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オタクの友達が性転換しました  作者: 藤桜


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第6話 《プールへ》

 今日から高校ではプール開きが始まった。

 雲一つない晴天、プールの水面は太陽の光で輝き、涼しげな水の音が聞こえる。

 そんな青空の下、俺と柚月はプール――ではなく灼熱のグラウンドにいた。


「ねぇ、なんで僕達プールじゃなくてグラウンドに居るんだろうね……」

「いや、柚月が「僕、泳げないから球技にしよ」って言ったんだろ……」

「そうでした……」


 俺達の通う高校では夏の間だけ水泳か球技かを選ぶことが出来る。

 球技を選んだ俺たちは本来なら体育館でバスケや卓球などの屋内球技を行うが体育倉庫のカギが紛失してしまったらしく道具が出せなくなってしまっていた。

 そのため急遽屋外スポーツとなったのだ。かと言って外での運動はなかなか疲れる。

 そのため今日は各自自由に運動という自習形式で行われていた。

 サッカーをする者やランニングする者、キャッチボールをする者など様々だ。

 俺と柚月は駄弁りながらグラウンドを軽く走った。

 

「プールかぁ。去年も水泳選択しなかったから中学以来入ってないな」

「僕も久々にプール入りたいけど泳げないし」

「だったらプライベートで行けば良くね?」

「それもそうだね。それじゃぁ次の休み一緒に行ってくれる?」

「今週の土日は予定無いし良いけど」

「決定だね。どこか良いプールあるかな?」

「それなら小学生の頃に良く行ったプールがあるからそこにしようぜ。日にちと時間決まったらまた連絡するわ」

「うん、わかった。楽しみにしてるね」


 俺は柚月と一緒にプールへ行くことになった。

 しかし暑くて思考がおかしかったとはいえ柚月とプールに行くなんて今更緊張してきた。

 週末、天気は快晴。最高のプール日和だ。

 俺達は地元の駅からプール前を通るバスに乗り向かった。

 駅のバス停が起点の為、なんとか座ることが出来たが各バス停に停まる毎に人が乗り込みバス車内はプールへ行くだろう乗客で埋まってきていた。


「約2年ぶりのプールだねぇ」

「だな。てか、無事水着買えたのか?」

「昨日お母さんと買いに行ってきたよ。楽しみすぎて水着着てきちゃったし」

「漫画みたいに下着忘れるとか洒落しゃれにならないからな」

「大丈夫。何度も確認したし。ほらっ」


 そう言って柚月は手提げカバンの口を開いた。

 そこには薄ピンクの布が見える。どう見ても下着だ。

 わざとかと思ったがプールに入るのが楽しみと言わんばかりの笑顔を見るとそうじゃないみたいだ。


「奏汰、顔赤いけど大丈夫?」

「えっ? あ、いやぁバスの中暑いなーって」

「人多いもんね」


 バスに揺られること15分ほどでプール前のバス停に到着。

 俺たちを含めた乗客の9割くらいが一気に下車した。

 やっぱり皆の目的地はここのプールの様だ。

 

「プールに到着ーっ」

「それじゃ着替えたらプールサイドにヤシの木があるからそこに集合な」

「あっ、そっか。更衣室別だっけね」

「その見た目で男子更衣室着たら騒ぎになるだろ……。てか一人で大丈夫か?」

「大丈夫! ……だと思う」


 入場券を買った後、各自更衣室へ入った。

 柚月は少し重い足取りで女子更衣室に入って行った。傍から見たら若干不審者にも見える。

 そういえば水着を買ったと言っていたがどんなのを買ったのだろう? ちょっと楽しみだ。

 着替えをコインロッカーに入れプールサイドに出た。

 ここのプールは一部屋根が無い半屋外タイプだ。楽し気な声が聞こえ、降り注ぐ日の光が水面に反射してキラキラしている。

 待ち合わせ場所に向かうとヤシの木の木陰で待つ柚月が見えた。俺の予想ではスクール水着のような感じのを想像していたが実際は首の後ろで紐を結ぶタイプのフリル付きビキニ姿だった。

 自分で選んだというか母親のチョイスだろう。

 声をかけようとしたが一瞬その姿に見とれてしまい柚月の方が先に声をかけてきた。


「あっ、やっときた。早く入ろっ」

「お、おぉ」


 柚月は俺の手を引くと一番近くにあったプールに一緒に入った。

 久々に入ったプールは凄く気持ちが良い。

 火照った身体が一気に冷やされた。


「僕、ここ初めて来たけどプールの種類いっぱいあるよね」

「この辺りだと一番大きいプールだからな。確か流れるプール、ウォータースライダー、温水プールとかもあるはず」

「ウォータースライダーあるの!?」

「ほら向こうに見えるだろ?」


 指した方には高い足場から2本の筒状の滑り台が交差したり複雑な形のウォータースライダーがそびえ立っていた。


「滑ったことないんだよね。子供の頃怖くって。でも今なら乗れる気がする!」

「行ってみるか?」

「行くっ!」


 ウォータースライダーのある階段を登って頂上へ行くとすでに数人の列が出来ていた。

 ここのウォータースライダーは一人用と二人用の2種類がある。

 

「一人ずつ滑るか?」

「やっぱり最初は奏汰と一緒に滑っていい? やっぱり少し怖いかも……」

「俺は別に構わないけどいいのか?」

「ん? 何が?」

「いや、二人でってことはその……抱き着くからさ」

「奏汰なら別に良いよ。てか僕が奏汰に抱き着くからね。あっ、もしかして僕に抱き着くなんてエッチな事考えてた?」

「ばっ! ちげぇよ。ほら順番来たから滑るぞ」


 俺が前になり柚月は俺の腰上辺りに手を回し抱き着く感じでスタンバイした。

 スタッフの合図と共に滑り降りた。

 二人用の方は一人用より勢いが少なくゆっくり滑っていく感じだ。


「どうだ?」

「全然怖くない。むしろ物足りないかも」

「それなら一人用も行けるな」

「うんっ」


 これなら柚月も安心―――ん? 滑っている道中背中に温かく柔らかい感触がする。これってもしかして柚月の―――。

 俺達はゴールにあるプールにゆっくり着水した。


「もう一回滑ろうよ」

「俺はそこのベンチで休んでるよ」

「もう疲れたの?」

「そうじゃないけどちょっと今は無理と言うか……」

「ん? それじゃ僕もう一回滑ってくるね」


 気に入ったのか柚月はその後3回くらい連続で滑っていた。

 その後俺達は流れるプールで流されたり温水プールで休憩したり全プールを巡った。

 いつもは家でゲームやアニメ鑑賞しているため体力が落ちたのか結構疲れた。


「遊んだーっ! さすがに疲れたよぉ」

「ちょっと休憩するか」

「だねぇ」


 俺達は木陰にあるベンチに座った。柚月は背もたれに寄りかかった。

 はしゃぎすぎて疲れたみたいだ。

 風が吹くと涼しくて気持ちが良い。

 

「今日は一緒に来てくれてありがとう」

「なんだよ急に。いつもの事だろ」

「だって僕がこんな姿になっても嫌な顔せずいつも一緒に居てくれるからさ」


 そう言って柚月は嬉しそうにほほ笑んだ。

 その笑顔にドキッとしてしまった。

 よく考えたら男女二人でプールなんてリア充のする事だ。※奏汰の個人的意見です。


「おっ……俺、飲み物買ってくる!」


 俺はその場を逃げるように飲み物を買いに売店があるエリアへ向かった。

 顔が熱い。日差しの暑さとは違う熱さだ。

 飲み物を買いベンチに向かっているとベンチで柚月がパーカーを着た男性と話しているのが見えた。

 知り合いにでも会ったのか?

 すると柚月は俺に気付き小走りで駆け寄ってきた。そしてそのまま俺の腕に抱き着いた。

 

「おい、なんだよ急に。てか当たって―――柚月?」


 柚月の手が震えているのが分かる。何かがおかしい。

 その瞬間、話していた相手が友達ではないことに気が付いた。

 よく考えれば今の柚月を知っているのは同じ学校の奴だ。だが俺の知る限りあの男性は見覚えがない。

 すると話していた男性が俺の所へやってきた。

 間近で見ると肌が焼けていて筋肉がすごい。

 正直ビビってしまいそうだ。でも俺が柚月を守らなければ。


「君、この子の知り合い?」


 きっとナンパだろ。

 こんなベタな展開が起こるとは思ってもいなかった。

 しかし最初が肝心だ。

 確かこういう展開の時はなんて言うんだっけ? 何かの漫画で読んだ気がする。

 えーっと確か―――そうだ!


「お……、俺の彼女に何か用っすか?」

 

 勇気を出して言った。鼓動が早くなっていく。

 怖いけど周囲には人も居るからきっと大丈夫だ。

 身構えていると男性はなぜだかホッとした表情を浮かべた。


「いやぁ、その子がベンチでぐったりしていたから声を掛けたんだよ。熱中症とかだったら大変だと思って」


 そう話す男性をよく見るとパーカーの上腕部分に“監視員”と書かれた腕章が巻かれていた。

 どうやら柚月が体調悪くてぐったりしていると思って声を掛けていたらしい。そして柚月も突然男性に話しかけられてパニックになっていたみたいだ。

 男性は柚月が大丈夫だと分かるとすぐにその場を立ち去って行った。


「ったく、心配掛けさせるなよ……ビビって損したわ」

「ごめんね。急に話しかけられたから……。でも嬉しかったよ。奏汰が助けてくれて」

「まぁ何事も無くて良かったよ。――あっ、さっきは咄嗟に彼女とか言って悪かったな」

「ん? なんで?」

「なんでって、女扱いされるの嫌だろ?」

「嫌っていうか僕はもう女の子だし。それに奏汰なら気にしないよ」

「えっ? 気にしないって―――」

「今日はもう帰ろっか。お腹空いてきちゃった。帰りにハンバーガー食べに行こっ」


 そう言って柚月は俺の手を引き歩き始めた。

 更衣室に向かうときの柚月はなんだかとても嬉しそうだった。

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