かのクラスメイトとすれ違った。

 管理棟前に着き、自販機の商品を見るとすでにスポーツドリンクやお茶、水などが売り切れになっていた。売っているのは果汁飲料かコーヒーの2択。今は甘いものが飲みたかった俺は迷わずリンゴジュースを購入した。

 柚月の所へ戻ろうとした時、同じくクラスの女子の井上さんがやってきた。

 井上さんは小柄だが見た目とは違い行動力があり性格はかなり明るく誰にでも話すような人だ。

 そして明日のウォークラリーのメンバーの一人でもある。


「あっ、鷹尾君だ。やほー」

「井上さんも飲み物買いに?」

「そだよー。ここ薄暗くて怖いよね。誰か居て助かったよ」

「怖いなら誰か連れてくればよかったんじゃ?」

「だって誰もついて来てくれないんだもん」

「道も薄暗いしちょっと距離あるからな。俺そろそろ戻るけど」

「飲み物買っちゃうからちょっと待ってて」


 井上さんは急いでオレンジジュースを購入して俺と一緒にみんなが居る広場へ向かった。

 道中俺は井上さんと初めて長く話した。主な話しは明日のウォークラリーの事だ。

 広場に着くと井上さんは「私あっちだから。また明日ね」と言って手を振り小走りでみんなが居る所へ向かった。

 戻ると柚月はこっちを見ながら頬を少し膨らませていた。

 そんなに戻るのが遅かったかな?


「さっき誰かと楽しそうに話していたの見えたけどぉ?」

「井上さんな。さっき自販機の所で会って明日の事とか話していたんだよ」

「それだけ?」

「それだけだけど?」

「そっかー、それならいいや」


 柚月は何かの心配をしていたみたいだ。

 夕食後のレクリエーションも終わり入浴タイムだ。

 と言っても湯船は無く個室のシャワー室のみだ。柚月と別れた後、俺は混みあう前にシャワーを早めに済ませログハウスに向かって歩いていると広場にあるベンチに座っている柚月の姿が見えた。

 柚月もさっきまでシャワーを浴びていたのだろう。髪がまだ少し濡れている。


「こんな所で何してるんだ?」

「寝るまで時間潰してるだけだよ。奏汰も一緒に見る?」

「見るって何を?」

「空見て。星綺麗だよ」

「って言っても地元からも一応見え―――ってすげぇ……」


 見上げるとそこには満天の星空が見えた。

 地元で見るのと全然違う。大小さまざまで色々な色の星が輝いている。

 俺も柚月の隣に座り一緒に星空を眺めた。

 これはずっと見ていられる。

 気が付けば俺達は何十分も星を見続けていた。

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― 新着の感想 ―
飯盒のご飯はおこげが美味しいんですよね~
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